だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1886回 「夜行」

学生時代に通っていた英会話スクールの仲間たちと「鞍馬の火祭り」を見物しようという話がまとまり、十年ぶりに京都へ向かう大橋。
久しぶりに会った仲間たちは変わっておらず懐かしい気分になるが、みんなそれぞれ、十年前に姿を消してしまったスクール仲間・長谷川の影を引きずっていた。そんな時、大橋は奇妙な画廊へ訪れる。
「岸田道生個展」というプレートとともに飾られる銅版画「夜行」。
永遠に続く夜のように見えるその作品は、仲間たちを巻き込み、不思議な世界へと誘っていく。
森見登美彦一年半ぶりの新刊、十年目の集大成!!
(提供・小学館)

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とある銅版画にまつわる不思議な物語

こんにちは、ブックナビゲーターの木村希美です。

さて、今回ご紹介する森見さんの小説。

……実に不思議なお話です。

まぁ、これだけ言ってしまうと「はて、どう不思議なの?」 と思いますよね。

それでは、物語の内容を見ていきましょう。

学生時代に通っていた英会話スクールの仲間たちと久しぶりに会うことになった大橋は、十年前に行方不明となったスクール仲間の女性・長谷川の影を追って、奇妙な画廊へ訪れました。

飾られていたのは、「岸田道生」という銅版画家が残した四十八の連作からなる作品「夜行」。

黒の背景に白い濃淡で描き出された風景画で、いずれの作品にも一人の女性が描かれていました。

それぞれの作品タイトルは、『尾道』『伊勢』『野辺山』『奈良』『会津』『奥飛弾』『松本』『長崎』『青森』『天竜川』などなど。

大橋は仲間と合流し、画廊の話をしたところ、それぞれが「岸田道生」という銅版画家に心当たりがあるようでした。

いったい「夜行」という作品は何なのか。

十年前に消えた長谷川との関係は……?

といったところで、今回も物語の一部をドラマにしましたので、どうぞ本編をお聴きください。

◆著者プロフィール
森見さんは、1979年奈良県生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。2003年「太陽の塔」で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』で第20回山本周五郎賞を受賞。 2010年『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞を受賞。 『四畳半神話大系』『有頂天家族』はTVアニメ化もされ大ヒットとなりました。

夜行

夜行

僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。

私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。
十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」