インタビュー

『お客様は「えこひいき」しなさい!』(KADOKAWA刊)の著者であり、“顧客管理士”の肩書きを持つ高田靖久さんは、常連客を「えこひいき」しなさいと訴える。

もしかしたら、革新的に捉えられるかもしれない本書の内容は、サービスや経営の考え方を大きく変えるものになるはずだ。

著者の高田さんに「えこひいき」の真意をうかがった。

■新規客ばかりを欲しがっていませんか?

――本書の冒頭で高田さんは、「全てのお客様に同じサービスを」という神話を覆していますよね。そこには「顧客の不満足」があるとありますが、なぜ顧客は不満を持ってしまうのでしょうか。

高田:例えば、普段からお店に足しげく通っていて、常連客になっているとしましょう。しかし、そのお店では、新しく来たお客様の方が手厚いサービスを受けているとしたらどう思いますか?

多くお金を払っているお客様は自分を特別扱いしてもらいたいと思っています。ところがお店は「お客様は平等」という思想、または新規客をもてなすという方針をもちがちです。そこに不満を持っているんです。

――常連客をより重点的に「えこひいき」することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

高田:端的に言えば、儲かるということですね。会社の売上というのは、30%の「たくさんお金を使うお客様」で成り立っていると言っても過言ではありません。その売上の構成は75%ともいわれています。

――3割の人で75%というのは確かに多いですね。

高田:そうなんですよ。だから、大口のお客様、常連でたくさんのお金を落としくれるお客様は「えこひいき」をすべきなのに、そこに経営者が気付いていないことが多い。

また、常連客は、自分と似たようなお客様を連れてくることが多いんです。同じ価値観、同じ収入層、同じような生活…。つまり、そうしたお客様たちも、たくさんのお金を使うお客様になりやすいんです。

――それが経営にも好影響を与えるということですね。

高田:そうなんですよね。お客様への「特別扱い」は、口コミの効果も生み出して新規客を連れてきてくれます。常連のお客様に連れてこられたお客様は、一見のお客様よりも強い人間関係があるので、最初から居心地が良い、と。

――では、どのようにすれば常連客になるのでしょうか。

高田:私はもともと顧客管理のソフトウェアや販売促進ツールを販売してきた人間なので、それなりのノウハウも身に付けています。

大口の常連客をお店で作りだすために、基本的な4つのステップがありまして、これはほぼどんな店舗においても共通しているといっていいでしょう。

まずは新規客を集める、次にお客様を固定客にする、第3のステップはお客様を成長させる、そして最後のステップにお客様を維持する。

この中でも異質といえるのが「お客様を成長させる」というものです。固定客にするのと、そのお客様を維持するためには、このフローは欠かせません。

■「お客様別売上げランキング」を作成すべし! その理由とは?

――高田さんが本書でも提唱されている「売れる仕組み構築プログラム」についてご説明いただいています。それは「集める」「固定客にする」「成長させる」「維持する」という4つのステップがあるとおっしゃっていますが、特に第3ステップの「成長させる」に注目されています。

高田:そうですね。固定客にすることと、自然にお客様が定着する「維持する」のフローに大きく影響を与えるのが「成長させる」というフローです。

ここで登場するのが「えこひいき」なんです。この本では大きな企業についての「えこひいき」の事例も取り上げていますが、活用するならば小さな店舗の方が有効であるはずです。

小さな飲食店にある、常連客しか知らない裏メニュー。すごく誇らしい言葉の響きじゃないですか。その裏メニューを食べたいがために訪れるお客様もいるわけで、これが一つの「えこひいき」になるんですね。

――「えこひいき」の仕方についてお伺いします。何度も来てくれるけどあまりお金は払わない人、頻度はそこまででもないけど定期的に来店してたくさんお金を支払ってくれる人、どちらを「えこひいき」すべきなのでしょうか。

高田:これは間違いなく、会社やお店に累計でたくさんお金を落として帰るお客様です。質問の回答をするならば、後者ですね。

ドライな考え方と思われる人もいるかもしれませんが、どの会社も取引件数ではなく、売上高が最も重要とされるはずです。

私はこの本の中でも言っているのですが、ぜひ「お客様の売上げランキング表」を作成してみてください。そうすることで、目立たないけれど実はお金をたくさん落としてくれている人は誰なのか、本当の姿が見えてきます。

また、お客様の売上げランキングを見て、上から10%を「ファン客層」、20%を「得意客層」、30%を「浮遊客層」、40%を「試用客層」という4つの客層に分類してみてください。

――これで分かることはなんでしょうか。

高田:このインタビューの冒頭で申し上げた「売上の75%を占めている、上位3割のお客様」が【誰なのか】が把握できます。

その客様に対して「えこひいき」が重要な一手となるわけですね。

――では、新規客に対してどのように対応すべきなのでしょうか。

高田:多くのお店が割引きを使って新規客を集めようとします。

しかし、割引きで集客すると、「安さに価値を感じる」お客様ばかりが集まります。そのようなお客様は、次も安くないと来てくれません。結果、「割引きで集客」すると「1回きりのお客様」ばかりが集まりがちになります。

なので、それ以上に「価値感」で集客し、「そもそも固定客になりやすいお客様」を集めていく必要があります。この点については、拙著『「1回きりのお客様」を「100回客」に育てなさい!』(同文舘出版)にて詳しく説明していますので、よければそちらをご参考ください。

――最後に、本書をどのような方に読んでほしいですか?

高田:経営者ならば全員に読んでほしいと思いますが、特に小さな会社や店舗では、この「えこひいき」の顧客戦略は非常に重要です。

本書では実際の「えこひいき」の事例を多数紹介していますし、実際に使われているランクアップシステムという、会社側にもお客様側にも好影響を与えられるシステムについて書いています。

ぜひこちらも参考にしていただいて、経営に役立てていただければ幸いです。

(了)

書籍情報

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お客様は「えこひいき」しなさい! 3倍売れる「顧客差別」の方法

定価 :

640円+税

著者 :

高田 靖久

出版社:

KADOKAWA

ISBN :

4046017635

ISBN :

978-4046017635

目次

  1. 第1章なぜ、えいこひいきが重要なのか?
  2. 第2章どのお客様をえいこひいきするか?
  3. 第3章『マン・ツー・カンパニー』の経営を行なう
  4. 第4章驚異の『ランクアップシステム』を実行せよ!
  5. 第5章お客様にかける「経費」をえいこひいきしろ!
  6. 最終章えこひいきマーケティングとは、その他のお客様を切り捨てるものではない

プロフィール

高田 靖久

1971年生まれ。顧客管理士事務所「3×3JUKE」代表取締役。元東芝ITコントロールシステム所属。20年間、飲食店・美容院向け顧客管理ソフト・顧客戦略支援ツールの企画・販売に携わる。入社数年は“売れない営業マン”だったが、その後「基本給の5分の1」を自己投資し、短期間で経営ノウハウを習得。それを顧客管理ソフトに組み込み、既存クライアントに提供したところ、売上拡大店が続出。そのノウハウを全国に伝えていきたいと、独立。飲食店や美容院を中心に、店の「顧客戦略立ち上げ支援」「販売促進サポート」を行う。
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