心に浮かんだ感情を、すべて表に出すことはなかなか難しいことだ。
私たちは日々、笑いたいが、笑ってはいけない時、激しい怒りを押しころさねばならない場面に遭遇している。だからこそ一人きりの時間は感情を開放したいと思うし、そのための映画や本に引き付けられる。
本書は教育学者で『声に出して読みたい日本語』などの著者として知られる斎藤孝氏が、夏目漱石から村上春樹まで、よりすぐった文芸書の一節を紹介し、生きるうえで大切にしてほしい感覚について記した一冊となっている。
収載されている作品はいずれも、歴史に名を残す文豪や大作家のものだ。
才能ある作家は、意図的に読み手の心を動かす技術を持つが、同時に、技術だけでは人を泣かせることはできないことも知っている。
本書に収められている「涙が流れる一行」の数々は、技巧をこえて吹きこぼれた純粋な感情ばかりだ。そういう文章だけが本当の意味で人を泣かせることができるのではないか。
さまざまなシーンで描かれた感情の数々がいくつあなたの心に届くだろう。あらかじめハンカチを用意してから、じっくりと堪能してほしい。