
◆『チェンジメーカー』から2年後の社会起業家たち
本書は『チェンジメーカー』の続編にあたる本だが、前作とは決定的に違う部分がある。それは前作から2年後に出版されたということだ。
著者は『チェンジメーカー』が出版された2005年の頃は、まだ「社会起業」「企業の社会的責任」「ソーシャルベンチャー」といった言葉はまだまだ聞き慣れないコンセプトであったという。しかし、それから2年が経過した2007年、本書が出版された頃になるとそうした芽たちがだんだんと成長し、手ごたえを感じるようになっていた。
これはアメリカだけではなく、日本でも同様のことであった。実際に社会起業家を目指し、若人、大人関係なく多くの人たちがこぞって勉強をはじめたり、活動を始めている。事実、本書には日本で活動している社会起業家やその団体の事例も多く掲載されている。
では、「社会起業家という仕事」とはどのようなものか。
著者は彼らの活動を「うねり」と比喩するが、ここでは、彼らが巻きおこしている「うねり」の一部を紹介する。
◆福祉をテクノロジーで支援する「究極のITベンチャー」
子どもの頃から根っからの科学少年だった創立者のジム・フルクタマンは、1990年に始まったエルサルバドルの内戦についての記事をきっかけに、テクノロジーを社会のために役立つ方法はないかと考えるようになる。
そうした使命のもとに出来たのが福祉を意味する「Bene」とテクノロジーの頭文字「tech」を合わせた「Benetech」という企業だ。
障害者の生活向上支援と人権侵害の救済および解決策につながる装置やソフトウェア製品の開発を業務内容とし、毎年1つか2つのプロジェクトをスタートさせ同時進行させているという。
例えば視覚障害者向けのウェブ図書館「ブックシェア」では、オーディオブックで音声が聞けるほか、その音声を点字することも可能だ。また、ブックシェアに提供するとほぼ無償配布となってしまうが、出版社の理解も得られてきるという。
その他にも人権侵害の事実を記録し、永久保存する「マータス」システムは、「人権分野のグーグル」とも言われている。
フルクタマンは自身の仕事を選んだ理由を「好きだから」という。そして「べネテックの構想がシリコンバレーの仲間たちを少しでもインスパイアして彼らが科学者の本来のミッションに気づいてくれれば」(P49より引用)と述べる。
◆「社会起業家」は職業ではなく「生き方」そのもの
本書を読んだある人は、「社会起業家」を端から見ていると、「何か特別なことをやっていて、あれだけやるのは自分には出来ない」というような印象を受けるかも知れない。確かに信念を曲げずに動くことは難しい。
また、今の職業と比較をしてしまうこともあるかも知れないし、逆に「こんなことやってみたい!」と目を輝かせている読者もいるかも知れない。
きっとさまざまな反応があるだろう。
本書の解説に社会起業家フォーラム代表の田坂広志氏が寄稿している。
その中で田坂氏は、「どのような職業か」と考えて読むのではなく、「社会起業家とはどういう生き方、働き方なのか」を感じて読んで欲しいと述べている。
そして、「いますぐ始められる活動がある」ということを理解すべきだ、という。それはまさしく、「今」を起点に動かない限り、未来の社会を変えることは不可能であるし、単なる「ドリーマー」(夢想家)になってしまうのだ。
前作でアショカ財団のビル・ドレイトン氏が社会起業家は「夢を持った行動家」と述べたが、まず「行動」ありきなのが、彼らの生き方なのだ。
そして彼らは自分のことを特別扱いしない。「当然のことをやったまで」と言うだろう。それは彼ら自身が自分の「生き方」そのものに対して、自信を持っているからだ。
本書は読み手が自分の「生き方」を振り返るきっかけになりえる、そんな一冊だと言える。
(テキスト/金井元貴)