だれかに話したくなる本の話

「追いつけ追いこせ白石麻衣」天才中学生作家が珍コメント

10月27日、東京都千代田区の小学館ビルで、同社が取り組む新企画の発表会が行われた。

小学校全学年向け雑誌『小学8年生』創刊や、「WELQ」をはじめとしたDeNA系のキュレーションメディアが問題視されたことにより事実上サービスを停止していた「MERY」復活への参画など、今年に入って話題となる発表を次々と打ち出してきた小学館だけに、新企画の内容は多彩そのもの。

中でも異彩を放っていたのは「14歳の天才作家」として注目を集める鈴木るりかさんのデビュー作『さよなら、田中さん』だ。

鈴木さんは同社が主催する「12歳の文学賞」で、小学4年生から6年生にかけて3年連続で大賞を受賞。年齢にそぐわない筆力が、石田衣良さんやあさのあつこさんなど人気作家からの賞賛の的となった。

3年連続大賞は初めてということでマスメディアから大きく取り上げられたこともあり、『さよなら、田中さん』は発売直後に重版がかかったにもかかわらず品薄状態に。10月30日現在、ネット書店大手のAmazonでも品切れになっている。

この人気によってさらなる増刷も決まり、これで合計3万2000部に。発売当初の7000部を大きく上回る、新人としては異例のヒットとなっていることについて、発表会に登場しスピーチを行った鈴木さんは、「4年前に書いた、たった11枚の小説がこんなふうになるとは思いませんでした」と、感慨を語った。

『さよなら、田中さん』は、主人公の小学生・花実とお母さんの日常を、時にユーモラスに、時にほろりとさせる筆致で書いた連作短編集。そのうちの一編「Dランドは遠い」は、鈴木さんが小学4年生時に書いた原稿が元になっている。

「副賞の図書カードとパソコンにつられて」(鈴木さん)、賞の締切日当日にわずか数時間で書き上げた原稿が見事大賞を獲得。これがその後の創作のスタートになったという。

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』やレイ・ブラッドベリ『十月はたそがれの国』といった名作文学作品の名前が飛び出す一方で、「追いつけ、追い越せ白石麻衣」と、写真集が10万部を超えるヒットとなっているアイドルを引き合いに出して来場者を笑わせる一場面も。

「少しでも部数を伸ばして、いろいろごちそうになった担当編集者の方に恩返ししたい」と、最後は中学生らしく(?)意気込んでいた。

(新刊JP編集部)

『さよなら、田中さん 』

さよなら、田中さん

田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るくたくましいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで生きている。この母娘を中心とした日常の事件を時に可笑しく、時にはホロッと泣かせる筆致で鮮やかに描ききる。「12歳の文学賞」史上初3年連続大賞受賞。5編からなる連作短編集。圧倒的小説デビュー作。

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