小さな会社の経営は、「人事評価制度」で強くなる!たった一枚のA3シートで自動的に評価が決まる
小さな会社が劇的にかわる すごい人事評価・報酬制度のつくり方

小さな会社が劇的にかわる
すごい人事評価・報酬制度のつくり方

著者:金村 秀一
出版:産業能率大学出版部
価格:1,980円(税込)

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本書の解説

経営者は自社の業績が上がるように日々努力しているし、そこで働く社員は、会社の業績を上げることで、自分のキャリアが磨かれ、最終的に稼ぐお金となって反映されることを願っている。

両者のベクトルを合わせることで、会社側もそこで働く側も幸せになることができる。そのひとつの手段が「人事評価制度・報酬制度」である。

大企業ではあたりまえのように存在する人事評価制度も、中小企業では存在していなかったり、機能していないことが少なくない。社員のボーナスが社長のさじ加減一つで決まる会社は珍しくないのだ。

失敗する人事評価制度の5つの特徴

冒頭で述べたように、人事評価制度・報酬制度は特に中小企業において業績を飛躍させ、社員に努力の方向性を示し、モチベーションを与えうるもの。『小さな会社が劇的にかわる すごい人事評価・報酬制度のつくり方』(金村秀一著、産業能率大学出版部刊)は中小企業向けに人事評価制度を導入すべき理由とその効果、そして導入の手順を解説していく一冊だ。

人事評価制度・報酬制度は導入さえすれば会社がうまく回り出すというものではない。ただ、本書では「目的を履き違えて人事評価制度を社内に導入することで、混乱を巻き起こし、取り返しがつかなくなる」として、その導入の仕方に警鐘を鳴らしている。

本書によると、失敗する人事評価制度とはこのような特徴がある。
・複雑すぎる…導入はしてみたものの制度が複雑すぎて経営者もよくわかっていない状態。当然、従業員もどんな成果をあげて、どんな努力をすればいいのかがわかっていない。

・手間がかかる…リソースが少なすぎて人事評価制度の運用コストが大きな負担になっている。

・不満要素になる…評価基準が明確でなかったり、評価にばらつきがあったりして、評価される側の納得感がない。

・評価者のスキル不足…管理職側に人事評価制度を運用する専門スキルがない。

・評価項目が絶対評価…「○○ができる、できない」といったスキル型の評価をしてしまうことで、勤続年数が長い従業員が評価を得やすくなり、実質的に「年功序列」に近づいてしまう。

いずれの項目も、中小企業でありがちな事例であり、人事評価制度・報酬制度導入を成功させるにはこれらの事態に陥るのを避けることが必要だと言えるだろう。つまり、「シンプルに、評価基準は明確に、絶対評価でなく相対評価に」ということだ。本書ではこれらを兼ね備えた人事評価制度・報酬制度の作り方を解説していく。

一方で、「手間がかかる」「評価者のスキル不足」は、「リソース不足」という中小企業には如何ともしがたい点が原因になっている。人事部を持たない企業が多いため、人事評価制度・報酬制度を専門的に運用する部署がないのである。この難題に対して、本書が提示している回答は、多くの中小企業経営者にとって発見となるはずだ。

人事評価制度・報酬制度が機能することで、社員はモチベーション高く仕事に邁進でき、優秀な人材が育ち、定着する。結果として業績が上がり、外部からも人材が集まってくるようになる。中小企業につきものの「採用の悩み」から解放されるだけでなく組織全体を成長軌道に乗せることができる。そのノウハウを示した本書は、中小企業の経営者が誰しも夢見る理想の会社を作るための最初の一歩となる一冊だ。

(了)

インタビュー

■中小企業の人事評価制度・報酬制度が機能しない理由

金村さんはこれまで多くの経営者の方から人事評価制度・報酬制度について相談を受けてきたかと思いますが、人事評価制度・報酬制度を導入する狙いや理由というのは、各社似通っているのでしょうか?それとも会社ごとにまったく異なるものなのでしょうか?

金村: 中小企業が人事評価制度・報酬制度を導入する理由には主に3種類あります。1つは純粋に社内に評価基準が存在しないので、基準を設定するために導入しようというもの。2つめは人事評価制度・報酬制度を導入することで業績がアップするであろうという理由で導入しようというものです。

そして3つめが、現在運用している制度が機能していないから変更したいという理由で新しい人事評価制度・報酬制度を導入しようというもの。この3つ目が実は一番多いんです。

機能していないというのはどういう状態なんですか?

金村: まず、複雑すぎて現場の社員が何をどう努力していいかわからない。そして評価する側の上司や社長もどうすれば評価が上がるかを具体的に説明できないという状態です。たとえば、評価項目30個くらいあったら、評価される側の社員はいちいちそれを意識して仕事することなんてできないでしょう。

たしかにそうですね。

金村: あとは人事評価制度・報酬制度はあるんですけど、がんばってもがんばらなくても評価は変わらない場合。これだとがんばっている人は不満がたまって転職してしまったりする。こんなことがあると、社長は今の制度が適切なのか深刻に検討するわけです。この「今の人事評価制度・報酬制度が機能していないから新しいものにしたい」というのが全体の6割くらいですね。

ほかならぬ金村さんの会社がこの本の人事評価制度・報酬制度で生産性が劇的に向上したそうですが、会社や従業員はどのように変わっていったのでしょうか。

金村: この人事評価制度は、会社の業績の良し悪しに関係なく、社員の評価は「A評価」「B評価」「C評価」のいずれかになります。制度としては一番上のS評価と一番下のD評価がありますが、基本はAからCの間に収まります。業績に関係なくプロセスも含めたがんばりが評価される仕組みになっているというのと、何をどうやってどのくらいがんばれば評価されるのかがシンプルに明確になっている。これが、生産性が上がった要因だと考えています。

導入以後、社員の方のモチベーションが明確に上がったと感じましたか?

金村: モチベーションというよりは「納得感」があったのだと思います。人事評価制度・報酬制度で一番いけないのは「A評価」の働きをした社員に「C評価」がついてしまったり、逆に「C評価」をつけるべき社員に「A評価」がついてしまったりすることです。人事評価制度・報酬制度がない会社では、往々にして社長が自分の目に映った印象で人事評価を行っていたりするのですが、それだとこういうことが起こりうるわけです。

すると、本来「A評価」を受けるべきなのに「C評価」だった社員は会社に不満を持つでしょうし、「C評価」なのに「A評価」がついた社員は、「これでいいのか」ということでがんばらなくなってしまう。これは会社にとって良くないですよね。

今回の本で書いた人事評価制度・報酬制度は、上司が部下と毎月15分面談をすると自動的に評価が決まる仕組みになっています。評価は年間の得点に基づいて決まるのですが、毎月面談をしているので、社員自身の自己評価と実際の評価にズレが出にくい。たとえC評価だったとしても、月ごとに上司と話してフィードバックをもらっているので、本人としても「まあ、この半年はダメだったしな」と納得できるわけです。

中小企業の人事評価制度・報酬制度の現状について教えていただきたいです。本の中では「人事部がない会社が多い」と指摘されていましたが、そういう会社では人事評価制度・報酬制度も存在しないケースがあるわけですよね。

金村: そうですね。特に社員数30人以下の会社では、人事部がある方が少ないです。この規模の会社では人事評価制度・報酬制度がないのが普通です。2022年度版の「中小企業白書」によると、社員数20人以下の企業で人事評価制度が導入されているのは4割未満でした。

人事評価制度・報酬制度を導入するのは、会社が大きくなってきたタイミングが多いんですか?

金村: そんなことはありません。会社が小さいうちから導入するケースも多いです。というのも、従業員が20人、30人くらいの時に適切な人事評価制度・報酬制度がないと、よほどいいビジネスモデルを持っていない限り、それ以上の規模に成長できません。がんばってもがんばらなくても社長の印象で評価が決まったり、社内に明確な評価基準がないとなると、どうしても社員ががんばるモチベーションは薄れてしまいます。

また、これからは人事評価制度・報酬制度がないと中小企業はどんどん採用が厳しくなっていくと思います。どんな企業であっても、人が集まらなかったら事業を縮小せざるをえません。先ほど、社員20名以下の企業では人事評価制度がない方が多いというお話をしましたが、「ないことがあたりまえ」だからこそ、求職者は人事評価制度・報酬制度がある中小企企業があったらそちらを選びやすいので。

■組織内での過度な競争は害悪 それを避けるための方策は?

金村さんが提唱する人事評価制度・報酬制度には「誰でも売上がる仕組みを作る」「ルールを守る人を評価する」「ルールを守らない人を評価しない」という3つのポイントがあります。ここでいう「ルール」とはどのようなものを指すのでしょうか?

金村: これはそれぞれの会社の経営計画書に書かれている方針やルールを指しています。この人事評価制度・報酬制度では、会社の方針に従わずに動いている社員は、たとえ数字を出しても評価はしません。

というのも、どんなに優秀であっても毎年結果を出し続けられる人ってほとんどいないんですよ。基本的にどんな人でも成績には波があります。ルールに従わずに結果を出している人は、数字が落ち込んだ時に社内に居場所がなくなってしまう。会社としては、それは避けたいので、私たちの会社では入社した時から「ルールは守らないとダメだよ」と教えています。

また、賞与の決め方も特徴的です。相対評価と粗利連動型を組み合わせて賞与を決めるというのは、組織内の過度な競争や、それによるトラブルを避ける狙いがあるのだと思いますが、そもそも過度な競争というのは組織にとって有害なのでしょうか?

金村: 有害です。これが「相対評価」だけだと、誰かがC評価になれば自分はA評価を取りやすくなるわけですから、「自分だけがいい結果を出せばいい」という方向に走りがちになりますし、自分のナレッジを共有するのを嫌がるようになる。こうなると組織内はどうしてもギスギスするんですね。

そこに「粗利益連動型」を加えることで、組織全体の粗利が増えることで賞与の原資が増えるので、個人の評価にかかわらず全員の賞与が増える。結果として、個々人が自分のことよりも組織全体を考えて仕事をするようになるんです。

現場のプレーイングマネージャーの負担が大きいのが、人事部を持たない会社の人事評価制度の大きなネックです。この課題をどう乗り越えていくかについてアドバイスをいただければと思います。

金村: おっしゃる通り、小さな会社の経営は本当に大変です。現場の幹部社員はハードワークで、時間の余裕がなく、人事評価制度・報酬制度に割く時間がないことが多いでしょう。

だからこそ、この本の人事評価制度・報酬制度ではその現状を加味して、シンプルに構成されています。上司側のやることは毎月部下と15分面談するだけで、評価に使う資料はA3サイズの用紙1枚だけです。

そして、これがポイントなのですが、その資料を管理するのは部下本人なんです。これはどういうことかというとバックオフィスコストがかからないということです。現在この人事評価制度・報酬制度を100社ほど導入していただいているのですが、「これくらいで十分」という声をいただいています。

またマネジメント層の評価スキルも課題のように思えました。とくにこれまで人事評価に関わってこなかったマネジャーを「評価者」として育てていくところに難しさを感じたのですが、この点についてもアドバイスをお聞きしたいです。

金村: 毎日一緒に働いて十分にコミュニケーションをとっている上司と部下が、9項目について15分間話すだけですから、そこにスキルは必要ないはずです。それと、この人事評価制度では上司自身も社長と面談をしますから、それを通して部下との面談のやり方を学んでいけるのも特徴です。

評価される側の納得感を醸成する取り組みについての注意点がありましたら教えていただければと思います。

金村: 多くの会社では、社員の評価面談は年に1回か2回です。たとえば2回だったとして上期が終わったところで面談をして「2月にこんな失敗をしちゃったから今回はC評価だね」と上司に言われたら、部下は内心で「7月に2月の話を蒸し返すのか…」と思うはずです。でも、この人事評価制度・報酬制度のように毎月面談をしていれば、その月にあったことを評価根拠に挙げますから、たとえ悪い評価だったとしても部下から不満は出にくいはずです。

最後に読者となる中小企業の経営者の方々にメッセージをお願いいたします。

金村: この人事評価制度・報酬制度を導入して18年間運用してきたなかで、私たちの会社の労働生産性(社員一人あたりの粗利益額)は劇的に高まり、中小企業の平均の約4倍の2400万円に達しています。

それだけではなく、社内に変なしがらみもありませんし、妬みや嫉みで社員同士が足を引っ張り合うようなこともない、明るい会社を作ることができています。それはこの人事評価制度・報酬制度のおかげだと思っています。

社員が幸せに働ける環境を整えるのが、私たち社長の仕事です。その仕事の一つとして、ぜひこの本の人事評価制度を導入し、運営してみていただきたいです。

(了)

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. 「評価面談シート」フォーマット・ダウンロード方法
  3. 第1章
    小さな会社が人事評価制度を導入する8つのメリット
  4. 1.
    生産性の大幅アップが期待できる
    2.
    理念やビジョンが理解され浸透する
    3.
    会社と社員の方向性のズレを修正できる
    4.
    社内コミュニケーションが促進する
    5.
    理想の人財が自然と育つ環境ができる
    6.
    人材のスキルを把握する機会になる
    7.
    「いる気社員」が「やる気社員」に変わる
    8.
    求職者に選ばれる魅力ある会社ができる
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方①
  5. 第2章
    なぜ小さな会社では、人事評価制度が失敗に終わるのか?
  6. 1.
    人事評価制度がすべてを解決してくれるという誤解
    2.
    失敗に終わる理由①複雑すぎる
    3.
    失敗に終わる理由②手間がかかる
    4.
    失敗に終わる理由③不満要素になる
    5.
    失敗に終わる理由④評価者にスキルがいる
    6.
    失敗に終わる理由⑤評価項目が絶対評価
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方②
  7. 第3章
    100年塾式・人事評価・報酬制度
  8. フェーズ1:職位グループを決定する
  9. 1.
    職位グループを決める
    2.
    ジョブレベルの基準を決める
    3.
    各グループに求められるジョブレベル
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方③
  10. 第4章
    100年塾式・人事評価・報酬制度
  11. フェーズ2:報酬制度を決定する
  12. 1.
    報酬制度の構造を周知する
    2.
    基本給と昇給ピッチを決める
    3.
    グループ手当(役職手当)を決める
    4.
    各種手当を決める
    5.
    賞与ポイントの配分を決める
    6.
    昇進・更迭条件を決める
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方④
  13. 第5章
    100年塾式・人事評価・報酬制度
  14. フェーズ3:評価制度を決定する
  15. 1.
    4つの評価項目を決定する
    2.
    業績評価項目を決定する
    3.
    プロセス評価項目を決定する
    4.
    方針共有評価項目を決定する
    5.
    環境整備評価の得点を決定する
    6.
    ウエイトの配分を決定する
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方⑤
  16. 第6章
    100年塾式・人事評価・報酬制度
  17. フェーズ4:評価面談を実施する
  18. 1.
    評価面談の仕組みをつくる
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方⑥
  19. 第7章
    100年塾式・人事評価・報酬制度
  20. フェーズ5:評価と報酬を決定する
  21. 1.
    評価は半期ごとの評価点数で決まる
    ステップ①
    業績評価を計算する
    ステップ②
    プロセス評価を計算する
    ステップ③
    方針共有評価を計算する
    ステップ④
    環境整備評価を計算する
    ステップ⑤
    四半期ごとに評価総合計を計算する
    2.
    評価決定プロセスの3ステップ
    ステップ1
    評価グループを決める
    ステップ2
    半期の評価点数を整える
    ステップ3
    半期の評価がABC で決まる
    3.
    賞与と昇給の報酬額決定の3つのステップ
    ステップ4
    賞与ポイントが決まる
    ステップ5
    ポイント単価を決める
    ステップ6
    賞与と昇給の金額が決まる
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方⑦
  22. 第8章
    人事評価制度導入の社長の心得
  23. 1.
    なぜ、会社は絶えず成長・発展し続けなければならないのか?
    2.
    永続的に成長・発展し続けるために必要なものとは?
    3.
    人事評価制度の目的とは?
    4.
    「経営計画」×「人事評価制度」ではじめて理想の組織が誕生する
    コラム
    潰れない強い会社のつくり方⑧
  24. おわりに

プロフィール

金村 秀一
金村 秀一

金村 秀一

ウィルウェイグループ代表取締役社長
成功し続ける社長のための実践経営塾「100年塾®」塾長

弱冠21歳の時に創業。企業のWEB制作や顧客管理、マーケティングサポート、飲食業界、人材派遣業界など会社の成長ステージに合わせて事業を展開し、創業社長として今期30年目を迎える。「逆算経営計画」による経営により、労働生産性は中小企業の約4倍と高い生産性と残業時間ゼロの働き方改革を実現。少数精鋭の強みを生かしながら、業績も過去最高益を更新し続けている。

誰にでもできる「凡事一流」経営を自ら実践。再現性が高い経営メソッドを紹介する、社員数30人以下の小さな会社の社長を対象とした経営塾「100年塾®」を2012年から展開。全国各地であらゆる業種の組織改善・人事評価制度の指導を行う。現役社長が直接指導する経営手法は多くの社長たちから反響を呼び、お客様満足度は92.6%、全国各地での講演・セミナー等の開催は年間50回を超える。

◇著書:
・『赤字社員だらけでも営業利益20%をたたき出した社長の経営ノート』(中経出版)
・『社員29人以下の会社を強くする50の習慣』(明日香出版)
・『右肩上がりの会社が必ずやっている現場ルール』(自由国民社)
など、累計4万部を超える。

◇Xアカウント
https://twitter.com/DreamManager20

◇公式ブログ
https://100years.tokyo.jp/

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