
◆様々な活動を展開し、社会の課題と向き合う「社会起業家」とは
自ら動きコミュニティ(地域)に根ざしながら、時には地球をまたにかけて、混迷する社会の問題と対峙し、解決していく―。
本書『チェンジメーカー』は、そうした活動の旗手となっている人々の活動を取り上げた、「社会起業家」と呼ばれる人たちを知るための入門書である。
彼らのビジネスモデルは、独特だ。単純に「お金を儲ける」ではなく、何よりもまず社会に蔓延る課題の解決や文化の向上を最優先とする。
本書に掲載されている社会起業家は、中南米や新興市場国で広がる格差を是正するための起業促進や中小企業を支援するNPOを立ち上げた女性、ホームレスへの住宅・生活支援、スラムや難民キャンプなどに住む人々に対して人道的援助のための建築を提供する建築家、未成年の教育やジャーナリスト支援など、さまざまだ。
さらに、本書の中には日本人の名前をうかがうこともできる。ハウジング・ワークス アートセラピー部門主任の原田真樹子氏である。
◆「ハウジング・ワークス」のケースについて
原田氏が働いているハウジング・ワークスの活動はHIV/エイズ感染者のためのデイケアセンター運営。アメリカでHIV/エイズ感染者に住居を提供し、心理カウンセリングなどを行うという。
ハウジング・サービスは1991年、キング氏とカイラー氏の2人がホームレスのHIV/エイズ感染者という最下層にある人々に住まいとケアを提供するNPO(非営利組織)としてスタートした。
その後、ハウジング・サービスは行政から見放されていた弱者の権利を代弁する組織として成長。行政からの助成金などもあり、NPOとしては順風満帆に活動を展開していた。
転機は1997年。突如として、行政が当時の運営資金の半分にあたる650万ドルをカットした。
この助成金カットはハウジング・サービスを経営危機に陥れた。
NPOの多くが寄付や助成金を主収入としているため、その収入源が断ち切られると活動そのものが不可能になってしまう。
しかし、その危機を寄付提供者のシーラー氏の提案によって始めた高級ブランドを扱うスリフト・ショップ(慈善の目的で営業する中古衣料店)が評判を呼ぶと古本を扱うブックカフェなどの新規事業を展開し、経営を立て直すことができた。
現在、ハウジング・ワークスの年間予算は3300万ドルだが、そのうち30%が営利ビジネス(社会事業)の売り上げで、15%が助成金、50%が行政とのプロジェクトごとに交わす事業契約、5%が寄付となっている。
◆社会起業家は「夢を持った行動家」
彼らは本書内でこう話す。
「お上の機嫌をとりながら恵んでもらうという従来のNPO的経営では社会問題は解決されない、NPOをソーシャル・ベンチャーに転換するには公金に頼らずビジネスの収益で財源を確保することです」(p120より引用)
原田氏はそんなハウジング・サービスのデイケアセンターに就職し、アートセラピーという手法を用いて、患者の不安や精神的な障害を治療している。
様々な分野から注目を集める「社会起業家」。彼らのバックボーンも様々であるゆえ、突飛もないビジネスモデルを考え付く者もいる。
本書ではその一端を垣間見ることができる。
市民が市民たちの手で自分たちが生きる社会を変えていかないといけない。
本書で最初に紹介されている、社会起業家の育成・支援を行うアショカ財団のビル・ドレイトン氏は社会起業家をこう言う。
「ただの夢想家ではなくて夢を持った行動家なんですね」(p16より引用)
彼らがビジネスモデルを作り、販売戦略を立てるようにクリエイティブに発想し、大きな効果をもたらす方法を軌道に乗せれば―。まさに、鬼に金棒だろう。
(テキスト/金井元貴)