解説
今やサラリーマンにも身近なものになった投資は、種類もリスクの度合いも実にさまざまです。
将来設計のため、はたまたお小遣い稼ぎのため、投資を始めてみたいと考えている人は多いはず。そんな初心者向け投資として注目されるのが「ブックメーカー」を利用した投資です。
サッカーやテニス、競馬といったスポーツの結果をはじめ、さまざまな物事の結果にお金を賭けるブッキングは、もともとヨーロッパなど海外で広く親しまれてきましたが、最近はインターネットやスマートフォンの普及から、日本にいても参加しやすくなっています。
レースの結果を当てる競馬がギャンブルとみなされるように、ブッキングも基本的にはギャンブルです。しかし、本書は、このブッキングを「投資」と捉え、着実に資金を増やす方法を解説しています。
ギャンブルということで、「法律的に大丈夫なの?」という疑問は当然ですが、本書によると、2017年3月現在、日本人が海外ブックメーカーの利用を取り締まる法律はないそう。
ブックメーカー投資は「負けないこと」を追求できる
著者の金川顕教さん、監修の黒川こうきさんによると、現在のブッキングには
- 試合のデータを精査することで、勝率をかなり高めることができる。
- もし予想が外れそうになったら、その時点で賭けを降り、損失額を限定できる。
という二つの性質があり、実質的には「調査によって勝率を上げ、売ることで損切ができる」という、株式投資と変わらない側面を持っているようです。
では、勝率とはどのように高めていけばいいのでしょうか。ここでは、金川さんが、初心者でも始めやすいとしている「サッカーの試合」へのブッキングを例にしていきます。
試合結果を予想するのは難しい!でもゴール数なら…
試合が始まる前にどちらが勝つかを予想することは、どんなにデータ集めて分析しても難しいものです。これでは競馬と同じで、やはりギャンブルの域を出ません。
ただ、後半20分の時点になると、それはぐっと簡単になります。サッカーは基本的に点が入りにくいスポーツですから、後半20分時点でリードされているチームが逆転するのは、よほどの実力差がない限りなかなか大変です。
難しいのは後半20分で同点のケースです。試合結果はどちらに転んでもおかしくありません。しかし、残り25分とロスタイム数分で、両チームがどれくらいゴールを決めることができるかは、勝利チームを予想するよりは容易です。
たとえば、「どちらかのチームが1点くらいは決めるだろう」と予想したとすると、ブックメーカーを通して「残り時間で1.5ゴール以下が入る」というブッキングができます。
あるいは、安全策をとって「残り時間で2.5ゴール以下が入る」や「残り時間で3.5ゴール以下が入る」というブッキングも考えられます。
もちろん、1.5ゴール、2.5ゴール、3.5ゴールの順に配当率は下がっていきますが、プロサッカーの試合で後半残り25分から4ゴール以上決まることは、あまり考えられません。このブッキングは結構確率が高そうです。
この確率は「レッドカードが出ていないこと(=両チーム同じ人数で戦っている)」「両チームの合計得点が3点以下であること(点が入りにくい試合である)」ことなどをブッキングの条件にすることで、もう少し上がりますし、両チームの実力差やリーグの傾向を知っていればさらに精密な予想ができるはずです。
ここで紹介したブッキング方法はAlternative Match Goals(オルタナティブマッチゴールズ)と呼ばれるもの(試合によっては適用外のこともあります)ですが、ここまでの説明に、金川さんが提唱するブックメーカー投資の本質が含まれています。つまり
- 試合の途中から参加できる
- 必ずしも試合結果を予想するものではない
- 確率の高いところに賭けられる
ということ。そこに先述した「もし予想が外れそうになったら、その時点で賭けを降り、損失額を限定できる」を加えると、手持ち資金を減らす確率を相当に減らすことができるのだそうです。
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金川さんと黒川さんが提唱するブックメーカー投資は、「bet365」というブックメーカーを利用し、Alternative Match Goalsを使うことを前提としたものですが、本書ではほかのブックメーカーやAlternative Match Goals以外の様々なブッキング方法についても解説されています。
手堅い投資のために、またはいつか始める投資の練習のために、役立ててみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
インタビュー
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スポーツで投資ができるという点で「ブックメーカー投資」は斬新ですが、どうしても「ギャンブル」というイメージがつきまといます。これを投資と捉えた時に、どんな魅力があるのかをまずお聞きしたいです。
黒川: ブックメーカー投資の大きな特徴として、「24時間365日できる」というものがあります。株式投資は平日3時までですし、FXは土日はできません。
普段会社員をやっている方や忙しい方も隙間時間にできるという意味で、投資に興味がある方であれば誰もができるのがいいところですね。
金川: 株にしてもFXにしても、なんだかんだ専門知識が必要ですし、勉強しないといけないこともあります。ブックメーカーの場合は、対象がスポーツの試合ですから、そういった勉強はほとんど必要ないという手軽さも魅力です。
20円くらいから始められて、手持ち資金が少なくてもできますから、投資をやったことがなくて、これから始めようという人は、投資のスタートとして向いていると思います。
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株式投資やFXと比べると、売り買いのタイミングが難しくないのも特徴ですよね。投資した試合が終われば結果は出るわけで。
金川: そうですね。試合ごとに投資して、すぐに結果が出るので、一日何回も投資することが可能です。回転率がいいというのはありますね。
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ブックメーカーというもの自体、まだなじみが薄いものですが、投資の世界ではもう一般的なんですか?
黒川: まだまだ認知度は低くて、一部の人しか知らないと思いますね。元々ブックメーカーに興味があって、ギャンブルとしてやっている人はいるかもしれませんが、計画的な投資としてやっている人はほとんどいないのではないでしょうか。
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黒川さんは早い時期からこれを投資として行ってきて、今はその手法を教える活動をしています。教え子を通して様々なケースを見てこられたと思いますが、向き不向きというのはやはりあるのでしょうか。
黒川: 根っからのギャンブル好きには向いていない投資だと思います。まあ、これは投資全般にいえることですけどね。
ブックメーカー投資は、1000万円とか1億円とか、大きなお金を動かすのには向いていませんが、小さなお金を比較的短期間で増やしていけるのがいいところです。実際の作業としては地道なものなので、そういうことをこつこつできる人が向いているんだと思います。
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どんな作業が必要になるんですか。
黒川: 人によって資金は違うのですが、僕が教えているのは、最初は1ドルを細かくベッティングして、運用やリスク管理を学ぶというものです。そうやって、安定して資金を増やす方法を少しずつ覚えていく。慣れてきても、基本的にはこの方法がベースになります。
金川: この本では「1ドルを100回ベッティングしましょう」と書いています。それをすることで損をしない方法や、確率の高いベッティングを身につけていきます。
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ブックメーカー投資は、一般的にはギャンブルとして考えられがちです。となると法律的な問題についてもお聞きしないといけません。
黒川: 先日、国会で通称「カジノ法案」が可決されましたが、今後国内にカジノを誘致したり運営したりするとなると、ブックメーカーにしても日本の会社ができてくるのではないかと思います。海外のブックメーカー企業を買収して、日本向けにアレンジするということも考えられますし。
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ブックメーカーは規制ではなく、緩和に向かう。
金川: それは僕も思います。それと、たとえばカジノはギャンブルですけど、現状ラスベガスに行ってカジノをするのは違法ではありません。ブックメーカー投資は、海外の会社を利用して行うので、基本的にはこれと同じことです。
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短期間で資金を増やせるということをおっしゃっていましたが、手持ち資金1万円で始めたとして、一ヶ月でどのくらいまで増やせるものなのでしょうか。
黒川: これは人それぞれです。僕の知っている中だと、2万円を20万円にするというのを3回やった人がいますね。だから2万円が60万円。
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それはすごいですが、そこまで増えるためには、大きく実力で劣る方のチームに投資して、そのチームが番狂わせを起こすような幸運が必要なのではないですか?
黒川: それがそうでもなくて、その人は同時に30試合ほどに分けてベッティングして、出た利益を含めた資金でまた同じように投資するという手法でやっていたので、「大穴」で利益を出したわけではなくて、複利で利益を出した形です。
常に何かしらベッティングできる試合が行われていて、その試合ごとに投資の結果が出るので、小さくこつこつとベッティングしても、トータルではそれほど時間はかからないというのはありますね。
金川: 僕からも質問してしまいますが、黒川さんはブックメーカー投資のスクールを開いていますよね。様々な教え子がいる中で、うまくいく人は何が違うんですか?
黒川: 簡単に言うと、自己分析できるかどうかです。自分の性格だとかベットの傾向を、客観的に見られることですね。
それと「1ドル100回」を実際にやると、ある程度の傾向はわかってくるものですが、そこに気がつけるかどうかも、やはり「投資をしている自分」を客観視できるかどうかにかかっているんだと思います。
何も考えずに勝った負けたに一喜一憂していると、増えたり減ったりという状態からなかなか抜け出せません。
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本書を読んで、着実に資金を増やしていくためには、「いかに勝つか」よりも「いかに負けないか」が大事だと思いました。負けないためにはどんなことが大切になりますか?
黒川: 目標にこだわりすぎないことではないでしょうか。たとえば、1日で自己資金を10%増やすことを目標にしていたとすると、オッズが「1.05」の試合があるとつい投資したくなるのですが、オッズと投資してもいい試合はまた別で、投資して勝てる試合を見極めることが大切です。
そのあたりのやり方は本の中で解説しているので参考にしてみていただきたいですね。
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ブックメーカーのサイトを見ると、サッカーやテニスといったスポーツをはじめ、様々なベッティングの対象があります。本書ではサッカーとテニスの試合へのベッティングを中心に解説されていますが、これはやはり初心者向けだからですか?
黒川: そうですね。特にサッカーが初心者向けだと思います。テニスは試合の流れが速いので迷う場面が多いですし、サッカーよりもルールが複雑です。ケガなどで途中棄権というリスクもある。
ブックメーカーのサイトの使い方に慣れるという意味でも、最初はサッカーをおすすめします。
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そして、ベッティングの方法も、単純に試合結果を予想するものだけでなく、次のゴールをどちらが決めるかを予想したり、ゴール数を予想したりと様々です。ただ、本書では「Alternative match goals」の一択でベッティングすべしとしています。
金川: 「Alternative match goals」は試合のある時点までの両チームのゴールの合計が「〇点以上」「〇点以下」のどちらかになるかを予想してベッティングするものなのですが、これが一番勝率を上げやすいということで本の中ですすめています。
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慣れてきたら他のベッティングの仕方も覚えたいところです。
黒川: そういう人には、「コーナーキックの総数」にベッティングする方法もあります。これも「〇本以上」「〇本以下」のどちらかにベッティングするのですが、オッズが「1.3」くらいは期待できます。
ただ、知っての通りコーナーキックというのは試合展開によって立て続けに出たりするので、試合終了まで待たずにベッティングを降りるタイミングが大切です。オッズは試合中も常に変動していて、試合途中に「1.1」くらいまで上がるんです。
試合終了まで待って予想が当たれば、当然ベッティングした資金は1.3倍になるのですが、試合中でも「1.1」になった時点で降りてしまえば、そこで10%の利益が確定することになります。ちょっと難しい方法ではあるので本には載せていないのですが。
金川: こうしたノウハウは、自分で試しながらブラッシュアップしていくのも大切です。この本では、基本的な知識や、勝率を上げるためのベッティングの方法を書いているのですが、それを土台に自分で研究しながら、ノウハウを更新していっていただきたいですね。
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サッカーの試合にベッティングする場合、事前に知っておいた方がいい知識はありますか?
金川: ひと試合90分で、レッドカードが出たら退場で、というような基本的なルールがわかっていれば十分だと思います。対戦チームの情報などは基本的には必要ないです。
黒川: 僕も、どこのチームの試合だからベッティングしよう、というのはまったくないです。ただ、南米のリーグの試合は荒れやすいとか、地域やリーグごとの特徴は多少つかんでおいた方がいいかもしれません。
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最後になりますが、この「ブックメーカー投資」を生活の中でどう位置付けるか、といった点についてアドバイスをいただければと思います。
黒川: 最初にもお話しましたが、自分の時間が空いている時にスマホで手軽にできるので、隙間時間を有効活用する手段として取り入れてみていただきたいですね。
電車やタクシーでの移動時間とか、トイレの中のちょっとした時間とか、本当にわずかな時間でできるので。
金川: 僕はいずれお金持ちになりたい人とか、投資を始めてみたい人にとって、これが第一歩になってくれたらいいなと思います。
ブックメーカー投資を始めることでお金について詳しくなりますし、お金が増える仕組みについても考えることになります。これってすごく大事なことで、人生を変える第一歩です。
この投資ができれば、株でもFXでもできると思うので、チャレンジしてみていただきたいですね。