だれかに話したくなる本の話

ホリエモンが2025年大阪万博の誘致で「役に立った」と語る一冊は?

2025年の大阪万博開催が決まり、2020年の東京オリンピック開催に続きビッグイベントが控える日本。

戦後日本でも1964年に東京オリンピックが、その6年後の1970年に日本万国博覧会(大阪万博)が開催された。そんな高度経済成長期の中で、大きな発展を遂げたのがエンターテインメントビジネスだ。
1983年の東京ディズニーランド開園はその一つの到達点だが、誘致のためのプレゼンテーションはスリリングで、そしてスペクタクルなものだった。その仕掛け人は、小谷正一、堀貞一郎という伝説の剛腕プロデューサーである。

この2人の日本人とテーマパークビジネスの父であるウォルト・ディズニーを中心に、日本のエンターテインメントビジネスの草創期から東京ディズニーランド誕生までを追うノンフィクション**『新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日』**(講談社刊)が2月1日、オーディオブック化された。朗読は伊藤明賢氏が担当している。

TOKYO FM、ジグノシステムジャパンでは本書のオーディオブック化を記念し、2月6日夜8時より特番**『エンタメの夜明けスペシャル~あのBarで、もう一度』**を放送する。
元麻布の“例のレストラン”で繰り広げられる客同士の会話。本書の著者でホイチョイ・プロダクションズ社長の馬場康夫氏が聞き手となり、『「エンタメ」の夜明け』を愛読していた堀江貴文氏、雑誌『BRUTUS』編集長の西田善太氏と、本書や仕事にまつわるトークを展開する。

今回のゲストの一人である堀江氏と、『「エンタメ」の夜明け』の出会いは20年以上前に遡る。1996年、馬場氏自身が企画し、インタビュアーも務めていたラジオ番組に堀貞一郎が出演。東京ディズニーランド誘致のいきさつを語り、大きな反響を呼んだ。その放送を、堀江氏は自動車を運転しながら聞いており、印象に強く残ったという。

それから約20年後、堀江氏は大阪府国際博覧会(大阪万博)誘致のアドバイザーとして府特別顧問に就任。2018年11月、2025年の大阪万博開催が決定した。また、その一方で都市複合型エンタメフェス「ホリエモン万博」という大イベントをプロデュース。「ホリエモン万博2019~節分まつり~」は2月2日、3日の2日間にわたって行われた。

ラジオ収録後、『「エンタメ」の夜明け』と2つの「万博」にまつわるエピソードを皮切りに、堀江氏と馬場氏が、日本社会が直面する課題とその未来についてトークを繰り広げた。その「特別対談」の様子をお送りする。

 ◇  ◇

堀江:多分ね、この『「エンタメ」の夜明け』は大阪万博の誘致に役立っていると思いますよ。

馬場:そうなの!?

堀江:アドバイザーに就任して、大阪府の職員に誘致のためにいろいろとアドバイスをしていたんだけど、「あ、これは『「エンタメ」の夜明け』を読んでもらえばいいや」と思って、大阪府の職員の人たちにこの本を見せたんですよ。だから、おそらく大阪万博の誘致に(『「エンタメ」の夜明け』が)役立っているはずです。

馬場:ありがたい! 今のところだけ音声データをもらえない(笑)? でも、大阪万博の誘致アドバイザーって、ホリエモン万博をやっている場合じゃないんじゃないの?

堀江:いえいえ、ホリエモン万博の方が大事です(笑)。なぜホリエモン万博が大事かというと、馬場さんは『気まぐれコンセプト』を書かれていたので世相の動きが分かると思うんですけど、今はAIやロボットの時代ですよね。『99%の会社はいらない』という本を書いたりとか、「9割以上の人は仕事をしていない」という話をするわけです。

馬場:「9割以上の人が仕事をしていない」というのは全くその通り。

堀江:その通りですよね。これまでの日本は、おそらく会社が社会福祉の部分を担ってきたんです。けれど、その日本型システムが制度疲労を起こしていて、いろいろな不正問題が噴出するようになった。ブラック労働もそうだし、ラジオ収録の中で話をした電通の話もそうです。
そして、この明らかに無理が来ている状態をガラガラポンすると、おそらく9割の人がリストラされることになるんです。でも、もしガラガラポンして、世の中の9割の人が定年後のサラリーマンのような生活を送っている社会になったら、めちゃくちゃ不安定じゃないですか。自殺者も増えるだろうし、暴れる人も出てくる。ならば、もともと稼げる力がないのだから、こちらがお金を払うから、笑って遊んでいてくれればいいよ、と。

馬場:それはすごくよく分かる。実は仕事をしている人って1割くらいしかいないんだよね。でも、僕は10年日立製作所にいたんだけど、もし100人採用したら100人全員に稼ぐ人になるぞという教育をするんです。でも実際は10人しかそう(稼げる人に)ならなくて、その10人が残りの90人を食わせるようになっていく。
で、その10人っていうのも、2年くらいは寝食を忘れるくらい働いてそうなっていくわけで、今そんな社員教育をしたら(採用した人が)全員やめちゃう。だから、もはや10人すら作れなくなっちゃっている。それって大問題じゃないかと思うんだけど。

堀江:今だと、多分、その1割の人たちはGAFAのような企業に行くだろうし、もっと言うと起業するわけです。そうして面白いシステムを作っていくわけなんだけど、僕は富の再分配より難しいことがあると思うんですよ。それは、プライドは高いのに柔軟性がない人たちにいかに一定の満足感を与えるか。

馬場:「笑って遊んでくれればいい」という話でしょ。

堀江:だから僕は「ホリエモン万博」のようなことをやっているんですよね。「ホリエモン万博」は、近未来の働き方、生き方の一つのショーケースなんです。

 ◇  ◇

小谷正一、堀貞一郎はともに電通出身者。『「エンタメ」の夜明け』で知ることができる彼らのエピソードは、「働き方改革」が叫ばれる今では、とても考えられないものばかりかもしれない。

しかし、過渡期の今、流れに身を任せることはリスクになる。日本のエンタメビジネスを創り上げた男たちの働き方、人の動かし方、そして生き様に触れ、刺激をもらってみてはいかがだろうか。

『エンタメの夜明けスペシャル~あのBarで、もう一度』は2月6日夜8時からTOKYO FMで放送予定だ。

(新刊JP編集部)

■『エンタメの夜明けスペシャル~あのBarで、もう一度』

2019年2月6日(水)20:00~20:55

東京ディズニーランドはいかに誕生したか——。
小谷正一氏、堀貞一郎氏という2人のプロデューサーの視点から日本のエンターテインメントビジネスの草創期を描いたノンフィクション『「エンタメ」の夜明け』。同著執筆のきっかけとなった1996年TOKYO FMで放送した堀貞一郎氏のインタビュー、東京ディズニーランド招致のいきさつや、堀江貴文、西田善太(『BRUTUS』編集長)をお迎えし、現代の視点から紐解くエンタメ論が、今宵再び”あのBar”で繰り広げられます。

◆番組HP: https://www.tfm.co.jp/audiobook/
◆出演:馬場康夫(ホイチョイ・プロダクションズ代表)、堀江貴文、西田善太(『BRUTUS』編集長)、浜崎美保(『Skyrocket Company』パーソナリティ)、他(敬称略)
◆放送局: TOKYO FM  80.0MHz

■『新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日』オーディオブック版特設サイト

https://www.tfm.co.jp/audiobook/

新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日

新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日

究極のテーマパーク招致に奔走し、成し遂げるまでを描きだす。

この記事のライター

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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audiobook:「鼠わらし物語」(共作)

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