新刊JP

実践 超高収益商品開発ガイド

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事例紹介 事例「顧客の真の困りごとは違った」

 「涼風」という商品がある。これは、株式会社ニッポーという会社の商品で、農業の施設園芸、キノコ栽培などで使用される熱交換器である。熱交換器とは、室内の空気と屋外の空気を入れ替える際、室内の空調された熱を熱交換機で一時保存させ、屋外の空気をそこに通すことで、熱を伝え、温度を調整して換気するという機械である。要は、単なる換気扇ではなく、熱を保存し入れ替えてくれる性能の良い換気扇と思っていただければいい。

 この熱交換器、世の中ではすでに発売されていた。農業用では、複数のメーカーが商品を発売していたのだが、実は、使用している顧客で大きな問題を抱えていた。特に、キノコを栽培する農家では、二酸化炭素濃度が重要な管理項目であったため、換気は日常的な業務であり、空調代を節約するために、熱交換器を多用していた。ところが、キノコ栽培では、キノコが発する胞子が換気する際に熱交換器にくっついてしまい、熱交換器の性能低下を招いていた。既存メーカーの商品は、それを清掃する機能がすでに付いていたが、不十分であり、ここにビジネスチャンスが待っていた。

 具体的には、熱交換器を高所に設置している人が多く、清掃するために梯子をかけて非常に危険な状態で清掃していたのである。要は、困りごとは、「熱交換器を清掃すること」ではなく、「簡単に清掃すること」だったのである。そこで、この会社では、高所に取り付けるのではなく、薄型にして低所においてもスペースを取らない設計にして、高圧洗浄機などでも清掃を簡単にできるように仕立て、ヒットさせたのである。

 ここでのポイントは、顧客に入り込んで実際の清掃作業を観察したことである。顧客ニーズというものは、顧客の行動から見えるケースが少なくない。実際、清掃作業をみているだけでも、梯子に上って危なっかしい状態で清掃しているのをみると、そこに真のニーズがあることは発見できるのである。競合だけを見るのではなく、顧客をしっかりとみるアクションを実践できたからこそ、独自性の高い高付加価値商品を生み出せたのである。