BOOK REVIEWこの本の書評

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まずは、自分の会社の定例会議を思い出してみてほしい。
「責任追及の場になっている」
「資料作りと状況共有だけに重点が置かれ、会議のための会議になっている」
「発言しにくい空気がある」
「建前ばかりが飛び交い、本音は会議が終わった後に批判の形で噴出する」
これらに心当たりがあり、こういう会議のみならあなたの会社は要注意である。

会議の光景は「その会社の会話の鏡」

本書の著者、矢本治氏によると、会議の光景は「その会社の会話の鏡」。

つまり、会社の業績や調子だけではない、上下関係や会社の風土までが会議には反映されるというわけだ。上記のような会議が繰り返される会社があるとしたら、その空気は閉鎖的で、抑圧的で、居心地の悪いものだろう。

では、業績好調で、強烈な推進力で事業を推し進める組織では、どのような話し合いや会議が行われているのか。またそういう風土を日々の現場でも作っていくためには何をしたらよいのか。

矢本氏曰く、カギになるのは「会議」という場の問題ではなく、現場メンバーと15分程度のミーティングを成果の出るパターンで行うこと。
この短時間のミーティング(未来視点)を繰り返せば、職場の会話のパターンが必ず変わり、組織の風土にも良い影響を与えることを実勢からも証明している。

ミーティングで「なぜ?」「どうして?」は禁止

活発な発言・アイデア・提案を妨げるのによくある失敗は「なぜ?」「どうして?」という問いだ。この問いかけによって参加者の視点は「過去」に向いてしまう。

「なぜ今月は成績が悪かったのか」
「なぜできなかったのか」
「なぜ?」によって過去を分析しようとすると、往々にして上がってくるのは言い訳じみた意見になる。これではわざわざ集まって話す意味がない。

忙しい中、集まって話す目的は「より良い未来を創造するため」である。
だから活発にアイデアが飛び交うミーティングに必要なのは「今後何をするか」「みんなで今後何ができるか」という未来視点なのだ。

このやり方で「参加するだけ」のメンバーはいなくなる!

参加者全員の知恵が結集できるからこそ、ミーティングには意味が生まれる。未来への視点を持っていても、いつも決まったメンバーしか発言しないのであれば、それはいいミーティングとは言えない。

矢本氏は、議題となっているテーマについて3分ほどを使ってメンバー全員が複数のアイデアを紙に書いて提案する方法を提唱している。これによって無難なアイデアが重複することがなくなり、メンバー個々に考える力と主体性が育つという。



効果的な方法を身につければ面談でも長い時間の会議でも日々のコミュニケーション全てにも応用できる。
根底にある問題は、ダメな理由を外(会社が悪い、あの人が… 業界が…)に見つけて他責にしていること。だから自分は悪くないと思っていることだという。ミーティングはそこに気づき行動を変えるきっかけとなる場(育成)になることを最後の章で伝えている。

ダラダラと長いだけでマンネリ化した生産性の低い話し合いや会議が、ちょっとした工夫で15分の引き締まった価値の高い場に変わるヒントが満載。

自分のために、チーム・会社のために、取り入れてみてはいかがだろう。

(新刊JP編集部)

INTERVIEWインタビュー

会議・ミーティングがうまくいかない3つの理由

――『みんなが自分で考えはじめる 「15分ミーティング」のすごい効果』について。まずはタイトルにある「15分」という時間の意味について教えていただきたいです。

著者写真

矢本:
この本で私が提唱しているミーティングは、会社で上の方にいる人たちが集まってするものというより、現場で働く人が中心になってするものを想定しています。

売上を作ったり、お客さんと直接接しているのは現場の人なので、どんなに会社の上の方で会議をやって意思決定しても、現場の人が主体的に仕事に取り組まないと、業績はなかなか上がりません。じゃあそのためにどうすればいいのかと考えた時に、現場のミーティングを活性化するというのが一つある。

でも、シフトで動いている職場もあるでしょうし、仕事前にいろいろな雑務があってなかなか全員が揃わない会社もあるはずです。もちろん日常業務も忙しいですから、全員集まって何時間も会議をするというのは現実的ではないでしょう。世の中的にも時短の流れですしね。

そうした状況で、職場の問題点への解決策を取りまとめて合意形成できる話し合いに使える時間、気軽に始められる時間として15分が一つの目安だと思ったんです。ただ、きちんとしたパターンで15分話ができれば、数分の日常会話でもできますし、それが1時間になってもできるはずです。逆にそれができていなければ1時間やっても2時間やっても実のあるミーティングにはなりません。

この本は15分という限りある時間のなかで、全員にとって実のあるミーティングをするための、コミュニケーションのパターンについて書いています。

――ということは、対象としては現場を預かるリーダーの方に向けて書かれたわけですか。

矢本:
そうです。もともと起業前の僕がそうでした。企業の中間管理職の方もそうですし、飲食店の店長もそうですし、現場で働く人をまとめて意見を集めたり、発言したりといった立場の人の応援をしたくてこの本を書きました。

――これまで多くの企業でミーティングのコンサルティングをされてきたかと思いますが、会議やミーティングに関する悩みというのは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

矢本:
ミーティングや会議がうまくいかない原因は大きく分けて三つあります。
一つは「アイデアが出ない」で、誰からも意見が出なかったり、出てきても一つか二つ変わりばえのしないものが出てくるだけという。

二つ目は、「アイデアは出るけどうまくまとまらない」。たくさん意見が出た中でどれを選ぶかというところで、皆の合意形成が上手にできない。

三つ目は、「合意形成まではいくけども、決めたことが実行されない」で、これは決まったことが行動に移されなかったり、なかなか続かなかったり。

ミーティングや会議がパフォーマンスにつながらない理由は基本的にこの三つです。これらの解決法をこの本の中で書いているので、心当たりのある方は参考にしてみていただきたいですね。

――いち労働者としてミーティングで感じる疑問や違和感への解決策が網羅されていました。たとえば、「提案した本人がやるという法則をやめる」です。いい意見を持っていても、提案して採用されたら自分の仕事が増えるだけです。これでは、意見があっても提案しにくくなってしまいます。

矢本:
提案した本人が一番イメージや危機感を持っている可能性が高いので、本人が実行するのはまちがったことではないのですが、それだとどうしても特定の優秀な人だけが仕事をたくさん抱えることになります。

その結果、その人がボトルネックになって仕事が回らなくなったら元も子もないわけで、そうならないためにも担当者を本人の他にもう一人つけるとか、場合によっては本人ではなく違う人を担当にするのは大事なポイントだと思います。

「経験則」がリーダーの視野を狭くする!

――会議やミーティングで起きがちな問題ということですと、採用されるアイデアそのものの良し悪しよりも発表したメンバーの日頃の影響力によって決まってしまうというものがあって、これだと他のメンバーが不満を溜めてしまうことにもつながります。これを避けるためにミーティングをファシリテートするリーダーはどのようなことをすべきでしょうか。

矢本:
確かに、意思決定の段階でリーダー本人の意見であったり、部下の中で一番パフォーマンスの高い人の意見が通りやすいというのはよくあります。

ただ、そういう風に偏ってしまうのでは、他のメンバーを集めた意味がありませんよね。リーダーとその部下と二人で話せばいいだけなので。それに、経験上の話ですが、切り捨てた意見が十個あったとして、第三者(僕から)から見ると一つか二つはいい意見が入っているものです。そして、こういう意見はおうおうにして、リーダーの思い込みや偏見によって切り捨てられている。

だから、私はメンバー全員から意見が出たら、まずはその中から三つくらい選んでくださいと本の中で書いています。自分の意見を選ぶのもいいですし、信頼している部下の意見を選ぶのもいい。でも最後の一つは他のメンバーの意見も、本心ではあまりいいと思わなくてもあえてチャレンジしてほしいんです。

――なぜですか?

矢本:
経験則があることでかえってリーダーの視野が狭くなっていることが多いんです。自分がいいと思う意見や信頼する部下の意見以外のものを一つ選ぶというのは、メンバー間の公平性を保つことだけではなく、リーダーの視野を広げる意味もあります。

実際に行動するのは部下です。確率論でいえば、経験と実績のあるリーダーが判断するのが正解かもしれませんが、プレーヤーとして実績を残していてもリーダーとしてうまくいっていないなら、その意思決定の仕方を少し疑った方がいい。そこに気づかないと何度ミーティングをしても状況は変わりません。

――「15分ミーティング」を取り入れることで社風が変わると書かれていました。この理由はどんなところにあるのでしょうか。

矢本:
ミーティングがうまくいかないのは、端的にいえばコミュニケーションのパターンに問題があるんです。

よくあるのが、何か問題があったり、うまくいかないことがあると「なんでそうなるの?」という形で、過去の出来事を詰問するような問いかけをしてしまうケースです。責任追及のパターンですね。

これがうまくいかなくなる分岐点で、コミュニケーションの悪いパターンです。この問いかけをすると、問われた方も自己防衛の気持ちがはたらきますから、つい言い訳めいたことが口に出てしまいます。これでは無意味ですよね。

ミーティングにしても会議にしても、実施する目的は「より良い今後(未来)を想像するため」にあるのです。だったら問いかけも「今後どうすればいいか」と未来を向いた形にすべきなんです。何かあった時に詰問されるか、今後どうするかという前向きな話をされるかによって、同じ人でもその時の思考回路と答えは変わります。それを繰り返せばその人の数年後の成長力はまったく違います。

こうした前向きなコミュニケーションが常にできればいいのですが、「明日から全ての会話を変えてくれ」といっても急には難しい。でも、ミーティングの15分間だけならできるはずです。ミーティングによって未来視点のコミュニケーションが習慣化できれば、いずれ普段のコミュニケーションにもそれは広がっていき、そうすればミーティングのメンバーではない人にも影響を与えられるでしょう。その結果として会社全体のコミュニケーションパターンが未来視点になる。これが「社風が変わる」の真意です。

著者写真

――最後になりますが、ミーティングや会議がうまくいかないことに悩んでいる人にアドバイスやメッセージをお願いします。

矢本:
ミーティングも会議も普段の職場の会話も大切な基本は同じです。まず自分達はどこがうまくいっていないのかを見極めることです。
質問の投げかけがまちがっていて、アイデアや提案が出にくくなっている、または提案を言える空気が作れていないことが問題なのか。
それとも、意見は出るけども実は影で文句が出る、つまり合意の方法が間違っているのか。
あるいは決めたことを実行するところがうまくいっていないのか。
うまくいかない原因は基本この三つに集約されます。そしてこの本にはその解決法が詰まっています。職場と照らし合わせて参考にしてみていただくとわかりやすいはずです。

考え方としては、繰り返しになりますが「なぜ?」と過去を見るのではなく「今後はどうする?」と未来を向いた議論をしていただきたいと思います。

そして「他の人がもっとこうしてくれたら」と周りのせいにするのではなく、ミーティングの中でまず「自分(達)ができることは?」を考え、行動すること。
「未来視点」で「自分(達)ができること」を考える習慣が定着すれば、その組織に起きている問題は必ず解決されます。未来は自分と仲間との考動で必ず良くなると信じて話し合って(ミーティングして)もらいたいですね。
(新刊JP編集部)

BOOK DATA 書籍情報

プロフィール

矢本 治(やもと おさむ)

ミーティングコンサルタント
㈱チームサポートプロ代表

1971年広島県出身。
愛媛県でホテルマンとして10年勤務後、2004年当時低迷していたブライダル運営会社に営業責任者として転職(退職時には最年少取締役営業本部長)。衰退産業とも言われるブライダル業界において設備投資、人員の入れ替え、安売りにも頼らず、会議・ミーティングを工夫して売上を3年間で3倍(9億円)。ミーティングのやり方次第で社員のやる気と実行力が向上すれば売上も上がり、人材育成にも役立つことを経験。グループ内でミーティング術をブラッシュアップしていきながら社内に浸透させて売上増に貢献。結果7年で7倍。

より多くの会社をサポートしていきたいと2010年に会社を設立。
日本初ミーティングコンサルタントとして、活動の柱の一つは「コンサルティング(または研修)」業務。顧問企業で実際のミーティング・会議の司会進行役を請け負う。成長への的確な課題を見つけ、参加者から未来視点アイデア・提案の引き出し、計画・修正・結果までをサポート。自ら解決策の提案も積極的に行う。ミーティング・会議はどの組織にも存在するためクライアント先は飲食、製菓、ホテル、旅館、ブライダル、写真館、アパレル、エステ、美容室、人材派遣、金物、建設、住宅、印刷、医療、介護…など全国に多種多様な職種に及ぶ。
最近では「町おこし」や「地域活性化」の依頼も急増中。「経営者」「スタッフ」「お客様」の三方の距離を縮める未来創造型ミーティング(コミュニケーション)術は確実な結果と育成につながるため、圧倒的なリピート率と顧問企業から新規企業の紹介率を誇っており、93%以上のクライアント先は毎年業績が必ず向上している。

また「1社に1人ミーティング・会議の司会進行の上手なスタッフがいれば会社は変わる!」の想いを具現化するために、もう一つの活動の柱は「矢本塾の開催」や講演・セミナー活動。経営者・幹部を対象とした矢本塾では1年半で全国から100名以上の塾生を輩出。自社に持ち帰って活用するミーティング術を含む、リーダー・プログラムを提供することで、より多くのリーダー・企業の業績向上に貢献している。

目次

  1. プロローグ なぜ今、15分ミーティングなのか?

    1. 会議か、ミーティングか!?
    2. リーダーシップとミーティングの深い関係
    3. なぜ「15分」がいいか?
    4. 時短ミーティングが、なぜいいか?
  2. STEP15分ミーティングの基本的な進め方

    1. まず「会話」を見直すことから始める!
    2. 人ではなく会話のパターンを変える
    3. ミーティングで、チームの知恵を結集する!
    4. 意見を効果的に集約する「発言」の方法は?
    5. 提案やアイデアを「書く」5つのメリット
    6. テンポの良いミーティングをするための基本ルール
    7. 発言を聞くときの5つのポイント
    8. 「未来への可能性」が見えているか!?
  3. STEPアイデアを整理して合意・決定する

    1. 早く決めれば、何事もうまくいく!
    2. 何をするのか? を決める
    3. 実行する事柄の「管理者」を決める
    4. 強い組織にする"約束事"の5つのポイントとは?
  1. STEPミーティングの結果を必ず実行する!

    1. 合意が形成されたら「計画」にかかる
    2. 計画時に決めるべき5つのポイント
    3. つくった計画を全員が確認し合う
  2. STEP必ず「軌道修正ミーティング」を行なう

    1. 強い組織には、「軌道修正力」が備わっている!
    2. 決めたことを「見える化」するメリットは?
    3. 軌道修正ミーティングの、基本的な進め方とは?
    4. 遅れたり止まっている計画に、どう対応するか?
  3. STEPいくつかの事例でミーティングの効果を見てみよう

    1. 震災を乗り越え、毎年業績を伸ばし続けるビジネスホテル
    2. スタッフ平均年齢58歳の旅館が、国内外のお客様で満室に!
    3. 急成長を続ける北海道住宅企業の新たなチャレンジ
  4. エピローグ 人材育成を兼ねるミーティング

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