コロナ禍のビジネス「勝ち組」と「負け組」
コロナ渦で飲食業界や旅行業界が大打撃を受ける中、コロナ禍でも業績好調な勝ち組も存在する。なぜ景気が悪くても勝ち組が生まれるのか?など、コロナ禍でのニュースやトレンドを取り上げて経済学の基本を解説するのが、『激変する世界の未来を予測する100年に1度の経済学』(渋谷和宏著、総合法令出版刊)だ。
■コロナ禍のビジネス「勝ち組」と「負け組」
本書では、経済ジャーナリスト、大正大学表現学部客員教授の渋谷和宏氏が、コロナ禍で起きたさまざまな経済学のモノサシで分析・解析し、それをもとにコロナ禍からコロナ後にかけてどう変わるかを予測し紹介する。
コロナ禍での勝ち組の代表といえば、ソニーだ。
2020年度の決算では、売上高は8兆9993億円で前年度比9%増、純利益は1兆1717億円で同2倍。ソニーの純利益が1兆円を超えたのは史上初めてで、コロナ禍にも関わらず、過去最高益を実現した。
なぜソニーは好調だったのか。それはコロナ禍に伴う社会、経済活動の制約で、私たちの生活や仕事に大きな影響を与えたことが関係している。生活が変わったことで、消費活動の傾向が変わり、ある商品やサービスの需要が増加する一方で、別の商品やサービスの需要が減少した。
多くの人たちが感染リスクのある外出を控え、家の中での巣ごもり消費にお金を使うようになったことが大きい。ソニーの主力事業であるゲーム機や音楽の売り上げが好決算に大きく貢献したのだ。ゲーム機のプレイステーション4、2020年に発売したプレイステーション5の販売台数やゲームソフトのダウンロード数、音楽配信が大きく伸びた結果、エンタテイメント事業の売上高は前年度比で13%増となった。
一方、厳しいのが運輸や旅行業界だろう。
大きく業績が悪化した代表格はJR東日本だ。コロナ禍による売り上げの減少はグループ全体で1兆1719億円に達し、運輸事業の売り上げは45%減、小売り・サービス事業の売り上げは37%減と、巣ごもり消費が逆風になってしまった。
経済学では「代替」「補完」という言葉をよく使う。バターとマーガリンのように、ほぼ同じ目的で購入され、ほぼ同じような満足感と利便性を与えるモノやサービスを、互いに代替材であると言う。旅行に出かける屋外レジャーと、ゲーム機で遊ぶ屋内レジャーも一種の代替関係にある。コロナ禍での自粛が、屋内でのレジャーの価値を高めた。そのため、ソニーの主力事業であるゲーム機をはじめとするエンタテイメント事業部が好調となった。こうした事例はコロナ禍だけでなく、歴史上いくつも生まれている。そこに今後のビジネスを見通すカギがあるのかもしれない。
むずかしい専門用語はなく、身近なニュースを活用して講義形式で経済を紹介する本書。講義を受けるつもりで教養を身につけてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)