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ヒット商品は時代が作る。「ヒットの原理」の方程式 トレンド×ニーズ=売れまくり!

インタビュー

― 『ヒットの原理』という書籍名から、ヒット商品を生み出すための方法を提示してくれるというイメージを持って本を開きましたが、実際に読んでみるとマーケティングに限らず幅広い職種の人が行っている「プラン」の立案について重点的に書かれていました。

高杉:本書は、ヒット商品を生み出すだけ手法だけではなく、どういった販売戦略を立てるのか、も含めた「プラン全体」に注目した本です。「新商品・新規事業の企画立案」のみならず、「既存商品・サービスの販売企画」においても、「世の中の動き(トレンド)、顧客の要望(ニーズ)を捉えているのか」という基本的な部分は重要です。
ヒット商品や成功するプランは、こういった「トレンド」「ニーズ」をうまく捉えています。換言すれば、これらは「優れたプランの要件」とも言えます。しかしながら、昨今の「プランづくり」を見てみますと、「プロダクトアウト(作り手・売り手側)の視点」「深みのない視点」が顕著に見られます。

それは例えば、「クラウドや農業などブームに踊らされているビジネス」「作り手視点の新商品・サービス」「あまり考えられていない店舗立地」「中身だけではなく件数だけを目標にした営業活動」「当たればラッキーのベンチャーキャピタルの投資」「国内市場がダメなのですぐに海外市場へ逃げてしまう事業戦略」といったことが挙げられます。
クラウドビジネス、農業ビジネスなどは、一つの大きな流れです。ただ、流行っているからといって「クラウド」×「農業」というように、単純な形でプランを立てても、肝心の顧客ニーズを押さえていないので、失敗してしまいます。

店舗立地においても、中身を考えないスピード重視の立地が見られます。自社の商品・サービスの特長、世の中のトレンド、ニーズを考えれば、もっと上手な立地もできるのに、とたびたび感じます。
営業戦略などの「プラン」を見ても、「ターゲット顧客」と「訪問件数」「売上目標」だけを並べた「中身のないプラン」が少なくありません。
ベンチャーキャピタルなどの投資においても、「数打てば当たる」というように、一つ一つを吟味するのではなく、投資したうちのいくつかが当たればいい、というような思考に変わってきています。昔はしっかりと吟味していたのですが、それがうまくいかないため、「吟味よりも確率」という考え方に変わってきたのでしょう。ただ、実際は、「味の中身が浅かった」という原因が非常に大きいのでは、と考えています。

― そういった問題を感じていたところからこの本を執筆につながっていったわけですね。

高杉:そうです。ほかにもあります。国内市場がダメだからといってすぐに海外市場に展開するプランも、思考の薄いプランです。もちろん、発展途上国といわれた国の所得レベルが上がってくるにつれて、ビジネスのターゲットがワールドワイドになってきているのも事実です。これ自体は、立派なトレンドなのですが、「猫も杓子も海外展開」というような風潮自体は、ブームに踊らされているといっても過言ではありません。 実際、海外ビジネスはそんなに簡単ではありません。どこかの大手企業の下請けで海外展開する話と、自社商品・サービスを独自のマーケティングで展開する話では、天と地ほどの差がありますが、こういった違いも認識しないまま「海外展開」がブームとなっているのです。実際のところ、上場大企業から中小零細企業まで、かなりの企業でこういった現象に陥っています。

こういった現象を見て、いつも感じていたことが「世の中のトレンド」「顧客のニーズ」といった肝心の部分が欠如していることなのです。つまり「思考の浅いプラン」が蔓延しているのです。コンサルタントとして指導するたびに、この部分に懸念をいだいていました。また、実際、企業の担当の方へアドバイスする内容も、こういった内容ばかりだったのです。そこで、大企業から中小企業までアドバイスをしている内容自体を、本にすればいいのでは、と感じ、出版することにしたのです。

― この本では最初の章でヒット商品の事例を紹介しています。
ヒットしない商品とヒットする商品、そして大ヒットする商品、この3つの決定的な違いはどこにあるのでしょうか。

高杉:これは商品だけに限らないことですが、新規事業なども含めたビジネス全体において「後押しをしてくれるトレンド」と「細かな顧客の要望」をしっかりと捉えることが重要です。
前者は、世の中の動きを見ればよく分かります。例えば、最近は「時短商品」が増えてきていますが、「時短」便利さを「体感」した人が増えてくることで、より多くの人が、別の商品・サービスに「時短要素」を求めるようになります。このように、ある商品・サービスがきっかけとなり、世の中全体がそういった傾向を生み出していくことが「トレンド」なのです。
気をつけていただきたいのは、トレンドとブームは違うということです。トレンドは、背景に社会環境の変化を伴っています。例えば、小容量(小パック)の商品が売れるのは(小容量トレンド)は、高齢者・単身世帯の増加などといった社会環境の変化があるからこそ、長続きするトレンドとなるのです。一方、ブームは一瞬で盛り上がり、一瞬で落ちていきます。社会環境の変化を背景にしていないため、話題性だけがバックボーンになってしまうビジネスなのです。
後者の「細かな顧客の要望」は、まさに「顧客ニーズ」です。「もっと分量を少なくしてほしい」というような顧客から直接出てくるニーズのことです。トレンドが変われば、ニーズも変わってきます。従いまして、この両方を押さえることが、ヒットを生み出す源泉となるのです。
世の中で大ヒットしている商品、ヒットしている商品、ヒットしない商品を見てみると、さまざまな要因はありますが、こういった「トレンド」「ニーズ」を押さえた自力のある商品・サービスがヒット商品に見られる特長です。

つまり、

  • ヒットしない商品→「トレンド」「ニーズ」と合致していない(自力がない)
  • ヒットする商品→「トレンド」「ニーズ」と合致している(自力がある)
  • 大ヒットする商品→「トレンド」「ニーズ」と合致していてプロモーションが大成功(自力があってプロモーションが強い)

ということになるのではないでしょうか。

― 本書の前半のキーワードは「ニーズ」と「トレンド」です。この2つを捉えることは非常に重要だと思いますし、日々そういったものに対する感度を上げていく必要がありますが、そのために毎日どのようなことを意識して過ごせばいいのでしょうか。

高杉:日々のアクションにおいて「深く捉えること」が重要です。「深く捉えること」とは、その名の通り、物事を論理的に深く捉えていくことです。例えば、「○○が大ヒットしている」という記事を見た場合、
「どれぐらい売れているのか」「どこで売れうれているのか」
と考える人は多いでしょう。
しかしながら、「トレンド」「ニーズ」を捉えていくためには、「なぜ売れているのか(タテ視点)」「他に同じような理由で何が売れているのか(ヨコ視点)」
といった見方(視点)が必要です。
前者の視点からプランを立てると、「○○という商品」という同じカテゴリーの商品を考えてしまうでしょう。一方、後者の視点では、「売れている理由」を構造化するため、ビジネスモデルを捉える訓練になります。ビジネスにはカタチ(ビジネスモデル)があります。いろんな成功しているビジネスを見ると、その根源は同じようなビジネスモデルとなっているケースは少なくありません。そこで、後者の捉え方をして、「ビジネスモデル」を捉えるような訓練をするのです。これを日常的に続けることで、「自身の中にビジネスの引き出し」が増えていくのです。

― 前回のインタビュー(『超高収益商品開発ガイド』)の際に、ご自身でプロデュースした商品でヒットを飛ばしたものとして『岩盤浴おやすみマスク』をあげていらっしゃいましたが、これはどのようなニーズ、トレンドをつかんだのでしょうか。

高杉:まず、大きなトレンドとしては、「花粉症トレンド」が挙げられます。今や数千万人にまで花粉症患者が増えました。このトレンドがもとで、マスクだけではなく、花粉除去機能のついた空気清浄機、さまざまな花粉症グッズなどが売れていました。最近でも、このトレンドは続いており、布団掃除機レイコップなども大ヒットしています。やはり、「花粉症患者の増加」という社会環境の変化に基づいているため、このトレンドは、ブームではなく長続きしています。このトレンドをうまく掴んだわけです。 ニーズについては、花粉症の人が夜寝る際に、通常のマスクをつけて寝ればいいのですが、
その際、「通気性が悪く息苦しい」「長時間使用するので耳紐がいたい」「鼻がつまってしまう」
というようなニーズ(困りごと)がありました。これらを商品へしっかりと反映させました。岩盤浴の成分で装着時にポカポカさせ、就寝時の鼻づまりを軽減し、紙ではなく布製にしたことにより、通気性、耳紐の痛さを解消しました。つまり、トレンド、ニーズをしっかりと捉えた商品だったのです。これらにより、大ヒットすることができました。

― 今、ヒットしている商品の中で、「これは面白い」と思うものはなんですか?

高杉:最近、特に驚いたのが「サントリー・南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」です。ミネラルウオーター市場は、炭酸類へ展開し、オレンジ、レモンなどの味を付加するものまで登場し、もう他に展開するのは難しいのでは、と思っていました。
そこへ、ヨーグルトという味を入れてきましたのでビックリしました。一時、品切れ状態になったことで、品切れ感をブームにしたような印象がありましたが、商品自体はトレンドに合致し自力があります。
考えてみれば、白斑化粧品の問題、添加物等への警戒感から、自然派トレンドが発生し、麹を使った調味料、紫紺などの成分をいれた化粧品などがヒットしています。そういったトレンドがあったからこそ、この商品は大ヒットしたのではと考えています。

― 第4章では「ダメプランを変身させる」というテーマで、売り上げ向上プランの練り方を書かれていますが、ダメプランに共通する特徴はなんですか?

高杉:まずは、「思考の薄さ」です。考える時間がないのか、考えるスキルがないのかはわかりませんが、とにかく「ペラッとしたプラン」が多いですね。
例えば、新商品開発や新規事業を考える場合、市場規模は重要な要素なのですが、ほとんどの企業でそれを算定する場合に、調査会社の市場予測データを鵜呑みにしています。調査会社のデータは、あくまでも調査した人の予測です。しかも参入企業にインタビューしているわけですので、前提条件はインタビューされた人が正直にすべてを答えているということです。
ビジネスは競争ですので、調査会社のインタビューにすべて正直に答えているとは限りません。それなのに、その数値を使ってプランを立て、決裁する人もその数値をベースにしている。何か滑稽な感じです。
次に、やはり「トレンド」「ニーズ」が圧倒的に足りない点です。世の中のビジネスを深く観察しますと、ヒットしているビジネスはもれなく「トレンド」「ニーズ」を捉えています。最近は、こういった要素よりも、ポートフォリオ的な発想が重視されているような感じですね。例えば、競合比較とか、ポジショニングとか。金融ビジネスの発想が、それ以外にビジネスにも波及しているのではないでしょうか。

― ものすごく大々的にPRしても大コケする商品は星の数ほどあります。大コケしたことが分かったとき、その商品から手を引くべきか、まだPRを諦めないべきか、その線引きをどのタイミングですべきなのでしょうか。

高杉:売れない商品は、商品(サービス業の際はサービス)に自力がないか、プロモーションがまずいか、ターゲットが間違っているかのどれかです。商品・サービスが「トレンド」「ニーズ」をしっかりと捉えているのであれば、プロモーションをはじめとするPRにもっと力を入れれば売れる可能性は残っています。従いまして、一つの判断基準は、「トレンド」「ニーズ」との合致度合いということになります。
ただ、大コケする商品の大多数は、こういった要素を備えていません。それどころが、社会環境の変化を伴っていない「ブーム」に踊らされた商品が多いのも特徴です。ブームとトレンドは全く違います。ここを理解しないでブームだけを捉えた商品・サービスは失敗する確率が高いと考えます。

― 本書ではヒットするプランを作る上のマーケティングのノウハウが書かれていますが、その中でも最も大事なものはなんですか?

高杉:先ほどから述べていますように、「思考の深さ」ではないでしょうか。価格比較情報、レビュー情報、SNSでの口コミのように、商品・サービスの良し悪しを評価する方法が、表面的なものになってきました。要は、「勝ち馬に乗る思考」が増えてきているのです。よくよく中身を調べることもなく、みんなの評価がいいので、自分もそれに乗ってしまうというトレンドです。その結果として、売れるものはとことん売れて、売れないものは全く売れない、という2極化時代になってきました。
こういった時代の中では、どうしても「目先の表面的な思考」になりがちです。レモン味のミネラルウオーターが売れているなら「リンゴ味にしよう」といった発想です。これはこれで1つの手法なのですが、消費者の受け止め方が薄くなってきているからといって、企画立案が薄くていいという理屈は通りません。レモン味が売れているなら「なぜ売れているのか」をしっかりと深掘りし、その構造(ビジネスモデル)を解明し、新しい企画をするべきです。
このように、BtoCビジネス、BtoBビジネスともに、企画(プラン)がどんどん薄くなってきています。こういった「薄くてペラっとしたビジネストレンド」がある中で、「深くて自力のあるビジネス」を投入すること、そして、そういった思考で「考え続けること」は、大きな差異化を生み出すことになります。目先の商品・サービスは真似をされますが、それを作る思考や仕組みは簡単には真似されない、という考え方です。

― ヒット商品が生み出される前夜(またはその直前)には独特な雰囲気があると聞いたことがありますが、高杉さんもそのような経験はありますか? あるときはどのような感じでしたか?

高杉:実は私も不思議な体験があります。一般的にどういった表現をされるかはわかりませんが、私の中では「ころがる」という体験で、たびたび経験しています。
「ころがる」というのは、商品やプランを推進していく中で、いろんな物事を同時並行的に進めるのですが、その物事が「簡単に転がっていく」という感じです。
例えば、主取引先の開拓をどうしようか悩んでいて、そこがボトルネックになっている際に、「昔展示会等で見た」といって顧客から電話がかかってきたりして、一気にボトルネックが解消してしまうようなケースです。こういった現象が「ころがる」という感じです。ビジネスを推進していく際は、様々なハードルがあるのですが、それが、いとも簡単に解決してしまう。まさに「ころがる」というイメージです。
たぶん、この「ころがる度合い」は、仕掛けによるところなのだと思います。しっかりとした「仕掛け」をどこかの段階で仕込んでおいたことが、後になって帰ってくるようなイメージです。そういった意味では、「ころがす」こともマーケティングの活動の重要な部分なのかもしれません。

― この本をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

高杉:幅広いビジネスマンのみなさんに読んでいただければと思っています。一見、「マーケティング担当者向けのヒット商品バイブル」みたいに見えますが、中身は、ビジネスマン全体をターゲットにした「良いプランづくりのための本」です。ビジネスマンであれば、日常的にさまざまな「プラン」を立てています。

  • 営業マンであれば、営業会議で発表する販売計画
  • 経営企画であれば、中長期経営計画
  • マーケティング担当者であれば、新商品の企画立案やプロモーション計画
  • 人事担当者であれば採用計画
  • 経営者、経営層では、事業計画

このようにプランを立てることはビジネスマンにとって「日常茶飯事」です。
そういった中、「トレンド」「ニーズ」を少しだけでも取り入れるだけで、客観性の高い「グッドプラン」にすることができます。そして、それをもっと磨けば「エクセレントプラン」に変身させることができるのです。
出来の悪い「ダメプラン」は、何回も修正が入り、それがもとで、どんどん時間が無くなり、またプランの出来が悪くなるという悪循環に陥ってしまいます。それを避けるためにも、「良いプラン」をしっかりと立て、好循環に結び付けることが重要だと思っています。
 要は、「エクセレントプラン」を立てるためには、というテーマで書いていますので、ビジネスマン全体の方に是非見ていただければと思います。

― このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

高杉:この本は、「とにかく簡単に優しく読めるけど、中身はしっかりとした実用書」をイメージして書きました。コンセプトは「簡単だけどリアルな内容」です。 ビジネス書は、概念だけではわかりにくいので事例が大事なのですが、事例にリアリティがないと読んでいても面白くありません。そこで、本書では、私がコンサルタントをしているという特長を活かし「リアリティのある事例」を入れています。読んでいただければ、おそらく、その部分は感じていただけるのではないでしょうか。
本の構成についても、「読みやすく考えてもらうこと」を重視しました。最初はコンビニコーヒーやレイコップの事例などから入りますが、後ろの章に行けばいくほど、中身もどんどん深くなってきます。ほとんどの章で事例を多用し、その事例を皆さんにも考えてもらうという「考えてもらいながら読んでもらう」構成になっています。
あとは、私の「思考回路」を入れています。出版社の編集担当者の方から、「あなたの物事を捉える視点を見える化してほしい」という要望がありました。考えてみれば、私がコンサルタントとして成功しているのも、一つのヒット事例です。その成功の鍵の一つに、「物事の捉え方」があるのですが、それを見える化したわけです。新聞、WEBなどを見た際、何に注目しているのか、そして、それをどう分析しているのか。これを具体的に書きました。
とにかく、「簡単で読みやすいけど、リアリティのあるたくさん事例と考えながら読んでもらう実用書」ですので、是非、一度読んでいただきまして、みなさんのビジネスに生かしていただければと思っています。

一流ビジネスマンは誰でも知っているヒットの原理
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