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見た目の印象がガラリと変わる「服のリフォーム」

アマゾンへのリンク『Dr.久美子流 服のリフォーム術』

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BOOK REVIEW

袖丈は何センチが正解? 印象がグッと良くなる「スーツ」のチェックポイント

ビジネスパーソンにとって「見た目の印象」は仕事の成否を左右する大事な要素のひとつだ。
心理学では、人の第一印象はわずか5秒程度で判断され、見た目が与える印象は9割を占めると言われている。服装にはとことん気を使っていきたいところだ。

実は、既成のスーツのサイズに身体がピタリと合っている人は少ないという。サイズ感が合っていないスーツは、シワが寄ったり袖丈の長さが長すぎたり短すぎたりして、全体的にだらしない印象になる。

とは言え、ジャストフィットするフルオーダーのスーツをつくるのは、金銭的に厳しいという人も多いだろう。そこで知っておきたいのが「服のリフォーム」だ。

『Dr.久美子流 服のリフォーム術』(万来舎刊)の著者であり、株式会社心斎橋リフォームのチーフフィッター兼東京・丸の内店店長である内本久美子氏は、「直した服は着る人を素敵にする」と述べる。では、印象の良し悪しを決めるチェックポイントはどこなのだろうか。
本書からいくつか紹介してみよう。

人目につきやすい「袖周り」をチェックしよう

男性のスーツの基本はやはりジャケット。その中で、動かしたりデスクの上に乗せたりすることから意外に人の目につきやすいのが「袖周り」だ。

まず、「袖丈」は、テーブルに肘をのせて曲げた状態で、シャツのカフが2.5~3cm出るのが理想的。立った状態で袖口から1~1.5㎝程度シャツの袖が見えるのがベストだ。

また、気にする人は少ないが、重要なのが「袖の太さ」。袖幅は細い方がエレガントな印象だというのが紳士服界の定説になっている。さらに「袖口の意匠」を気にすると、細部まで配慮が行き届いていることが見せられるので印象を格上げすることにつながるという。

自分では見えないからこそ気をつけたい「バックスタイル」

スーツの身だしなみをチェックするとき、ほとんどの人は鏡を見るはずだ。しかし、鏡では見えないところにも気を使うと印象はさらにアップする。

まず、気をつけたいのは背側のウェストから裾にかけて入った「ベント」と呼ばれるスリット。
ちなみにベントが裾の両脇にあるものは英国式の「サイドベンツ」(スリットが複数なので「ベンツ」)。一般的な中央に施されたものは「センターベント」という。

ベントは常に開いていてはいけない箇所だ。ジャケットのサイズが合っていないと、生地が引っ張られ、ベントが開きっぱなしになってしまうので気をつけよう。

またバックスタイルでは「ツキ」にも注意したい。首の後ろの部分に横ジワが入り、その部分が山形に盛り上がることを「ツキが出る」「ツキジワが寄る」と言う。
「ツキ」はジャケットの背幅が足りないために出てくる。後姿のシワは意外に目立つ。取引相手を先導したり別れ際で背中を見せたりしたときに「ツキ」が出ていると、だらしない印象を与えてしまうだろう。

女性が気をつけたい「シャツ」の着こなし

女性の活躍が目覚ましい昨今、スーツ姿の女性も数多くいる。男性と女性では身体の特徴が違うが、そのチェックポイントは男性のものが概ね当てはまるという。

女性ならではのポイントがあるのが「シャツ」だ。男女ともに体にピタリと張り付くように着るのが基本だが、男性はシャツにネクタイを締めるが女性は締めない。
そのため、鎖骨の部分がちらりと見える程度にボタンを外すと首回りがキレイに映えるという。
このとき、襟元にできたドレープ(自然にできた布のたるみ)がニュアンスをつくる。やわらかい印象を与えたいか、凛とした印象を与えたいかで素材の違うシャツを着るといいだろう。

本書ではこの他にもパンツやベルト、靴、財布、さらにはジーンズやカジュアルアウターなどに至るまで詳細にチェックポイントが解説されている。

服のリフォームの利点は、愛着があったり素材が気に入っていたりする手持ちのスーツを、サイズ感を調整することでそのまま着続けられるということ。しかも、それぞれの箇所を数千円程度からリフォームできるようだ。

「左右で袖丈のバランスが悪い」「着丈はピッタリだけど、肩周りのサイズが合わない」といった場合は、思い切ってリフォームすることでジャストフィットした好印象のスーツに生まれ変わらせることができるだろう。
(ライター/大村佑介)

INTERVIEW

既製品のスーツがオーダーメイドに変わる!
確実に印象度が上がる「服のリフォーム術」とは?

著者画像

仕事で成果を上げる人の多くは、身嗜みに気を使う。ブランド物のスーツや靴を身につけているわけではなくても、見た目がすっきりした印象であり、それが信頼感や好感度につながっているのだ。

好印象を与えるスーツの秘密とは何なのか。それは「サイズ感」にあるという。
サイズ感の合っていないスーツは、首元に隙間ができたり、袖や身丈が長すぎたり短すぎたり、シワが寄ったりと、全体的にだらしなさを醸し出す。

身体にジャストフィットしたスーツは、オーダーメイドでしか買えないと思われがちだ。しかし、手持ちのスーツを賢く活用して好印象のスーツを生み出すことができるのが「服のリフォーム」という選択。
そんな「服のリフォーム」の効能と魅力について、株式会社心斎橋リフォームのチーフフィッター兼東京・丸の内店店長であり『Dr.久美子流 服のリフォーム術』(万来舎刊)を上梓した内本久美子氏にお話を伺った。
(取材・文:大村佑介)

―― 書籍では 「リフォームはマジックのようなもの」という言葉が非常に印象的でした。リフォームのどういうところが「マジック」なのでしょうか

内本:マジックには2つあります。
私がやっている仕事は、洋服のリフォームと、ある服を別のものにリメイクするというものがあります。今回書籍で紹介しているマジックは、リフォーム、特に「サイズ感」のマジックです。

服は、スーツでもカジュアルスタイルでも1㎝、2㎝違うだけで3倍ステキに見えるんです。
例えば、160㎝の人と180㎝の人が、肩幅が同じだからといって同じ服を着たときの見え方は違うわけですよね。小柄だからこうすると良く見える、というお直しをすると、これはもうマジックです。

「背が低いから似合うわけはない」と最初からあきらめていたお客様がいらっしゃいました。ひょんなことからお客様になって頂いてリフォームをしたのですが、それからどんどん自信を持たれて、見え方も変わっていったんです。
小柄な方でも、バランスいい人、格好良い人はたくさんいるわけですよね。リフォームをすることでそこに向かって進んでいける。リフォームと言うと、単なる袖丈詰めやパンツの裾上げを連想される方もいるかもしれませんが、そういう次元ではなくてメンタルも変わるマジックなんです。

―― 書籍の中で、印象に大きく影響するのが「サイズ感」だというお話がありましたね。

内本:同じ人が似たような服を着ても、見え方や印象が全然違って見えることありますよね? それは「サイズ感」が違うからなんです。
私は「スタイルいいですね」と言われることがあるのですが、実は、スタイルがいいわけではなくて、スタイルが良く見えるようなサイズ感の服を着ているからそう見えるんです。そのサイズ感のテクニックを覚えていくと、男性も格好良く見えるようになります。だから知らないと絶対に損なんですよ。

本当に1㎝、2㎝絞るだけで3倍格好よく見えます。この写真を見てもらえれば、それがわかりやすいと思います。

スーツの男性。サイズ感比較画像

内本:これはヘアースタイルを変えているからそう見えるんだ、というご指摘もあるかもしれませんが、サイズ感が変わると、姿勢も顔つきも変わってきます。それが意識というものなんです。

―― 実際、この写真は顔を隠してしまうと同じ人とは思えないですよね。

内本:そうですよね。でも、正真正銘、同じ人で、サイズのお直しをした以外はまったく同じ服です。ジャストフィットした服だと、筋肉も伸びて背筋もピンとして、自信が溢れてくる。だから、お店に来られるお客様は皆さん格好良いですよ。それはもう心や意識からくるものですよね。

ダウンジャケット写真

内本:スーツに限らず、カジュアルでもそれは同じです。例えば、上のダウンジャケットでも着られないわけではないんですけれど、やはりリフォームした後のものと比べると違いますよね。

―― なるほど。比較して見ると本当に「サイズ感」のマジックだということがわかりますね。

内本:新しいものを買おうと思っても、それなりにお値段がしますよね。そういう時に、賢く、無駄なお金をかけることなく、持っている服を活用できるのがリフォームの良さなんです。買うよりは絶対に安いですし、新しいサイズ感で新鮮な気持ちにもなりますよね。

もう一つ知って頂きたいのが、リフォームのメリットは「既製品をオーダーメイドにできる」という点です。既製品の洋服は全部同じサイズですが、リフォームすることで自分だけに合ったサイズ感になります。

リフォームは一ヶ所数千円でできるので、スーツを上下で直ししても2万円ほど。
昔、10万円で買ったのにクローゼットで寝ているスーツも、今のご自分の体型にフィットするサイズ感に直せば、着られるようになるわけですね。

―― 先ほど、サイズ感を変えることで姿勢や意識は変わるというお話がありましたが、実際にリフォームした服でメンタルに変化があらわれるお客様は多いのでしょうか?

内本:かなり多いです。
あるお客様は、ご来店された最初の時は太っておられて、「細く見えるようにリフォームしてほしい」とご注文されたんです。それでお直ししたのですが、何回かお直しをされていくうちに、お客様ご自身が自主的に体を鍛え始めて、どんどんスリムになられていったんです。最初は、「細く見える服」を求めていたのに、だんだんと「服が似合うようにスリムになりたい」という意識に変わっていったわけです。

実際、スリムな体型になるためにはそれなりの努力が必要で、その努力のためにはキッカケが必要ですよね。そのキッカケを生み出して、人生を変えることができるのがリフォームなんです。

―― 例えば、「細く見せたい」というリフォームをお願いしたら、どのくらいの期間でできるものなのでしょうか?

内本:一週間くらいでしょうか。
ただ、「細く見せたい」というときは、服を細く小さくするお直しをすることはあまりありません。というのも、実はちょっとゆるいものを着たほうが細く見えるんです。

女性でもタイトで張り付いた服を着る方が多いのですが、そうするとボディラインがくっきり出て、お腹が出ていたりするとそれがわかってしまうんですね。それならば、お腹に合わせた服を着たほうが全体的にはスリムに見えるわけでなんです。

逆に、鍛えた体を見せたい男性であれば、袖口を絞って張り付かせていくと、見せたい部分が見せられるわけです。そこで袖口をゆるくしてしまうと実際よりも華奢に見えてしまいます。こういった目の錯覚による見せ方もマジックと呼べるところですね。

まだこの「マジック」を知らない人は多くありません。リフォームは、まだまだマイナーです。でも、それを知らないことは本当にもったいないことで、知らないことで損をしている方も多いと思うので、ぜひ「リフォームはマジック」だということを知ってほしいですね。

就活生から経営者まで使える!
好印象を与える「服のリフォーム」のポイントとは?

著者画像

―― 実際にスーツのリフォームをされる方にはどんな特徴や共通点がありますか?

内本:いくつかのご希望のパターンがあります。
太ったり痩せたりご自身の体型の変化によってお直しを希望されているケース、今でも十分素敵だけれど、より完成度を求めてお直しされるケース。あとは、物を大事にされる方ですね。初めて海外で買った洋服や、思い出が詰まっていて捨てるに捨てられない服とか、そういうものをお持ちの方です。

あるお客様は、成人式のときに買ったスーツを持ってこられたんです。その方は、定年が近いようなご年齢だったのですけれど、お持ちになったスーツには「ここから自分の人生が始まった」という思いがあって、手放せなかったそうなんです。
体型も変わってしまったし、どうしようということで相談に来られたんですが、リフォームは小さくするばかりではなく大きくもできるので、お直しをさせて頂きました。そのスーツはすっかり蘇って、お客様にも非常に喜んで頂けましたね。

他にも、お父様が着ていたスーツのお直しをしたいと希望されるお客様ですとか、人それぞれ思い出を持っていらっしゃいます。

ただ、やはり一番多いのは、格好よくなりたいというお客様です。
経営者の方や役職のある方が「今度の会議はこの装いで大丈夫か」とか「今度こういうパーティがあるのだけれど、この服は遅れていないか」といったことを気にされます。時代性みたいなものは若い頃には敏感でも、ある程度のところに行くとわからなくなってしまうので、そこを求められる方は多いですね。

―― 書籍にもスーツの「時流」についてのお話がありましたね。

内本:はい。男性も女性も、自分が一番多感だったころの感性を引っ張るんですよね。それはそれとして持っておいて良いところですけれど、やっぱり時流に合わないものを着ていると、街で浮いてしまいますよね。「クラシック」という言い方もありますけれど、それを着こなすというのはまた違う世界なんですよ。

といってもトレンドを追いかけることが良いのではなくて、私は「自分」と「今の時代」の間の旬みたいなものを作らないと素敵にはなれないと思っています。これはいくつの世代になっても同じです。

服はアップデートしていかないといけないものなんです。だから、お直しで「今の自分」に合ったもので、「時流」を取り入れたリフォームをすることは大切なんですよ。
わかりやすいところでは、例えば80年代の女性の服は肩のパットが厚くて丸みがありましたが、今はナチュラルです。これが時流なんですよ。

それがわからずに80年代のままの服を着ていると、それはただ古いものを着ているだけになってしまいます。よく「流行が戻ってくる」と言いますけれど、100%の戻り方をすることはないので、そこに「今」を足していかないと今の服にはならないわけなんです。

―― 街でスーツ姿の男性、女性を見て一番多い「ここを直したらもっと素敵な着こなしになるのに」と思うポイントはどこですか?

内本:バランスが悪い装いというのがあるんですよ。例えば、スーツで「袖は長め」なのに「パンツの裾を上げている」とかですね。

パンツの丈を短くするのであれば、ジャケットの裾も上げてコンパクトにする。逆に、長めにしたジャケットの袖に合わせるのであれば、袖のラインをゆるめたラインで、パンツも少しクッションを入れていくというのが上品な着方なんです。そのルールを知らずにアンバランスになっている方は多いですね。

「その着こなしはおかしいですよ」と言ってくれる人はなかなかいないので、なんとなく着てしまっている人は多いと思います。でも、それはとてももったいないことだと思うんですね。それをちょっと改善するだけで格好良くなるんですから。

ちょっと丈を詰めるだけで身長が2㎝高く見えることもあります。自分の体型ってなかなか変えられるものではないですよね。急に身長は伸びませんし、ダイエットしても急にサイズは変わりません。そこをどう素敵に見せられるのか。それが洋服の力だと思います。

―― バランスの悪さで言うと、就活生のスーツになんとなく違和感を覚えることがあるのですが、就活生の着こなしでアドバイスはありますか?

内本:就活生の方がご来店されることもありますが、面接にあたっては、トレンドとは別に真面目に見えるような「行き過ぎないサイズ感」というのがあるので、それをアドバイスさせて頂くこともあります。

お仕事によってはスタイリッシュに見えたほうがいい職種もありますし、堅めなお仕事であれば品格が漂うクラシックなサイズ感がいいということもあります。それがその方にとっての「時流」なんですね。
就活生の方なら、真面目で誠実に見える装いがいいと思うので、過度にオシャレなスーツやスタイリッシュなサイズ感ではないほうが、むしろ好印象につながると思います。

就活生の方だとスーツを着慣れていないという感じが出てしまうことがありますが、それもサイズ感の問題です。そもそも日頃からスーツを着ているわけではないので、ゆるいのかキツいのかわからないんです。身体にフィットしたサイズ感のスーツならばそれほど違和感は出ないと思います。

―― 内本さんが心斎橋リフォームで服のお直しをするうえで、心がけていることを教えて下さい。

内本:今の時流とは何なのか。お客様が望んでいるものが何なのか。そこに力を入れていますね。
常にファッションの講習会や分析のミーティングを行なっていますし、その感性と職人の技術と融合することで初めて良いものができるし、お客様に新しい情報も提供できるという考え方を持っています。

服の世界においてセンスのないものはダメだと思うんです。お客様に素敵になって頂くことができないですから。ただ単に服をタイトにするのではなくて、どの分をどのくらいタイトにしたら素敵になるのか。そういうセンスがなければいけないと思っています。

―― 最後に、スーツの着こなしで悩んでいる方々やスマートな身嗜みを目指す方々にメッセージをお願いします。

内本:サイズ感で損をしていませんか? 1㎝、2㎝であなたは3倍ステキに見えるようになります。スーツでもカジュアルでもサイズ感を整えることで見えたい見せ方をつくることができます。

合っていないものを着ていてもおかしいわけではないのですけれど、より素敵になるには「サイズ感」はとても大切なので、是非一度、服のリフォームを試してみてほしいです。

INFORMATION

目次情報

  • はじめに
  • 第1章 洋服のお直しをゼロからはじめて
  • 第2章 リフォームがもたらす絶対効果について
  • 第3章 あなたの印象をよりよくするためのリフォーム実践編
  • おわりに

著者プロフィール

内本 久美子

服飾専門学校卒業後、大手百貨店の販売を経て、個人でお直し工房をはじめる。
1992年心斎橋リフォーム設立、取締役副社長に就任。現在同社チーフフィッター兼東京・丸の内店店長。心斎橋リフォームの礎を築き上げた同社の顔であり、業界のパイオニア的存在である。同社HPで「Dr.久美子のリフォームクリニック」を連載中。