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本が好きっ! 鬼頭あゆみのインタビューラジオ

『本が好きっ!』は、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなど、聞いて役立つトークをたっぷりお届けします。

ゲスト: 経済評論家 岡田晃さん

『明治日本の産業革命遺産
ラストサムライの挑戦! 技術立国ニッポンはここから始まった』

岡田晃さん、鬼頭あゆみの写真

全23の史跡から成る「明治日本の産業革命遺産」

鬼頭: 今回「明治日本の産業革命遺産」を書かれたきっかけというのは?

岡田: きっかけは2つありまして、1つ目は、私がメインとして長年やっているのは、日本や世界の経済を取材して伝えるというお仕事なんですけども、個人的に歴史が好きという事もあり、以前から幕末ものの本などを結構読んでいたんです。そしていつの頃からか、今の日本経済のあり方を考えるには、歴史からも学ぶ必要があるなと思いまして、幕末や明治維新の時代に注目するようになりました。というのが1つ目のきっかけで、もう1つは、数年前に鹿児島へ行った事がありまして、地元の方から、「ここには幕末の史跡がたくさん残っていて、世界遺産として登録するための運動をしているんだ」という話をたまたま聞いたんです。そこで、私もその運動に興味が沸いてお手伝いするようになった、というのが2つめのきっかけですね。

鬼頭: 遺産として登録される前から、史跡を見られていたんですね。

岡田: そうですね。注目はしていました。

鬼頭: 「明治日本の産業革命遺産」というのは全23の産業資産が、一括で世界遺産に登録されているんですよね?名前だけ見ると、それぞれがどのような遺産で、どこにあるのか、いまいち分からないのですが……

岡田: この世界遺産というのは、九州に加えて、山口、静岡、岩手の8つの県にまたがる23の施設からなっておりまして、幕末から明治にかけての近代化の跡が見られ、かつ現代も保存されている施設がまとめて1つの世界遺産になった、という非常にユニークなケースなんです。

岡田晃さんの写真

幕末の人々のバイタリティの高さは「危機感」の表れ

鬼頭: 世界遺産というと、グループ毎に大体一か所に集中しているイメージなんですけど、「明治日本の産業革命遺産」は九州から岩手までの範囲に散らばりつつも、全て繋がりがあって、それをUNESCOが認めたという事ですよね。

岡田: おっしゃる通りですね。今回の施設については、単独だと世界遺産になるには少し弱いんですが、23の施設を合わせると、その繋がりによって価値が生まれるものなんです。例えば、鹿児島県に島津斉彬が創設した「集成館」という施設群の中に、反射炉という大砲を作る施設があります。この反射炉の基礎となった石組みというものが現在も残っているんですが、それが今回の23の遺産のうちの1つになっています。石組みだけだとやはり価値が弱いのですが、そのような技術が各県の藩に拡散していく事で、その後の技術に影響を与える文化的な価値に繋がったという訳なんです。

鬼頭: 当時の人々は、本だけを頼りに新しい技術や施設を生み出していったという事も書かれていましたが、このパワーは一体どこから来ているんでしょうか……。

岡田: 当時の人も、全てをすんなり成功させたというわけではなく、もちろん何度も失敗はしているんですよ。例えば、反射炉にしても、炉の高温に耐えられずに形が潰れてしまったり、傾いてしまったり。でもそこで諦めずに努力して、何度も作り直すというバイタリティやチャレンジ精神が凄いですよね。そのパワーの源については、あくまで想像なんですけど、これ以上欧米列強の進出を許してはならない、という当時の人々の危機感の表れではないかと考えています。

岡田晃さん、鬼頭あゆみの写真

当時の人々から学ぶ、頭打ち状態を突き破るパワー

鬼頭: 当時を思うと、現代は技術が発展し過ぎて頭打ちな気もしますが、それだけのパワーがあれば、今後の更なる発展という可能性も……?

岡田: 今が頭打ちであっても、それを更に打ち破るパワーやエネルギーが日本人にはあるはずなんですよね。幕末時代の人々もそうだったわけですから。なので、そういった歴史を踏まえて、当時の人々から学び、我々が生み出せるものはまだまだあるんじゃないかなと思っています。

鬼頭: 本の中で取り上げられている人物も、知名度に関わらず、一人一人に個性があってとても魅力的でしたね。

岡田: そうですね。全体的に当時の人たちはなんだか生き生きとしていたように思います。

鬼頭: この本を読んで思ったんですけど、今はスマホがありますから、気になったところを更に深く調べていけば、経済も知れて、歴史も学べる上に、旅本にもなり得そうですね。

岡田: 私自身もこの本を書くにあたって、歴史を学びながら旅をして、現地の方に取材しつつ、今の日本経済という視点で観て回りましたので、まさに「経済、歴史、旅」という3つの要素が詰まった本だと思います。

プロフィール

岡田晃

大阪経済大学客員教授。1971年 慶応義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞入社。1987年 日本経済新聞編集委員 1991年 日本経済新聞編集委員・テレビ東京出向 1994年 テレビ東京報道局経済部長、『ワールドビジネスサテライト』プロデューサー 1998年 テレビ東京ニューヨーク支局長 2000.12.12 テレビ東京アメリカ初代社長 2003.8.1 テレビ東京理事・解説委員長 テレビコメンテンター多数。

パーソナリティプロフィール

鬼頭あゆみ

1976年、愛知県生まれ。フリーアナウンサー。活動拠点を東京に移す前は、東海テレビ放送のアナウンサーとして、主にニュース番組、プロ野球番組などを担当。フリーに転身後は、TBS「サンデーモーニング」やNHK「探検ロマン世界遺産」などに出演。

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