だれかに話したくなる本の話

推し活エッセイの著者が語る「文化を愛でる心」の大切さ

心から好きなものを「推す」。そうすることで世界が一気に広がっていく。

ナカムラエムさんが執筆した『推してみて』(幻冬舎刊)は、「推し」ができたことによって毎日が変わる様子がつづられたエッセイだ。

好きなものに関わるものを調べて、また新たなものを好きになる。そうしてどんどん文章が紡がれていく。
「推し活」はナカムラさんにどんなものをもたらしたのか。インタビュー後編では、本書を通して伝えたかったメッセージについて聞いた。

(新刊JP編集部)

■「文化を愛でる心」が人間関係をもっと良くする

――ナカムラさんがエンタメにはまるきっかけとして、コロナ禍は大きな要因になったようですね。

ナカムラ:そうですね。コロナ禍になって家にいる時間が増えたので、テレビをインターネットと接続して動画配信サービスを観られるようにしました。それに読書量もかなり増えましたね。週に3、4冊は本を読むし、映画も観るし。

また、その前に断捨離をしたんです。家の内装をきれいにしたり、いらないものを捨てたりして、やることをやってから、エンタメ方向に行った感じですね。

――準備は整ったと。コロナ禍でエンタメにハマった人は少なくないと思います。私の周囲でも韓流ドラマが流行ったりしましたし、映画やアニメ、YouTubeをずっと見ているという人もいました。

ナカムラ:コロナ禍に自分を見つめ直す時間を取れた人って結構多かったんじゃないかなと思います。

ただ、私からすると孫の世代、小学生や中学生くらいの子どもたちにとっては、ちょっと大変だったんじゃないかなとも思います。活動範囲が広がる時期に、外に出てはいけないと言われてしまって。

――『推してみて』というエッセイを通して伝えたかったメッセージはなんでしょうか。

ナカムラ:今って、ハラスメントにしても、コンプライアンスにしても厳しくなっていて、何か発言するだけでも「これは良いだろうか」と考えてしまうことってありますよね。私はお客様と接する仕事をしていましたが、すごく厳しくなった印象があります。

ただ、そういう中でもう少し自由があってもいいじゃないか。規則で縛りつけるだけではなくて、もう少し愛があってもいいんじゃないかということを、エッセイを通じて言いたかったんです。何もかもがダメって言って規制すると、だんだん人間らしさが失われていくような気がして。

――確かにおっしゃる通り、規制というか、縛りが厳しくなっている印象はあります。

ナカムラ:私、いじめの問題についても興味があって、先日もテレビでいじめの対策について放送していましたけど、やはり何十人といる学校のクラスの中でそういうことが起こってしまって、そうしたときに周囲の人たちが「それは違うんじゃないの」と言えるような目がないといけないと思うんです。ただ、一方でそうしたいじめの芽を摘むのは大変だということも分かっています。

話が逸れてしまってすみません。こういう風にどんどん多方面に広がっていくんですよね。それは好きなものについても同じで。

――興味や関心のあることって、どんどん広がっていきますよね。

ナカムラ:そうなんですよね。世の中はいろいろなことがつながっていますから、興味を持つ心があれば、どんどん世界が広がっていきます。

――では、どんな人に本書を読んでほしいとお考えですか?

ナカムラ:若い方で今仕事に行き詰っている人にぜひ読んでほしいです。

――そういう方々にどんなメッセージを伝えたいですか?

ナカムラ:この本の帯に「私たち、ホモ・サピエンスだけが、文化を愛でた」と書いてあるのですが、実はもともとの文章はもっとキラキラしたものだったんです。楽しいものをみつけると、人生がキラキラしてくるというような。ただ、それだと読む人が限定されてしまうんじゃないかと思って、変えてもらいました。

この本の最後でも書いていますが、文化をつくったのはホモ・サピエンスである私たちだけなんだそうです。その文化を愛でることで心の中に少しあたたかい愛が芽生えたら、人間関係ももっと良くなるんじゃないかと思うんですね。

――そのメッセージを伝えたかったと。

ナカムラ:そうですね。「エンタメは心の栄養」と書きましたが、その栄養をぜひとってほしいです。

(了)

推してみて

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私たち、ホモ・サピエンスだけが、文化を愛でた

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