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書籍名:対話流-未来を生みだすコミュ
ニケーション
出版社:三省堂
著者名:清宮 普美代 北川 達夫
価格:1,575円
ISBN:4385364370
ISBN:978-4385364377
北川達夫さんインタビュー

―まず、本書をお書きになったきっかけを教えていただけますか?

北川「私はもともと外務省に勤めていたこともあって、日本や世界でどのようなコミュニケーションの形態が必要とされているのかに興味があり、『対話』という観点で語れる方を探していたんですね。その一人目が平田オリザさん(前作『ニッポンには対話がない 学びとコミュニケーションの再生』で対談)で、二人目が清宮さんでした。
また、私は教育という分野に携わっていますが、教育分野で『対話』の能力を育んだとしても、その人材を引き受けるのはほとんどがビジネスの世界。自分のやっていることがどのように社会に引き継がれるかを知るためには、ビジネスの世界で教育をしている方とお話をするのが一番だろうと思ったことが、清宮さんと対談をすることになったきっかけです」

―今現在、教育現場において『対話』はある程度重視されているのでしょうか?

北川「重視されるようになりつつありますね。しかしこれは世界的な流れの話で、日本はまだそこまで至っていないというのが現実です。
自分と違う価値観や考え方を持った相手とのコミュニケーションにおいて、相手の意見を攻撃するようなものは『対話』とは呼べません。本書で『対話』と呼んでいるのは双方が歩み寄るコミュニケーションであって、基本的には意見を戦わせることはありません」

―本書の中でも触れている協同学習について、日本人や日本社会の特性をきちんと理解したうえで、個と集団の関係性はどうあるべきか、集団における個をどのように活かしていくかを考えるところから始める必要があるとおっしゃられていますが、日本では、具体的にどのようなかたちが実現可能なのでしょうか。

北川「『対話』とは歩み寄るコミュニケーションだということは申し上げましたが、日本人は全員の顔色をうかがって、個々の違いを隠すことで解決を図ってしまうことが多いと思います。
歩み寄るどころか、対立点が明らかにならない。全員が持っている異なった意見を引き出し、それを擦り合わせていくのが対話だとすると、日本の場合に必要なのは、集団の中から個を際立たせることだと思います。本書でいう『対話』の特徴である、『戦わない』『歩み寄る』は大事なのですが、そこだけを強調せずに、まずは個々の違いを引き出してから歩み寄ることが大事です」

―グローバル社会における、日本人の新しいリーダーシップ像に関してどのようにお考えでしょうか。教育では、「個の違いを際だたせて多様性を活かす教育、どこの誰とでも協力して創造的に問題解決できる子どもを育てるような教育」が重要だとおっしゃっていますが、対話の中でアクティブに問題解決を行っていくリーダー像が理想的なのでしょうか。

北川「『対話』の基本というのは、考え方が根本的に違う人同士であっても問題意識を共有して、創造的に問題解決していくということです。自分と対立する考え方であったり、敵対する考え方であったとしても、問題解決を図らなければならないのがグローバル化した社会。これはビジネスもそうでしょうし、例えば国際紛争や国内の紛争の解決にも同じことが言えます。孫子の代まで殺し合ってやる、などと言っている人達にも対応していかないといけないのです。
そこまで考えると、グローバル社会で求められるリーダー像というのは『仲介者』の性質が強くなってくると思います。様々な考えを持っている個々の言い分を聞いて、同じ問題意識を持たせ、同じ目標に向かわせていくという力が必要になってきますから。もしかしたら、少し八方美人的な性格をもっている日本人に向いているのかもしれませんね。」

―ビジネスは対話によって作られていくといっても過言ではありませんが、これからのビジネスにおける『対話』の持つ意味合いはどうなっていくのでしょうか。

北川「一つは、世界どころか日本人の中でも考えや価値観が多様化し、自分の思いが通じる、といったことが期待できなくなってきた社会を生き抜くために必要な力として。また、価値観や考え方の多様化を活かす力としても『対話』の力は重要になってくると思います」

―読者の皆様へ一言お願い致します。

北川「もう『話せばわかる』という時代ではなく『わからないから話すしかない』という時代です。今までは日本の長く重い文化の中で、それぞれの思いが言葉にされなくても通じ合えてきました。それはすごく大事なことですが、これから生きるために必要なことは、とにかく思ったことを言葉にしてみること。考えを言葉にする力を身につけていく必要があると思います」

―ありがとうございました。