だれかに話したくなる本の話

東京から逃げ出した日本の文豪とは

『文豪 東京文学案内』(田村景子編著、田部知季、小堀洋平、吉野泰平著、笠間書院刊)

日本の近代文学の文豪たちが集った文学の場である東京。生活の場として、また作品に描いた東京を通して、夏目漱石、志賀直哉、宮沢賢治、松本清張ら、32人の文豪たちを辿っていくのが『文豪 東京文学案内』(田村景子編著、田部知季、小堀洋平、吉野泰平著、笠間書院刊)だ。

文豪東京文学案内

文豪東京文学案内

江戸が東京に変わると、郊外だった新宿や渋谷は住宅地になっていき、華やかな文化が生まれ、地方からも人が集まってきた。その中には、宮沢賢治や正岡子規、太宰治など、のちの文豪たちも含まれていた。一方、夏目漱石や永井荷風など生粋の「東京っ子」は、足元から時代の変化を感じることになる。
大学になじめなかった芥川龍之介が、思慕と追憶の思いに耽った「隅田川の水」。当時最先端の自転車で東京中を走り回った志賀直哉が見つめた格差社会。萩原朔太郎、宇野千代、川端康成らが集った「馬込文士村」。江戸川乱歩を惹きつけた怪奇と幻想の浅草。坂口安吾の作風を変化させた東京大空襲。
明治、大正、昭和と、時代とともに激しい変化を遂げていく「東京」と、その影響を受けながら名作を生みだしてきた文豪たちの姿を描く。項目ごとに当時の東京をリアルに感じられる地図も掲載。