社員は「社長の言葉がけ」で燃える
社長の言 –KOTOBA–

社長の言 –KOTOBA–

著者:松村 洋平
出版:アチーブメント出版
価格:1,980円(税込)

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本書の解説

仕事をしていると、物事がうまく進まなかったり、結果が出なかったり、思ったように人が動いてくれなかったり、といったことが往々にしてある。そんな時、これまでとは違った新しいアイデアや考え方に触れてみることが、状況を好転させるきっかけになることがある。

『社長の言 –KOTOBA–』(松村洋平著、アチーブメント出版刊)は、自分なりに精一杯やっているのに結果が伴わない人に、新たな視点を与えてくれる。

急成長企業の社長が従業員にかけている言葉

著者の松村洋平さんが率いる株式会社誠進堂は、法人化した2018年以降、外壁・屋根塗装、内外装工事やリフォームの分野で急成長を続けている新進気鋭の企業。本書はそんな誠進堂で松村さんが毎朝従業員にかけている言葉から成っている。

もちろん、松村さんには従業員に説法をするつもりなどない。あくまで自己満足でやっていることなのだが、従業員からは感想が寄せられたり、従業員同士のディスカッションが生まれたり、また他社の経営者にもその言葉が届くなど、好意的に受け止められつつ広がりを見せているという。

それは、松村さんの言葉のエネルギーと前向きさによるものだ。ここでは本書から松村さんの言葉を紹介する。

営業パーソンの憂鬱を救う言葉

誰よりも断られる
うまくやろうとすると、
なかなかうまくいかないのが営業である。
本来営業というのは、
非常にシンプルで簡単なもの。
誰よりも断られる肚を決めれば、
不思議と簡単にうまくいく。
ここをおろそかにして苦戦している者も多い。
コツは、断られるたびに
「よし、よし!前進しているぞ」と思うこと。
常に軽快に!リズムよく! 先手の笑顔で!(P25より)

営業にとって断られるのは憂鬱なことだが、断られるということはそれだけチャレンジしているということ。チャレンジの先にしか成功はないのだから、断られたとしても成功にはしっかり近づいている。それに気づけば、断られたとしても次のチャレンジに向けて気持ちを切り替えることができる。

大多数と同じことをやっても大多数と同じ結果にしかならない

変わっているくらいでちょうどよい
8割以上の営業パーソンが苦戦している。
約7割の中小企業が赤字経営。
社会に出た8割以上の大人が夢や希望をもてていない。
だから普通じゃあかん。
普通に仕事したらあかん。
意識から、基準から、熱意から、志から、
普通じゃあかん。
ぶっ飛んでいて、
変わっているくらいがちょうどいい。(P29)

自分の心地いいと感じる程度に仕事をしていては、大半を占める「苦戦している層」と同じ結果になる。だから、仕事で成功したいならどこかで、どうにかして、大多数からはみ出すことが必要という松村さんのメッセージである。

最大の失敗は「行動しないこと」

失敗
昨日よりちょっと良くなったら成功。
毎日ちょっと成功する。
今までの自分より良くなったら成功。
その心が成功を呼び寄せる。
成功とは少しずつ続くもの。
唯一、失敗があるとするなら、行動しないこと。
人と競争しない。人と比べない。
比べると失敗を恐れ行動しなくなるから。
行動しないこと。それが最大の失敗である。(P186より)

成功の条件を高くしすぎると、行動を起こしにくくなってしまう。ならば、「昨日の自分より良ければ成功」としておけば、どんな時でも行動を起こしやすい。少しずつ着実にステップアップするには、「行動しないこと」だけを自分に禁じて、他者と比べずに地道に努力するのみ。そんなシンプルな真実に気づかせてくれる言葉である。



本書で語られる言葉は決して「社長が従業員に上から教えを垂れる」といった類のものではなく、同じ目線で励まし、アドバイスを送っているような響きがある。

「営業」「仲間」「リーダー」「感謝・感動」「遊び心」「成長・成功」「仕事・人生」「言葉」。さまざまなテーマについての松村さんの言葉の中には、自分の心に引っかかるものが必ずあるはず。

向上心はあるのにそれが結果に結びついていない人、仕事で思ったような結果が出ない人、熱意をどこに向けていいかわからない人、やりたいことが見つからない人……。本書から自分にとっての救いの言葉を見つけてみてほしい。

インタビュー

■社員に送っていたLINEが評判に 急成長企業の社長の言葉

『社長の言 –KOTOBA–』は松村さんが経営者として、また人間として大切にされている考え方が伝わる内容でした。まずは本書をお書きになった動機について教えていただきたいです。

松村: 私は誠進堂という会社を経営しているのですが、最近拠点が増えてきて、社員たちと直接会って話す機会が少なくなってきたんです。だから、自分の思っていることを発信しようと思って、グループLINEを作ってもらって、そこに毎日メッセージを投稿するようにしたんです。少しでも誰かの気づきになってくれればいいな、という、もう完全に自己満足ですね。

それを毎日やっているうちに「これ一年間365日やり続けたら、書いたことが本になるんちゃうか」と思うようになった、という感じです。

本にすることを意識して書いたわけではなく、純粋に社員の方々へのメッセージだったんですね。

松村: そうですね。はじめは社員のみに向けたメッセージだったんですけど、今では社外の方もそのグループLINEに入ってくれていたりします。わりと評判がいいので、それならこの自己満足を書籍の形で世に出してみようか、となったんです。こうして本になることで、みんなの誇りの一つになるんだったらうれしいなとは思っています。

松村さんがグループLINEに書き込んだ言葉に対して、社員の方からはどんな反応があるんですか?

松村: LINEではたまにスタンプが返ってくるくらいです(笑)。でも、業務日報で「この言葉を読んでこう思った」みたいなことを書いてくれる人もいますし、朝礼の時や電話で話している時に感想をくれたりしますね。直接見たわけではないですが、朝礼で感想を言い合ってくれている営業所もあるようです。

ちゃんとみんなに届いているんですね。

松村: いやいや、読んでない人もいると思いますよ(笑)。

今回の本は経営者の方が読んでも学びがありますし、会社員の方が読んでも気持ちが奮い立たされるはずです。松村さんとしてはどちらに向けて書かれたというのはあるのでしょうか。

松村: どちらということはなくて、仕事をしている人全員に読んでいただきたいです。僕は日本の社会課題だと思っているんですけど、日本って仕事が嫌いな人が多いじゃないですか。でも、仕事が好きな方が絶対人生ハッピーなんですよ。

そして、何かを嫌いだとか楽しくないと思う気持ちって、物事の捉え方や解釈の問題だったりするので、この本を通じて、新しい視点を得たり、目の前の現実の捉え方が変わったりする人が一人でもいてくれたらうれしいです。

本気になること、夢中になることの大切さや、自分に限界を設けないことの大切さ、逃げない覚悟など、ハッとさせられる言葉が並んでいました。どれもまっすぐな言葉で綴られていたのが印象的だったのですが、松村さんが人に何かを伝える時に大切にしていることについて教えていただきたいです。

松村: 「人間は本来持っている能力の3%くらいしか使っていない」ってよく言うじゃないですか。だとすると、残りの97%は「伸びしろ」です。だから僕は誰かとコミュニケーションをとる時は、自分に対しても相手に対しても「こんなもんじゃないんやで」「もっとすごいことができるんやで」っていう前提で話しますね。

今回の本では「営業」「仲間」「リーダー」「感謝・感動」「遊び心」「成長・成功」「仕事・人生」「言葉」といったさまざまなテーマで、松村さんの考え方がつづられています。こうした考え方はどのように形成されていったのでしょうか?

松村: 会社を経営していた祖父母から教わったこともありますし、両親の影響も大きいと思います。

他者への優しさにあふれる言葉も自分を鼓舞するような言葉もあるなかで、どの言葉も非常に前向きですよね。

松村: 自分が前向きな人間なのだとしたら、そうなったのは二十歳を超えてからかもしれませんね。それまでは自信もなかったですし、社会に出るのが怖かったですから。でもそれじゃダメだということで力をつけなあかんと思った時に、「成功者の共通点」みたいなことをとある先輩に教えてもらったんですよ。

その共通点として、成功している人がみんな前向きだったんです。これは余談ですが、その時もう一つ聞いたのは勉強し続けることの大切さでした。学生の頃って「地頭」がめちゃくちゃ良くて「いくら勉強しても勝てない」って人がいたじゃないですか。でも、社会に出るとみんな勉強しなくなるから、大人になっても勉強を続ける人は、そういう地頭で勝ってきた人をまくれるんやで、って教わったんです。だから前向きであること、そして学び続けることを今でも大事にしています。

■「尖ること」とは大多数と違う方向に向かうこと

経営をしてきた過程で、思うようにいかないことや逆境も多々あったかと思います。逆境やピンチの時にどんなことを考えますか?

松村: 正直、うまくいかないことだらけですよ。でも、逆境とかピンチの捉え方って目標の高さ次第だと思うんです。

エクササイズ目的でボクシングジムに通っている人は、スパーリングで一発殴られただけでも痛くて「もうこんなことやりたくない」となるかもしれません。でもプロボクサーになって世界チャンピオンになるのが目標だったら、スパーリングでちょっとパンチをもらったくらいでは何とも思わないでしょう。

僕も同じです。高い目標を設定していて、まだまだ駆け出しの領域だと思っていますから、うまくいかないことがあったりネガティブな状況に直面するのはあたりまえだと考えています。

松村さんの目標とはどのようなものなのでしょうか。

松村: 会社としては売上の数値目標があったりもしますが、一番高い目標は「日本中の中小企業を牽引していくような組織になる」というものです。これができたら我ながらお見事です。

日本の企業のほとんどは中小企業で、その中小企業の65%は赤字です。僕は、これは社会問題だと思っています。だから僕らが影響力のある強い組織を作って、様々な業界の中小企業の模範になりたい。死ぬまでにそれが少しでも実現できたらいいなと思っています。

一方で、社員の方々は松村さんほど目標を高く持っていないかもしれません。そういう方が、物事がうまくいかなくて悩んでいたらどのようにアドバイスをされていますか?

松村: まずはその人が「どうなりたいか」を聞きます。山に例えるならどのくらいの高さの山を登りたいのか教えてもらうんです。これがファーストステップで、次にその山の高さに対して自分の現在地を把握してもらう。そうすれば頂上までの距離がわかるじゃないですか。

そうしたら、その距離を本当に埋めたいかどうか。埋めたいと思うなら、その距離はもう単なる課題ですから、落ち込んだり悩んだりする類のものではありません。歩けばいいだけなので。

自分の現在地も山の頂上もわからない状態が一番しんどいので、まずはそこを整理していくのを大事にしています。

リーダーについての章が印象的でした。「チーム創りは活気創り」という言葉がありましたが、自分のチームや部署に活気をもたらすためにリーダーは何をすればいいのでしょうか?

松村: たとえばですけど、会社の中での単なる移動であっても、だらだら動くのときびきび動くのでは、どちらが「気の流れ」が良くなるかというと、僕はきびきび動く方だと思うんですよ。同様に笑顔でいるのと暗い顔でいるのだったら、笑顔の方が気の流れが良くなりますし、静かなのとコミュニケーションが活発なのでは、コミュニケーションが活発な方が、気が動きます。

活気が出る一番の要因は、そこに属している人が「ご機嫌」でいることです。だからご機嫌な状態をまず自分が作ればいいんです。そして、その機嫌のいいリーダーがニコニコしていたり誰かに話しかけたりすると、いい気の流れが広がっていきます。やっぱり不機嫌な人とは誰もいたくないわけですから。

「いつ捨ててくれてもいい」とは書かれていましたが、社員一人一人の給与明細にメッセージを書いて、それがスラスラ書けるかどうかをその社員と向き合えているかのバロメーターにするのはすばらしい方法だと思いました。

松村: これはまだ社員が5人くらいしかいなかった時に始めたんです。便せんに書いて給与明細の封筒に入れようかと思ったのですが、それだと「残しとけよ」っていう雰囲気が出てしまって仰々しいじゃないですか。封筒の裏に書くならもらった方も捨てるやろと思って。これも自己満足です。感謝の気持ちを伝えたかっただけですね。でも、今もやっていますよ。

社員の方一人ひとりにコメントが書けるっていうのは、それぞれと何かを共有していることの証だと思います。

松村: 本当にただの自己満足なんですけど、みんななんだかんだとっておいてくれているみたいです。こちらとしてはいい習慣になっています。

松村さんにとって、社長と社員の理想の関係はどのようなものですか?

松村: 僕はやはり、仲間は家族だと思っているので、会社のメンバーへの愛情の強さは常に社内で断トツで一番じゃないといけないと思っています。社員たちはどうでしょうね……。おこがましいですけど、この会社で働いていること、僕と一緒の船に乗っていることを誇りに思ってくれたら、それが一番いいんじゃないかと思います。

僕は中学一年生の時にいじめを受けた経験があるのですが、その時に祖父母の存在が支えになりましたし、力をもらえたんです。それと同じように僕がみんなにとって力をもらえる存在になれるように、もっと自分を高めたいと思っています。

また、松村さんご自身の半生についても書かれていますが、人生は人との出会いによって導かれ、開けていくものだということがよくわかりました。いい出会いやいい縁を作っていくためにどんなことを心がけていますか?

松村: 「迷ったらGO」みたいなところはあるかもしれません。本に書いた半生は氷山の一角といいますか、もっとたくさんのアクションとアプローチをしてきたと思っています。

あとは、出会ってくれた人の予想を常に上回ることは大切にしています。そうすると心に残るじゃないですか。どんな形でも「びっくりさせたい」という気持ちは持っていますね。毎回できているとは言えないですけど。

最後に読者の方々にメッセージをお願いいたします。

松村: 自分の人生を良くしていくためには、ちょっと変わっているといいますか、尖っていないといけないと思います。尖っているというのは、つまり大多数と同じ方向にいかないということです。この本は変なことをたくさん書いているので、手に取っていただいて、おかしな価値観に触れて、「少数派」に一歩踏み込んでみるきっかけにしていただけたらうれしいです。

書籍情報

目次

  1. まえがき
  2. 第1章
    「営業」
  3. 第2章
    「仲間」
  4. 第3章
    「リーダー」
  5. 第4章
    「感謝・感動」
  6. 第5章
    「遊び心」
  7. 第6章
    「成長・成功」
  8. 第7章
    「仕事・人生」
  9. 第8章
    「言葉」
  10. あとがき

プロフィール

松村洋平(まつむら・ようへい)
松村洋平(まつむら・ようへい)

松村洋平(まつむら・ようへい)

株式会社誠進堂 代表取締役社長
1985年、京都生まれ。関西大学経済学部卒業。塗装業界でキャリアをスタートし、2015年に社員2名で誠進堂を設立。誠進堂の屋号は、1960年に創業された祖父母の製本会社の3代目として受け継いだもので「誠の道を進む」の意。2018年に法人化する。設立5年で売上高20億円を超え、8期目は売上高30億円超の見込み。2030年には売上高100億円企業を目指す。滋賀に本社を構え、関西・東海エリアに9つの支店を擁する。社員満足度No.1、顧客満足度No.1を掲げ、地域社会に貢献し、「日本を元気にする会社」が最終ゴール。モットーは「活気はすべてを好転させる」。活気こそ輝く仕事、物心共に豊かな人生の源だと考えている。

株式会社誠進堂
https://seishindo35.com/

社長の言 –KOTOBA–

社長の言 –KOTOBA–

著者:松村 洋平
出版:アチーブメント出版
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