だれかに話したくなる本の話

世界を騒がした“20年に一人の逸材”菊池雄星がハマりこんだ本とは?

“メジャーか日本か”―究極の決断で悩む1人の高校生・菊池雄星(花巻東高校)が下した結論は、「日本の球団でプレーをする」ということだった。

 しなる左腕から繰り出されるストレートはMAX154キロを計測(これは甲子園左腕最速となっている)。コントロールも良く、精神的にも強いクレバーな投球ができる、まさに「非の打ちどころがない」投手である菊池は、“20年に一人の逸材”と言われ、つい先ほどドラフト会議にて、パリーグの覇者・日本ハムや地元楽天を含む6球団が1位入札、西武がクジを当て、交渉権を得た。

 そんな菊池の強い精神力を養ったのが、「読書」であることをご存知だろうか。

 10月25日に放送された「Jスポ」(TBS系)内で、菊池は「1ヶ月だけで本代に月2万円から3万円使う時もある」と話す。また、今年夏の甲子園大会前に放送された「めざましテレビ」(フジテレビ系)では、厳しい練習の合間をぬって月10冊の読書量をこなすと発言をしていたという。

 では、そんな菊池がハマった本とは一体何なのか?

 まずは、「Jスポ」内で見られたのが野口嘉則氏の『心眼力』(サンマーク出版)。番組のカメラは菊池がこの本に読み耽る姿を映していた。
 『心眼力』は、困難な状況の中においても希望の芽を見出す力を身につけることができる野口氏のメッセージがつづられた自己啓発書。昨年出版されて以来、ベストセラーとなっているほか、最近ではオーディオブック化(本をそのまま音声化したもの)され、自己啓発書好きを超えた幅広い層から支持を集めている。
 菊池は印象に残ったフレーズを蛍光ペンでチェックするなど、深く読み込んでいる様子がうかがえた。

 また、同時に映し出された寮内の部屋の本棚には、『なぜあの人は強いのか』(桜井章一・中谷彰宏著/東洋経済新報社)、『成功への熱い想いを君に』(小尾敏夫・熊谷正寿監修/かんき出版)、『社長の手帳』(佐藤満著/グラフ社)等、数々の自己啓発本が並ぶ。

 その他にも、今年春のセンバツ甲子園大会には、野口嘉則氏の『鏡の法則』(総合法令出版)や木下晴弘著の『涙の数だけ大きくなれる!』(フォレスト出版)を持参し、読んでいたというエピソードもあり、間違いなくそれらが彼の精神力の源となっているのだろう。

 菊池は野球雑誌『BaseBall Climax 2009』(交通タイムス社/)に掲載されているインタビューで、自己啓発書を読み始めたのは野球部の監督の影響だと言い、また、周囲のチームメイトも菊池の姿に影響されて本を読み始めたと語っている。

 日本・メジャー合わせて20球団が注目し、文字通り「世界を騒がした男」がハマった本。それは、春夏連続で甲子園を出場した花巻東高校の快進撃を支えたチームそのものも束ねていたのかも知れない。
新刊JP編集部/金井元貴)