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BOOK REVIEWこの本の書評

どの企業、どんなサービスにとっても新規顧客獲得は最重要課題の一つだろう。
リピーターの育成は売上を安定させるが、新規顧客獲得はそのサービスの未来への種まきである。ここがうまく行かないと、どんなサービスもスケールしない。

ダイレクトメールの新規客獲得率はたった0.1%

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この新規客獲得で、古くから使われてきた手法がダイレクトメール(DM)であり、インターネットが普及して以降はネット広告である。

これらは、どれも自社サービスに興味があるかわからない不特定多数に手当たり次第に情報を発信している点で共通するが、その手法ゆえに獲得率は低い。

営業支援コンサルタントの熊谷竜二氏によると、DMの新規客獲得率は20年前で「センミツ(1000人に3人)」、現在では1000人に1人いればいい方だという。また、あまりにも「ムダ打ち」の多いこの手法を疑うことなく続けている企業は多いとも。どこに潜在顧客がいるかの絞込みが困難な以上、ムダが多いとわかっていても続けるしかないのである。

ただ、自社サービスに関心を持つ層がどこにいるかを把握する方法がないわけではない。熊谷氏は本書でそのための方法と、把握してからの営業戦略を提案している。

インターネットの大海原から潜在顧客を拾い上げる工夫とは

ホームページなどのアクセス解析ツールとして知られる「Googleアナリティクス」は、いまやほとんどのマーケティング担当者が使ったことがあるはずだ。

それであれば、このツールのアクセス解析では、自社ホームページのどこにアクセスが集まっているかはわかっても、そのアクセス元がどこであるかはわからないことも知っているだろう。

もしそれがわかれば、自社の潜在顧客を発見する大きな手掛かりになる。ホームぺージにアクセスがあったということは、何らかの興味・関心を持ってやってきたと考えらえるからだ。

アクセス解析によって、どこから閲覧があったかを知る方法はシンプルである。自社製品・サービスの対象となる企業群にDMを送信するだけでいい。ただし、企業ごとにIDを指定して、メールに書き込む自社ホームページのURLにそのIDを埋め込む。

たとえば、「Aコンサルティング」の個別IDを「001」に、「B商事の個別IDを「002」にしたとすると、AコンサルティングへのDMに貼り付ける自社ホームページのリンクは「http://(ホームページアドレス)=001」、B商事へのメールでは「http://(ホームページアドレス)=002」となる。

こうすることで、「http://(ホームページアドレス)=001」というURLにアクセスがあれば、それはAコンサルティングしかありえない、という状態になる。自社ホームページにどの会社から来たかをアクセス解析ツールで追跡可能になるわけだ。



この手法によってその後の営業活動の効率と成果は劇的に高まることになるという。
本書では、このプロセスで非常に重要になるダイレクトメールの文章や、ホームページのワイヤーフレームの作り方、電話営業での話し方などについても、テンプレートを交えて解説している。BtoB向けの本ではあるが、お金と時間を最小限にして、営業成果を最大に高めるために大いに役立ってくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

INTERVIEWインタビュー

アポイント率が格段に上がる プロが教える超営業術とは

熊谷竜二さん写真

――熊谷さんは本書で、自社サービスの顧客になりうる層を効果的に特定し、効率よく営業する方法が明かしています。これを導入することによって、営業の効率や成果がどのくらい変わるのでしょうか。

熊谷:
今回の本で紹介している方法というのは、まずダイレクトメールを送り、そのメールを見て自社のホームページにアクセスした企業を絞り込み、電話営業をするという3つのプロセスがあります。

通常の新規顧客獲得の営業というと、ダイレクトメールと電話営業の二つがメインになるのですが、ダイレクトメールの場合1000件送って1件反応があればいい方だと言われているんですね。だから、確率でいうと0.1%です。

一方、この本の手法では1000件ダイレクトメールを送ると大体5件くらいはホームページにアクセスがあるので、5%といったところでしょうか。

0.1%と5%だから50倍、と単純な比較はできませんが、やみくもにダイレクトメールを送るよりはかなり高い確率で反応を得ることができるというのはいえると思います。

――その後の電話営業の成果についてはいかがですか?

熊谷:
電話営業の代行会社が公表している数字を見ると、100件電話してアポイント獲得まで持っていけるのは1%から2%くらい。電話を100回して1件から2件商談につながればOKという感じですね。

この本の手法だと、相手が自社のサービスに関心があることを把握してから電話をするので、商談に進める確率は上がります。専門のスタッフを使う場合は16%ほど、これまでコンサルティングであちこちの企業を見てきた感じでいえば、専門スタッフを使わない場合で10%ほどでしょうか。

――Webでの顧客獲得は苦労している会社も多いかと思います。熊谷さんが受けることの多い相談ごとはどのようなものですか?

熊谷:
やはり新規顧客をいかに獲得するかという相談です。今回の本ではウェブからの集客のノウハウを紹介しましたが、当社は営業支援全般を扱う会社なので、ウェブに限らずどのように新規顧客を増やしていくべきかという相談を受けることは多いです。

特に最近ではウェブに広告を出すことを考える企業が多いのですが、どうしても資金力頼みになってしまいますし、同業他社も同じように広告を出しますから、仮にニーズのある人が見てくれたとしても価格競争になりやすい。

それならばこちらからアプローチをかけて、まだニーズは成熟していないけれども、今後それが高まっていくであろう顧客、言ってみれば「そのうち客」を早めにつかまえておく方が結果的には効率がいいのです。

この本で紹介している、ダイレクトメールの反響で潜在的なニーズを捉えて、そこに電話営業をするという手法は、そのための手法です。

――ダイレクトメールに張る自社ホームページへのリンクURLに、相手企業ごとのIDを埋め込むことで、ホームページにアクセスがあった時にどの企業からのアクセスかを把握することができます。ウェブに強い会社であれば、この手法はすでに一般的に採り入れられているのではないかという印象を持ったのですが、実際はあまり浸透しているやり方ではないのでしょうか。

熊谷:
その部分だけを捉えると、ウェブマーケティングに強い企業では当たり前のようにやっていることなのですが、すでに接点を持った顧客企業に対してID管理をしている会社はあっても、新規顧客開拓でダイレクトメールと企業ごとのID管理を組み合わせてやっているところというのは、私の知る限りないと思います。

理由はいくつか考えられて、たとえばメールアドレスをどうやって入手するのかという問題や、法律の問題ですね。あとはIDの管理コストもあると思います。やはり顧客のリストは何百件、何千件になるので。

――法律の話というのは、会社のホームページに連絡先のメールアドレスを載せていても、「営業お断り」的な文言をつけているところにはダイレクトメールを送れないということですよね。

熊谷:
そうですね。そういうところにメールをしてしまうと法律違反になってしまうので。

――IDの管理コストも挙げられていましたが、実際には一人で管理できるものなのでしょうか。

熊谷:
企業の規模にもよりますし、売ろうとしている商品の単価によってどれくらい売上を立てなければいけないのかにもよりますが、基本的にはこの本で書いているやり方は各営業マン単位に落としていける手法になっています。一人でも管理は可能です。

――自社ホームページのアクセス解析をすれば、ダイレクトメールから来たアクセスは把握でき、埋め込みIDのお陰でどの企業かもわかります。そしてこの企業は自社のサービスにある程度関心があるといえそうです。こうした企業にどう営業をしていくかというところが次のステップになりますが、どんな点が重要になりますか?

熊谷:
次は電話での営業になるわけですが、相手にニーズがあるとわかってはいても、電話を取る相手はあくまで「受付」ですから、売り込みや営業の類は大抵の場合断られてしまいます。

じゃあ、企業の電話受付の担当者は営業電話かどうかをどう判断しているかというと、自分の会社と関係性がある人からの電話かどうかで判断しているところがあるんですね。

だとしたら、関係がある人間だと感じていただくような話し方をするのがポイントになるわけです。たとえば、こんな言い方はどうでしょうか。

「はじめまして。実は事前に社長様宛にメールを送っているのですが、社長様がそれに非常に興味を持ってくださって、当社のホームページにお越しいただいたので、その件でお話をさせていただきたく、お電話しました」

――確かに「受付で切ったらマズい人」っぽく聞こえますね。しかし、ホームページに来たことはそこで言ってしまうんですか?「何でそんなことを知っているの?」となりそうですが。

熊谷:
言ってしまいます。これが一つポイントで、この段階では関係がある人間だということを電話窓口でアピールすることが優先です。関係がある人間だと思っていただければ決裁者に繋いでもらいやすくなるので。

本のなかでこの時の話し方についてはもっと詳しく書いているのですが、概ね窓口ではこんな感じで話します。

電話営業の難関「受付」を突破するプロのスキル

――社長なり決裁者に繋いでもらった後はどう進めるのでしょうか。

熊谷:
ここからは先ほどの受付でのトークとは変わってきます。まず「こういうメールを事前に送らせていただいたのですが、ご覧いただけましたでしょうか」と、メールを送ったことを伝えます。

ただこれは、相手の返答が「見た」でも「見ていない」でもどちらでもいいんです。

――実際にはその会社の誰がダイレクトメールを読んだかわからないわけですからね。

熊谷:
そうなんです。それで「ごめん、見てないよ」という答えだったら、それはそれでちょっとしたアドバンテージを握れます。「そうでしたか、実は今回はこういった件でご連絡させていただいています」といって本題に入ればいい。

「見たよ」ということであれば、それはもちろんいいことで「ありがとうございます。いかがでしたか」と本題に入れます。

ただ、ここでは「ホームページを見ていただいてありがとうございます」といったことは言ってはいけません。「なんでそんなこと知っているの?」となって怪しまれてしまうので。このあたりは電話営業のテクニックのところですね。

――疑問としてあるのは、ホームページを見てくれた人がニーズを感じていたとしても、決裁者も同じニーズを感じているかはわからない点です。

熊谷:
その部分はよく聞かれます。つまり「どうやってホームページにアクセスしてくれた人に電話を繋いでもらうのか」というところです。

ただ、大事なのはあくまで電話を繋いでもらいたい相手は決裁者であって、ホームページにアクセスをした人ではないんです。BtoBのビジネスの場合、企業としてニーズがあるかというところが重要ですが、アクセスログから調べれば、自社のサービスや商品にニーズがある会社かどうかというのは概ね見えます。そして、ニーズがある企業であれば、アクセスした本人でなくても決裁者にさえ行き着ければ商談に繋がる確率は高まる。

もちろん、「ちょっと気になったから見ただけ」という程度のこともあるのですが、それも含めて、先ほど出した約10%という確率になります。これは電話営業から商談に行ける確率としたら驚異的に高い数字なんです。

――相手の会社の規模によって成功率は変わってくるのでしょうか。

熊谷:
会社の規模は問わないのですが、実際にやってきた経験上、一番工夫が必要なのは中堅規模の会社だと感じます。よく大企業は難しいんじゃないかと言われるのですが、実はそうでもないんです。

なぜかというと、大企業の場合、受付には受付専門の方がいらっしゃって、そこではかかってきた電話について何かを判断することはないんです。だから、とりあえずは担当部署までは繋いでもらえる。断られるならそこで断られるわけですが、少なくとも用件は話せるので、そこでの話し方次第でチャンスはあります。

これが中堅だと電話受付の方が通すべき電話かどうかを判断しますし、経営者の方がワンマンだと用件関係なく繋ぐなと指示していることも多い。だから、前編の話と重なりますが、よほど用件と社長との関係性をはっきり示さないと、なかなか繋いでもらえないんです。

――話し方でいうと、少しくだけた物言いの方が繋いでもらいやすいというのはユニークでした。

熊谷:
本の中ではあくまで参考までに話し方の事例を書いていますが、やはりひと言目で「営業だ」と思う声のトーンだとか話し方があるんですよ。

――ありますね。第一声で「あ、営業だ」となると、やはりそこで断られてしまう。

熊谷:
そうです。「あの、大変お忙しいところ申し訳ございません。私こういう者なんですが、社長様お手すきでしょうか?」などとやったら、一発で営業電話だと思われてしまいます。

まして、こちらは社長や決裁者の方の名前はわからないわけじゃないですか。「ご責任者様は~」なんて言ってしまったら、もう明らかに営業でしょう。

――確かにそうです。

熊谷:
一方でこんな言い方はどうでしょう。

「もしもし、御社のおそらく総務部長さんだと思うんですが、弊社のホームページをご覧いただいてまして、ただその時にお名前だけお伺いすることができていませんで、非常に当社のホームページにご興味持たれていたのは確認ができているのですが、今総務部長さんはいらっしゃいますでしょうか?」

――「総務部長」と面識があるように聞こえます。

熊谷:
この話し方だと、何だか総務部長と関係がありそうに聞こえるでしょう。名前がわからないのも、たまたまタイミングがなくて聞けていないんだなと相手は思いますし。もちろん嘘を言っているわけでもありません。

――こういう電話がきたら、自分なら繋いでしまうかもしれません。

熊谷:
あと、テクニック的なことを言うなら「沈黙を恐れないこと」です。営業マンってどうしてもしゃべりたがるんですよ。慣れていない人ほど「間」が怖くて、機関銃のようにしゃべってしまいますし、慣れてしまうとスムーズにしゃべりすぎてしまう。

でも、これでは相手がこちらの言うことを理解する時間がなくなってしまうので逆効果です。一つしゃべったら黙って、相手が沈黙に耐えられずに返事をしてきたら続きを話すくらいがちょうどいいんです。

――今回の本をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

熊谷:
基本的には経営者であったり営業の責任者の方を対象にしています。特にBtoBのビジネスをされている企業ですね。

BtoCのビジネスでも使えないことはないのですが、個人相手だとまずメールアドレスを入手するのが難しいので。

熊谷竜二さん写真

――そうした方々に向けて、メッセージをお願いします。

熊谷:
新規顧客の開拓というのは本当に難しい仕事で、どの企業も頭を悩ませているところだと思いますし、いろいろな手法を試してみたものの結果が伴わないということも多いものです。

この本で紹介している手法は、これ自体確立された手法ではありますが、結果につなげる最短ルートは繰り返し改善することです。

「商品」「ターゲット」「プロモーション」の三つが揃った時にはじめてモノが売れます。この三つのバランスをいかに取るのかというところで試行錯誤をして改善ながら続けていただければ、結果は出ていくのかなと思っています。

(新刊JP編集部)

BOOK DATA 書籍情報

プロフィール

熊谷 竜二(くまがい・りゅうじ)

1968年千葉県出身。営業支援コンサルタント。株式会社ナレッジコンサルティング代表取締役。キャノンマーケティングジャパンで営業支援システムの開発と営業コンサルタントに従事し2009年独立。リーマンショック後の不景気により1年半の売り上げゼロから、自社のサービスに興味を持っている企業がわかる営業支援システムを発案し爆発的に売れる。この営業支援システムは先進的な考え方と成果の高さから、大手企業から中小ベンチャー企業まで、累計1000社以上の企業で活用され高く評価されている。

目次

  1. 第1章 営業がヤルことは3つだけ

  2. 第2章 事前準備

  3. 第3章 メール

  4. 第4章 アクセスログの取得

  5. 第5章 電話営業

  6. 第6章 改善

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