だれかに話したくなる本の話

10年前に「電子書籍が来る!」と言っていた人たち

編集部山田です。近頃は「エビスビール」のおまけの特急エンブレム集めに夢中です。

出版関係者の方はご存知かもしれませんが、さる10月10日~14日。ドイツでフランクフルト・ブックフェアという出版業界のの国際見本市がやっていました。

国際ブックフェアの類は世界各地でわんさかやっておりまして、中でもフランクフルトのブックフェアはサウジアラビア・リヤドのものと並んで最大級だと言われています。

零細だ先細りだ出版文化の危機だ全滅だと散々な言われようの出版業界ですが、海外ではまた事情が違うのかもしれませんね、詳しくは知らないけども。ちなみに東京でもやってましたがここ数年開催されていないです。

開催されていた頃はたまに顔を出していました。会場はこちら。 表紙

(年に一度の本の祭典『第16回 東京国際ブックフェア』に潜入!)

ところで、そのフランクフルト・ブックフェアで、10年前の2008年、来場した作家や編集者などの業界関係者(30カ国・1000人)を対象にアンケートをとって、こんな結論を出しています。

「10年後の2018年には、電子書籍が紙の書籍の取引量を上回っている(だろう)」

まあ結論といっても全員が全員こう考えていたわけではなくて、こういう回答をした人が一番多くて全体の40%いたという話です。「そんな未来は来ないよ!」と考えた人も30%ほどいました。

2008年というと、僕がこの仕事を始めた年でして、確かに当時「これからは本は紙じゃなくて電子に置き換わる」とあっちこっちで言われていました。僕はズブの素人だったので「ああそんな時代なのか。世の中変わるな」とよくわからないながらに思っていたりして、いつ電子書籍が紙を凌駕するのかと待っていましたが、

そうこうしている間に10年経ってしまった。

今のところ凌駕する気配はないです。どうなっているのか。凌駕するどころか「絶版本の復刻」だとか「個人出版」だとか、独自の役割に落ち着いちゃってるじゃないか。漫画は別だけども。

ちなみに日本での紙と電子の販売金額はこちら

もちろん、いずれは電子が紙の取引量(額)を超えるんだと思います。ただし、長く続いてきた人間の行動が変わるのには思ったよりも時間がかかるものです。僕が思うに技術の進歩だけではダメで、人間が入れ替わることが不可欠かなと。急激に変えようと思ったら、今電気自動車の分野で中国がやっているように、国としてサポートするなどして変化を誘引する必要がある。

10年前に電子書籍がくると煽りまくっていた人たちを捕まえて問い詰めたい、という話ではなくて、何かあたらしい技術ができたりすると、「世界が変わる」的に言う人がたくさん出てくるけども、彼らが言っているのは「そのうちいつか変わる(かもしれない)」であって「すぐ変わる」ではないということを忘れないようにしたい、ということです。センセーショナルな語り口や見出しに惑わされてはいけません。自戒を込めて。

ちなみに今年のフランクフルト・ブックフェアも紙の本が主役だったそうです。 ではまた。

この記事のライター

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山田洋介

1983年生まれのライター・編集者。使用言語は英・西・亜。インタビューを多く手掛ける。得意ジャンルは海外文学、中東情勢、郵政史、諜報史、野球、料理、洗濯、トイレ掃除、ゴミ出し。

Twitter:https://twitter.com/YMDYSK_bot

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