「売らない営業」で売れる社員教育と経営改革の全貌
なぜ、100万円の治療器が飛ぶように売れるのか? 熱狂的ファンを生み出す「ココロカ」の秘密

なぜ、100万円の治療器が飛ぶように売れるのか?
熱狂的ファンを生み出す「ココロカ」の秘密

著者:渕脇 正勝
出版:幻冬舎
価格:1,500円+税

Amazonでみる

本書の解説

「今すぐ売ってくれ」と言われても、「申し訳ございません」とお断りする。

家庭用高電位治療器の開発と販売を行うココロカ株式会社は、非上場企業で、テレビCMも流していない。知名度がほとんどない小さな会社なのに、熱狂的なファンが多く、リピーターは増えているという。それは一体なぜか――。

本書は、ココロカの代表取締役社長である渕脇正勝氏自らが経営の秘密を解き明かす一冊である。

ココロカの製品の人気の要因を探ってみると、販売の裏側に秘密がある。
その一つが「アドバイザー」の存在だ。

家庭用高電位治療器といっても、中古自動車が変えるほどの値段なのだから、一般的に見れば高価だ。そんな製品を売るのが「アドバイザー」である。アドバイザーとはいわば営業担当者のことで、彼らのお客様と向き合う姿勢が、信頼を呼ぶのだ。

ただ、営業を経験したことがある人は「信頼を築く」ことがいかに難しいか実感しているだろう。家庭用高電位治療器という商品柄、「あなた、会社にだまされているのよ」とアドバイザーに忠告する人もいるという。しかし、ココロカのアドバイザーたちは会社からさまざまなサポートを受けながら、全国を飛び回り、成長していく。

例えば、誰もが一定レベルの業務が可能になる網羅的な業務マニュアルの存在。製品のプロモーションで全国各地を飛んでいるアドバイザーとの密なコミュニケーション。ビデオカメラでモニタリングすることで、姿勢や言葉遣いなど細かな指導を行っていたりもする。

また、ココロカでは20代の社員が数多く活躍しているが、新卒採用で見るべき点も社ならではのものがある。

新卒採用はすべて「アドバイザー候補」。そして、身体的にも精神的にもかなりハードな仕事であり、それでもやりがいのある会社であるという、良い面も悪い面もしっかり伝えた上で、下記のような適正・素質を見ながら採用を決めるという。

(1)周りに人を集められる(人に好かれる)こと
(2)打たれ強いこと
(3)独立心が強いこと
(4)目的意識が明確で強いこと
(5)「3つのルーズ」(お金、時間、異性)がないこと

さらに、内定後から入社までの期間にも、ココロカ独自のプログラムを用意しているといい、これが10%という低い退職率の実現に役立っているという。この部分はぜひ本書を読んで確認してほしい。

社長自らが執筆した本書には、どのようにすれば社員が活躍する企業になるのかというヒントが詰まっており、それを実行することが企業の業績アップにつながっていくのだろう。

会社に人が定着しない。採用で良い人材が見つからない。そうした悩みを持つ経営者はもちろんのこと、会社を大きくしていく上で手詰まり感を抱いている人なども、何かひらめきが得られるかもしれない。救いとなる一冊である。

インタビュー

渕脇 正勝(ふちわき・まさかつ)

■ココロカのアドバイザーは「すごく成長できる仕事」

『なぜ、100万円の治療器が飛ぶように売れるのか? 熱狂的ファンを生み出す「ココロカ」の秘密』が7月に出版されましたが、どのような反響が寄せられていますか?

渕脇: 本書は私たちの会社・ココロカのことを広く知ってもらうという目的で執筆させていただきました。

たとえば、弊社では新卒を中心に採用をしているのですが、その選考の中でこの本を読んできましたという声や、本を通して事業や経営方針に興味を持ちましたという声をいただきました。また、社員からも反響がありますね。私が直接話をする機会がなかなか取れない中で、考えていることをこの本を通して伝えられているのかなと思っています。本が会社に対して良い影響を与えていることは確かです。

採用でも効果を発揮しているとのことで、本の表紙がとてもカジュアルですよね。若い方も手に取りやすいデザインです。

渕脇: ありがとうございます。一般的な企業経営の啓蒙書はもっとシンプルなデザインだと思いますが、この本は若い人を含めた幅広い層に読んでいただきたいというところで、このような表紙にしていただきました。これは出版元の幻冬舎さんに感謝したいです。

内容についてお話をうかがいたいと思います。ココロカでは営業担当の方を「アドバイザー」と呼ぶそうですが、それはなぜですか?

渕脇: 仕事の内容としては営業です。ただ、営業というと「売る」仕事というイメージが先行しますよね。そうなると、行動も「売ればいいんだ」ということが優先されます。なので、「アドバイザー」と呼称を変えることで、売ることが仕事のすべてではないということを明確にしています。

お客様にアドバイスをしていく立場であると。

渕脇: そうです。お客様が健康に生きていくためのアドバイスをする立場にある。また、将来的なお金の話であったり、そういったちょっとした悩みに対しても真摯に向き合う。お客様の生活のアドバイザーというイメージを持たせて社員教育をしていくという部分で、「アドバイザー」と呼んでいるんですね。

本書の第2章、第3章は、ビジネス書としてすごく興味が惹かれます。「売らない営業」であったり、育成ノウハウの部分ですね。驚きなのが、常連のお客様からも「売ってほしい」と言われても場合によってはお断りすることもあるという部分です。これはなぜですか?

渕脇: そうですね。高電位治療器自体、即効性があるものではないので、珍しいから購入したいとか、アドバイザーが良い人だから購入したいと言われても、お断りすることがあります。

高電位治療器というものを正しく認識してもらうためにも、しっかり吟味していただいて、購入しても使わないということにならないようにしたいんですね。よく分からないまま購入した商品は後々のクレームに繋がりやすいですし、それはこの業界自体にとっても損であろうと。

本当に治療器を使い続けていただけるお客様が、これを使って健康になるんだという覚悟のようなものを持って、購入していただきたいと考えています。そのため、あまり治療器のことを知らずに「これいいね、購入したい」とおっしゃるお客様に対しては、よく効果を確かめてからご購入くださいとお話ししています。

すごく慎重な姿勢ですね。

渕脇: そうですね。私は、モノの売り買いにあたっては、キャンセルを100%防止することはできないと思っています。ただ、やはりキャンセルをするような内容で提供してしまうと、お客様は嫌な思いをしてしまいますよね。

アドバイザーは1ヶ月から3ヶ月間、スマイルプラザという場所にい続けて、お客様の相談を親身になって聞きながら、その解決策を見つけていきます。そこで提供するこの治療器が体と合わず、キャンセルや返品になるとお客様側がつらい思いをしてしまいます。だから「お客様が後でつらい思いをする営業はやめなさい」ということを伝えています。

治療器は使い続けていくことで価値が出るので、最後までお客様の健康を見守るといいますか。そういう営業をしなさいと言っているんですね。それが、キャンセル率0.1%という高い満足度を維持できている理由だと思っています。

ホームセンターの駐車場などの一角に「スマイルプラザ」というブースを設営し、アドバイザーが1人店長としてブースの切り盛りをするそうですね。そう聞くと、このアドバイザーの権限はものすごく広いように感じます。

渕脇: そうですね。アドバイザーとして活躍をしているスタッフは、いずれは事業をしたいとか、志の高い人が多いんです。だから、ココロカにいるうちから、独立などをするための準備として、自己管理やお金の管理、お客様の管理をすべて経験していくわけで、ある種、起業家や商売人みたいな感覚を実践で身につけていける環境なのかなと。

すごく成長できそうな環境です。

渕脇: はい。卒業するメンバーは自らの目標を達成して、自分で事業をしたいとかステップアップしていいますけど、よく聞くのは「ココロカのプロモーションを経験したらその後、苦労しない」という言葉ですね(笑)。

アドバイザーはかなり厳しい仕事ですから、現場にいる本人たちは大変だと思いますけど、次のステップに繋がっているのではないかと思います。

新卒採用をする際は全員アドバイザーとしての採用となるそうですが、それはなぜですか?

渕脇: アドバイザー研修を受けて、アドバイザーのスキルやノウハウを得られれば、どんなところでも通用できる人材になると考えています。もちろん、全員アドバイザーになることはできないので、素質や性格、元々のスキルを見ながら内勤の方に部署移動してもらう人が出てきます。

その他に、ココロカ特有の採用方法や基準はありますか?

渕脇: アドバイザーは人に好かれる仕事ですから、面接の際にはとりあえず履歴書に目を通しますが、先入観にとらわれず、面接を通して感じた人間性ですとか、考え方を重視するようにしています。

「考え方」というところでは、どういう考え方を持っている人が成長すると思いますか?

渕脇: やはり素直に他者の話を聞く姿勢を持っている人ですね。親身になって人の話を聞けることは大きな伸びしろです。

また、なぜココロカの仕事をやりたいのか。お金を稼ぎたいでも、社会貢献でもいいのですが、真剣にそういう気持ちを持って話しているかどうかというところはチェックします。仕事は長く続けていくものですから、1年で成長するんだ!という感覚ではなく、3年から5年くらいはココロカでアドバイザーとして頑張っていこうという気持ちがあるかどうかですね。

では、実際に現場に立つアドバイザーで結果を出せる人は、どういうところが違いますか?

渕脇: やはり、人から好かれるアドバイザーは結果を出しますね。お客様の中には、自分が健康になることを諦めている方も多いんです。長年の治療やいろんな経験で、「もう何をやってもダメだから」と思っていらっしゃる方もいます。そんなお客様に対しても健康にすることを諦めないくらい一生懸命なアドバイザーは強いですね。健康になることを諦めさせないという意識があるアドバイザーは受け入れられます。

「この子にだったら本音で話そう」と思えるような人が一番信頼されますし、そういうアドバイザーは総じて、時間にもお金にも、異性関係にも厳しいです。

その部分はこの本を読んで気になっていました。異性関係にも厳しくないといけないんですね。

渕脇: そうです。アドバイザーはだんだんとタレントや芸能人のような存在に見られてきます。そうなると、誘惑も出てくるので、仕事として割り切ってちゃんとお客様と接しないと信頼が崩れてしまいます。

現場では、3ヶ月間じっくりとアドバイザーの振る舞いや行動が見られます。だから、メンタル的にもかなりタフでないといけない仕事だと思いますね。

■ネガティブなイメージをはねのけ、信頼を積み重ねていく

渕脇 正勝(ふちわき・まさかつ)

渕脇さんご自身のお話を伺いします。ココロカの社長に就任した際に会社自体は経営難になっていたそうですが、渕脇さんはその時、どういう会社の未来を見据えていましたか?

渕脇: 私は中途でこの業界に入り、アドバイザーとしてたたき上げでやってきましたが、最初の頃はお客様と接している中で、なぜこんなに批判をされるのかと思うくらい、この仕事自体が支持されていなかったんです。

それでも粘り強くお客様と関係を構築していき、最後は自分たちの仕事を理解してくれたお客様に、100万円以上の商品を購入いただきます。ただ、そうした業界のマイナスイメージは払しょくしていかなければいけないと考えていました。

そこで、まずはココロカというブランドを確立し、自分たちの仕事について明確にイメージしていただけるような会社にしていきたいと思っていました。弊社の活動や教育が同業の他の会社にも真似されるようになれば、この業界自体かなり変わるのではないかと思っています。

なるほど。

渕脇: 以前は「売り上げを上げさえすればいい」という空気がありましたが、長く治療器を使っていただき、ココロカを愛してもらうために、報酬制度を変えながら、高電位治療器業界が良いイメージになるよう、アドバイザーに教育をしてきました。

イメージの壁はやはり高いのですか。

渕脇: 高いですね。新入社員たちに、「現場に出たら言われることがある。もし、その言葉を言われたら、成功すると思いなさい」という話をしています。

それは、「会社に洗脳されているんじゃないの」とか、「会社に騙されているんじゃないの」とか、「お金の亡者なんじゃないの」といった言葉です。

言われたら相当つらい言葉ですが…。

渕脇: ただ、これはスマイルプラザで頑張っているアドバイザーほど言われるんです。

以前の業界のイメージのまま、そういう言葉を投げかけてくるお客様がいます。ただそれは、そこにいるアドバイザーがすごく頑張っているからこそ、そうした言葉をかけてくれているのだと思います。そして、3ヶ月同じようにずっと頑張っていると、いつの間にか見方を変えてくれるんですね。

大事なことは、3ヶ月の会期を終えるまで、一貫性を持ち続けることです。ゴミ拾い一つでも最後までやり続ける。その姿をお客様は最後まで見続けてくれているので、「この子は嘘をついていない」と認めてくれるんです。

渕脇さんが2000年にココロカに入社されてから、20年になります。この20年間を見てきてどういうところが変化したなと思いますか?

渕脇: お客様と長いお付き合いをしていこう会社に変わりました。創業して32年、今、一番ありがたいのは、スーパーやホームセンターといった小売り業者さんと良いお付き合いができていることです。

このコロナ禍で出店見送りになる会社も多い中で、「ココロカさんはOK」と言っていただくこともあり、ようやく信頼を築けてこられたのかなと考えています。「高電位治療器を取り扱わない」という小売り業者さんも、ココロカさんだったらと言ってくれるお店もありますし、その点は私が入社して20年の中で変化した側面だと思いますね。

渕脇さんが経営者として大事にしている軸や理念がありましたら教えてください。

渕脇: 今、企業の寿命がどんどん短くなっている中でも、ココロカは100年企業を目指しています。そのためにも社員の営業力や取引先との絆をしっかり大事にしていきたいというところは大事にしています。

また、今、6万人いるお客様と長くお付き合いをしていければと思っています。今後、購入したお客様がココロカのファンでい続けていてもらうためのサービスを充実していくつもりです。

そして、販路の拡大を見据えつつ、ココロカを世界でも通用するブランドに育てていきたいですね。

最後に、本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

渕脇: まずは営業の仕事をしている方ですね。ココロカのやり方が全てに通用するとは思っていませんが、お客様と良い関係を築き、長く仕事をしていこうと思っている人にとって、アドバイザーの仕事の基本の部分は参考になると思います。

また、営業職を目指していたり、営業職に興味を持っている学生さん、あと経営者の方にも読んでもらいたいなと思います。参考になる部分はあるはずです。

以前は大きな批判も受けました。ただ、32年間積み上げてきた信頼ができていて、社会からも認められていると確信しています。その誠実にやってきた部分を参考にしていただければ、良いヒントになるのではないかと思います。

(了)

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. 第1章
    たった1台の治療器が、人生を変える
  3. 第2章
    100万円の治療器が支持されるワケ
    ~ 「売らない営業」がもたらす信頼~
  4. 第3章
    〝ダイヤの原石〟を採用し、トップアドバイザーに育てるノウハウ
    ~ 「人を引き込む対話力」を育む社員教育~
  5. 第4章
    経営危機を乗り越え、3年で売上160%増を実現した方法
    ~使命感から実現した経営改革~
  6. 第5章
    健康産業ナンバー1であり社員幸福度ナンバー1の会社へ
  7. おわりに

プロフィール

渕脇 正勝(ふちわき・まさかつ)
渕脇 正勝(ふちわき・まさかつ)

渕脇 正勝(ふちわき・まさかつ)

1964年、東京都生まれ。1986年、日本工業大学システム工学科を卒業後、OA機器販売会社の営業や、教育関連企業の広報などを経験し、トップ成績を収める。
その後、2000年にココロカ株式会社に入社。アドバイザーとして営業現場の第一線に立ったのち、マネージャーとして人材育成を担う研修課の新設などに尽力。
2013年11月に代表取締役社長に就任し、現在に至る。

なぜ、100万円の治療器が飛ぶように売れるのか? 熱狂的ファンを生み出す「ココロカ」の秘密

なぜ、100万円の治療器が飛ぶように売れるのか?
熱狂的ファンを生み出す「ココロカ」の秘密

著者:渕脇 正勝
出版:幻冬舎
価格:1,500円+税

Amazonでみる