だれかに話したくなる本の話

「部下からの報告メールは原則返信しない」と決めた会社で起きた劇的な変化とは

優先順位が高い仕事があるのに、メールの返信であったり、会議が長引いてしまったり、同僚や上司・部下からの相談であったりに対応する時間に手が取られてしまい、そちらが全く進まないまま1日が終わってしまったという経験は誰もがあるのではないか。

業務の無駄を減らし、効率を上げることが「働き方改革」のキモの部分の一つなのだが、企業文化などが邪魔をしてなかなか進められないという会社も多いだろう。 効率を上げるなら、もしかしたら抜本的な改革が必要なのかもしれない。

経営・人事コンサルタントの各務晶久さんによる『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下 利益生むホントの働き方改革』(朝日新聞出版刊)は、著者自身が取り組んだ「労働生産性向上」プロジェクトの事例で、実効を上げた生産性改革のタネを、データを使いながら説明する。

■メールで勤務時間の3分の1近くを使う管理職

第一章の「コミュニケーション・コスト削減」プロジェクトでは、首都圏にある創業40年、社員300人ほどの、通信ネットワーク系エンジニアリング企業A社を舞台に、コミュニケーション・コスト削減の事例が紹介されている。

その中でも特に目を引く事例が、メールに使う時間の大幅な削減である。

著者が業務の分析をしたところ、A社では管理職が在社時間の3分の1近くをメールに費やしていたことが分かった。社内を平均しても実に4分の1。少ない人でも1日の労働時間の約15%、多い人は実に約70%がメールに使っていたのだ。

さらに、承諾を得たうえで、「誰にメールを送っているのか」を宛先で分類。
結果、部下から上司宛は報告・相談の内容が大半で、管理職は一般社員の1.77倍もメールを送信しており、その送信メールの40%強を部下に送っていたことが分かった。上司から部下へのメールは1日平均16通。部下から上司に送るメールの数は平均4通であることから、多いことが分かるだろう。

ただ、上司は同時に何人もの部下を見ている。そのためメールの送信数が増えるのは当然だろう。また、A社では部下からのメールには丁寧に返信することが組織文化として根づいており、上司は簡単な報告でも丁寧にメールを返信していたのだ。

■メールコストを劇的に減らしたたったひとつの“きめごと”

そこで取り決められたのが、 「部下からの報告メールには、原則として返信しない」 という社内ルールである。

「相談を含んだ報告メールを送りたい場合はどうするのか」という声があがるかもしれない。しかし、A社の場合、相談事や助言がほしいときは対面か電話が一般的で、メールでやり取りすることは稀だった。そのため、このような思い切った舵取りができたのだ。

このルールを管理職、一般社員に周知し、3ヶ月運用した結果、上司から部下に送信したメールは1人1日3通まで減った。対策前は1日平均16通だったので8割以上減となった。一通につき3分かけていたとすると、1ヶ月(20労働日)で780分(13時間)のコスト削減となる。

また、副次的な効果として、一般社員から上司へのメールも減ったという。これは「上司からの返信」に対する「返信」が減ったことによるものだと著者。こうして、たった一つの社内ルールによって全社的なコミュニケーション・コストの削減につながったのである。

これは著者が打ったコスト削減の手の一つであり、他にも様々な働き方改革のプロジェクトが書かれている。

もちろん、それぞれの企業文化があり、その文化に合わせた形でコスト削減案の導入を考えるべきだろう。しかし、その一方で、生産性を大きくあげるためには、思い切った決断が必要なのかもしれない。

(新刊JP編集部)

メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下 利益生むホントの働き方改革

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