根性なしがWEBデザイナーに憧れて
著者:久保 なつ美
出版:幻冬舎
価格:1,760円(税込)
著者:久保 なつ美
出版:幻冬舎
価格:1,760円(税込)
自分なりの特技や才能をよりどころに自信を持って生きていけたら、人生はきっと楽しく充実したものになる。ただ、それが見つからないと、人の目を気にしたり、自分の意見を堂々と発信できなかったり、将来に希望が持てなかったりと、窮屈な毎日を送ることになりがちだ。
そんな人はキラキラ輝いている人、自分で決めた道を歩んで活躍している人を見ると眩しくて目を背けてしまいたくなるかもしれないが、彼ら彼女たちもはじめから輝いていたわけではない。少なくとも『根性なしがWEBデザイナーに憧れて』(幻冬舎刊)の著者で日本デザインスクール校長として活躍している久保なつ美さんは、いわゆる「落ちこぼれ」だったという。
本書で明かされる彼女が「WEBデザイン」という天職に出会い、プロのデザイナーとして活躍しながら、後進の育成に携わるようになるまでのストーリーは「人はきっかけ次第で大きく変わる」というひとつのメッセージである。
学生の時から勉強するのが苦手。人見知りで責任やプレッシャーに弱く、苦手なことを克服する努力もできればあまりしたくない。
私にとって、働く=我慢すること。
「ドラマで憧れたセレブには一度なってみたかったけど、今世では可能性なさげだな、来世に賭けるとするか」と20代にして早くも諦めている。そんな“まったく夢のない若者”。(本書より)
大坪さんとの仕事は、これまで久保さんが在籍した会社での仕事とはまったく異なっていた。彼は久保さんがこれまで見てきたどのデザイナーよりも優秀で、「利益が薄いぶん案件数で稼ぐ」というビジネスモデルしか知らなかった久保さんが衝撃を受けるような高単価の案件を次々と受注していた。ただ、その分求められる仕事の水準は高く、久保さんのデザインは徹底的にダメ出しをされ、原形がなくなるほど容赦なく作り変えられた。
あまりに上達しない久保さんに大坪さんは「目ん玉を取っ替えたら?」「自分で考えるのはやめて」と、奇妙なアドバイスを送った。はじめのうちはその言葉の意味がわからなかった久保さんだったが、「目ん玉を取っ替えたら?」は「良いものをたくさん見て悪いものとの違いをわかるようになりなさい」という意味で、「自分で考えるのはやめて」は「はじめから自分のセンスでデザインするのではなく、参考になる素材を探しなさい」という意味だとのちに気づき、的確なアドバイスだったと腑に落ちたという。
大坪さんとの仕事を通じて、久保さんはデザイナーとして飛躍的に力を伸ばした。デザインに自信がついてきたことで仕事に主体性が生まれ、事業への当事者意識が生まれた。現在久保さんが校長を務めている日本デザインスクールも、久保さん自身が発案し、創設したものである。
あなたが今自分に自信が持てないとしたら、それは「才能がない」わけでも「根性がない」わけでもないかもしれない。まだ好きなことや、やりたいことが見つかっていないだけかもしれない。(P9より)
■「落ちこぼれ」だった私が出会った天職
久保: この本を書くとき、最初は「好きなことを仕事にして生きよう」というようなタイトルを考えていました。ただ、私自身特別な才能も根気もなくて、全然ダメな人生を送っていたのが、Webデザインの仕事と出会って、それを諦めずに続けてきた結果、今につながっています。
だから、「好きなことで生きよう」という抽象的な内容よりは、私がこの仕事と出会って、どうにか食らいつくことで成長できた経緯をそのままお伝えする方が読者の方に伝わるものがあるんじゃないかと思ったんです。「こうした方がいいよ」というアドバイスというより、ストーリーから何かを感じ取ってもらえればいいと思っています。
久保: ありがとうございます。私としては、今運営しているデザインスクールの生徒の方々を念頭に書きました。
というのも、クリエイターを目指しているんだけど、なれるかどうか不安だったり、自分が作るもので失敗するのが怖かったり、といった人は少なくありません。そういう人が勇気を持てる内容にしたいと思っていました。
クリエイティブな仕事って正解がないですから、「自分にできるのか」っていう不安はつきものですし、私も不安でした。それでも続けてみたらどうにかなりましたし、続けることでクリエイティブな仕事ならではの喜びも味わうことができました。そういう喜びだとか、クリエイティブな仕事を通して自分が成長できること、自信を持てることも伝えたいです。
久保: やっぱり作るのが好きなんですよね。ただ、それが仕事になった時に、「納期」だったり、作ったものの「クオリティ」といった点でプレッシャーを感じたりもしますから、少しの間離れていた時期もあったのですが、やっぱり作ることが楽しくて戻ってきてしまう。クリエイティブの仕事には、他の仕事では埋めがたい楽しさがあるのだと思っています。
久保: フリーターだった時期があるのですが、初めてやったアルバイトが配膳の仕事だったんです。単に時給がいいという理由で始めたのですが、立ち仕事で足が痛くなるんです。だから、今度は座れる仕事、できれば座って飲み物を飲んだりお菓子を食べたりできる職場がいいなと思っていました。
それで求人を見ていたら、クリエイティブに関わる仕事って服装も自由だし、オフィスも居心地がよさそうで、こういうところなら働けるかな、ということでWebデザインをやっている会社に応募しました。だから「目指していた」という感じじゃないんですよね。「働きたくない」というところから始まって、「これならできるかも」ということで行き着いたので。
■お金なし、スキルなし、やる気なしのデザイナー志望者を変えた出会い
久保: デザインについて初めてきちんと教えてくれたのが大坪でしたね。その前にいたデザイン会社にも優秀なクリエイターはいたのですが、天才肌すぎるといいますか、自分にはマネができないと思っていました。
この仕事にもセンスのあるなしはあると思うのですが、大坪はそのセンスを論理的に身に着けたタイプなので、「自分ができたんだから、君もできる」という前提で教えてくれたのが大きかったのかもしれません。
久保: ムッとしたことはなかったのですが、何を言っているのか理解できないというのはありました。だって目玉なんて換えられないじゃないですか。それを言ったら「じゃあ来世に期待だね」と言われたこともありましたね。
久保: そうです。意味がわかるまでしばらく時間がかかりましたね。「自分の頭で考えるな」というのも、2年くらい言い続けられていて、「何言ってるんだろう?」とずっと思っていたんですけど、大坪がデザインはこうやって作るんだよというのを、パソコンを広げて実演で私に見せてくれたことがあって、その時にその言葉の意図するところがわかりました。
久保: そうです。それまでは「反抗」じゃないですけど、あまり大坪の言うことを信じてなくて、アドバイスを真剣に受けとめていなかったところがあったんですけど、そこで変わりましたね。それまでは教えても教えても私がダサいものを作るので、大坪は私のことを本当にセンスがないんだなと思っていたみたいです(笑)。
久保: そうですね。参考を上手に取り入れるといったことも、まさに教えています。そのまま同じものを作っても、それは「丸パクり」でしかないので。
久保: 「できる人から学ぶ」というのが一番大きかったように思います。独学だと変なものを作ってもそれが変なことに気づかないので。私の場合は大坪に学んでいましたが、作ったものをたくさん見てもらっていました。
あとは、おいしい料理を食べたら「これは何が使われていて、どんな味つけをしたんだろう」と考えるようになりましたし、「このデザインいいな」と思ったら、それがどんなふうに作られたのかを分析したりもしていました。世の中にあるものは全部誰かがデザインしたものだと考えると、もう見るものが全部勉強ですよね。
久保: デザインを制作している時はそんなにきついことはなかったのですが、デザインスクールの方の売上が落ち込んだ時期はしんどかったですね。
ある程度スクールが大きくなってきて、生徒さんが増えてきたところで他のスクールさんが出てきたりして、売上が落ちた時期があったんですけど、その時は自分の役割がわからなくなって自信を失っていました。
久保: その少し後に会社が倒産の危機だということがわかったんです。「くよくよしている場合じゃない。会社がなくなってしまう!」ということでお尻に火がついて、どうにかしないと、ということでまたエンジンがかかりました。
久保: クリエイティブの世界で生きていると、うまく作れなかったり、自分が作ったものが否定されたりすると自分自身が否定されている気になって心が折れそうになってしまうことがあります。そんな時、私がどうしているのかを書けば、苦しくても「辞める」という選択肢をとらずに乗り越えられるんじゃないかと思って書きました。
本当にやりたい仕事、好きな仕事だからこその苦しさってあると思うんですよ。やりたい仕事だからこそうまくいかないと絶望してしまう。そんな時の心の拠り所になってくれたらいいなと思っています。
久保: 読んでいただくとわかると思いますが、学生時代から社会人生活のはじめの頃にかけて、私の人生は逃げてばかりのどうしようもないものでした。根性もないし、お金もないし、スキルもやる気もない。自分の人生がどうにもならないという絶望しかなかったのですが、そんななかであきらめられなかったのが「自分の人生を楽しくしたい」「仕事の時間を楽しくしたい」ということです。そこをあきらめなかったからこそ、Webデザインという天職に出会えたと思っていますし、この仕事を通していろいろな世界を見られたり、臆病だった自分に主体性が芽生えたりと、成長していくことができました。
この本を読んで「久保でもできたんだから、私にもできるんじゃないか」と感じていただけたらうれしいですし、あきらめなければ「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と切り分けるのではなく、生活が丸ごと楽しいっていう状態が作れるんだよということを感じていただけたらと思います。
うちのスクールを受講している人が、「お守り」にしてくれるような本にしたいという気持ちで書いたのですが、クリエイティブな仕事を目指している人、やりたいことが見つからないという人にも読んでいただけたらうれしいですね。
久保 なつ美
株式会社日本デザイン WEBディレクター・WEBデザイナー・動画クリエイター
20歳、WEBデザイン業界を目指すが、未経験のため一次選考で15社に落ち、プチうつに。
22歳、雑誌の編集部になんとか受かるが、過酷さに耐えられず早々に辞める。
24歳、WEB業界に転身。念願のWEBデザインの仕事に就くが、センスがないと怒られる。
26歳、大坪拓摩(現日本デザイン代表取締役)と出会い、根性を認められアシスタントで雇ってもらう。
それから4年間、理念やルールに基づいたセールスデザインを一から叩き込まれ、デザイン力が奇跡的に向上! 紹介のみで仕事が埋まる売れっ子デザイナーとなり、動画制作・YouTubeプロデュースなどクリエイティブな仕事を幅広く請け負う。
2015年9月、自身のこれまでの経験(もともとのセンスのなさも!)を活かして「現役デザイナーが教える」「センスはいらない」というコンセプトで日本デザインスクールを設立。現役としても活動を続けながら、全国2500人以上の受講生を45日という超短期間でプロのWEBデザイナーに育てる。座右の銘はウォルト・ディズニーの「夢は必ず叶う!」。
著者:久保 なつ美
出版:幻冬舎
価格:1,760円(税込)