不安?それとも明るい? 人工知能時代に働き方はどう変わるのか
■AIに取って代わられる人、そうではない人の違い
本書における特徴的な部分の一つが、人間の仕事の中での役割をマトリクスで分類し、どの部分がAIに取って代わられるかを説明していることだろう。
これは「何の仕事がなくなるか」というだけでなく、それぞれのパーソナリティに根差した部分も出てくるだろう。
例えば前述した、AIの得意分野「論理的に分析し、大量の情報から統計的に考え、高速回転で何度も何度も実施する」には、「オペーレーター」という言葉が当てはめられている。データを収集したり、分析をする。そこに感情は入らないので人間でなくてもできるということになる。
では、人間が担う必要があるのはどんな仕事か。
まずは、**非構造的なモヤモヤを言葉にする「コミュニケーター」**は、原理原則を問いなおし、仮説を立てられる人を指す。言い換えれば好奇心旺盛な人だ。
続いて、**仕組み化された領域の中で感性や身体を活用して相手に働きかける「モデレーター」**も、AIに取って代わられづらい。他者の感情を察し、ホスピタリティをもって応対するのは人間が持つ武器であるのだ。
そして最後に**既成概念にとらわれずに、今までにない新しい価値を生み出す「イノベーター」**は、まさに人間が担うべき部分である。こうした人は現状の組織や社会からあまり評価されないところもあるものの、最もAIに代替されにくい存在とも言えるのだ。
この3つの領域のどこかに自分の得意分野を当てはめてみると、20年後、そして30年後も活躍できる人材になるにはどの道に進めばいいかが見えてくるはずだ。
「まだAIの影は見えない、自分の仕事は大丈夫」と思っているならば、それは危ない考え方かもしれない。変化は往々にして気付かない間に起き、後から気付くものであったりする。技術に関するニュースやプロダクトのリリースについて目を見張り、時代が動く様をその目で捉えることが大事だ。
もう、働き方の変化はすでにはじまっているのだから。
(新刊JP編集部/金井元貴)