だれかに話したくなる本の話

「売り込む」営業から「教える営業」へ 展示会営業成功のコツとは?

営業がなかなか上手くいかないと悩む中小企業は多い。

人手不足で新規開拓ができない、持っている製品や技術は素晴らしいが売り込む力が弱い。
そうした問題を解決するのが「展示会営業」という方法だ。

展示会に自社ブースを出展することで「新規顧客獲得」をはじめとした営業が抱える問題を一気に解決できるというこの営業術。そのノウハウを詰め込んだ『最新版 飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』(ごま書房新社刊)を上梓した展示会営業®コンサルタントの清永健一さんにお話を伺った。
今回はその後編となる。

インタビュー前編を読む

(新刊JP編集部)

■営業は「売り込む」のではなく「教える」が理想の形

――引き続き、展示会営業での目標の立て方について伺っていきます。先ほど、最終的な「売上」の目標を立てて逆算していくことが大切だとおっしゃっていましたが、その難しさもあるのではないですか?

清永:そうですね。2点、難しいポイントがあります。一つは「やらされ仕事」になってしまう可能性があるんです。「ノルマ化」してしまうと言った方が分かりやすいですかね。「目標達成しろ!」と言えばいうほどその傾向は強まり、成果も出にくくなる。嫌々取り組むことが成果が出にくいのは、何事も同じですが、展示会は特にその傾向が強いんです。なぜなら、展示会はお祭りでありイベントだからです。でも、言わないわけにもいかない。そのさじ加減が難しいですね。

――「無理やり出展させられている感」のあるブースは結構あります。

清永:そうですね。これを解決する方法としてゲーム化する、というやり方をお奨めしています。展示会出展という取り組みの中にゲーム的な要素を組み込んでいくのです。例えば、「名刺を何枚獲得しろ!」ではなく、名刺をもらったら1ポイント、さらにその名刺が部長職以上ならプラス2ポイントとか、そういう要素を持ち込む。得たい成果を出すための工夫は必要ですね。

もう一つの「難しいこと」は、ブースでの賑わいを取るか、それとも最終的な売上を取るかという点です。もちろん、最終的な売上アップを目指していくべきなのですが、ただ、展示会に出る以上、にぎわいのあるブースにしたいという気持ちも出てくるわけです。サービスや製品を売るためには、社長や部長などの決定権がある人にアタックする必要があります。しかし、当たり前ですが、実際、そういう上位職の人は来場者の中の一部でしかありません。そもそも少数の人を狙うわけですから、ブースに人だかりはできないかもしれない。人だかりをつくるだけなら、母数の多い担当者をターゲットにした方がいい。でも、それだと、最終的な売上にはつながりにくくなります。このあたりの判断をしっかりする必要があります。

――本書にはIT・ウェブ関連の会社も自社営業に展示会を活用していると書かれていました。これは少し意外とも思える動きです。

清永:対面で実際にサービスを見せることの重要性が見直されているのではないかと思います。ただ、だからといってウェブでのPRは意味がないということではなく、訴求できるターゲットが異なるんですね。ウェブで訴求できないターゲットにどうやってアピールしていくかというと、飛び込み営業も電話営業も厳しい。ならば展示会でしょうという流れです。

――本書の「展示会営業術」の最も大きなポイントは、営業が売り込む人間になるのではなく、教える人間になるという点です。

清永:その通りです。自分が何らかの専門家になり、教える立場になることが求められます。

――教える側に立つための仕組みとして何かありますか?

清永:ブース作りとしては、商品の説明するためのブースではなく、何かを伝えるためのブースにすることが大切です。

――何かを伝えるというのは?

清永:自社の商品を一生懸命説明しようとして話し過ぎる。これはNGです。その来場者は他のブースもまわっていますし、一回説明を受けただけでは、すぐに忘れてしまうでしょう。だから、相手の悩みや不安ごとを引き出しながら、その解決に向かうような話をする。それがまず重要ですね。

――そこで関係ができた見込み客を次につなげていくためのコツを教えていただけますか?

清永:あらかじめに仕掛けをつくっておくことが大切ですね。そのブースで申し込みをしたくなる特典を用意しておくイメージです。

例えば、私がお手伝いをしている清掃会社さんで、介護施設の清掃を受注したいということで介護施設の経営者が来場する展示会に出展したんですね。その会社はカーペットの洗浄で日本有数の技術を持っているのですが、だからと言って、ブースで「うちのカーペット洗浄技術はすごいです!」とアピールしても、おそらく来場者の反応は鈍いはずです。そうではなくて、相手の悩みにズバっとリーチするべきなのです。そこで、介護施設経営者の優先順位の高い悩みである「施設にノロウイルス患者が出ると怖い」という点にクローズアップしました。

――なるほど。確かにノロウイルスが流行して亡くなる方が出ると施設そのものの営業停止処分もありますからね。

清永:はい。それで、「ノロウイルス怖いですね」という文言をブースに掲げました。
ただ、多くの企業はここで足を止めた来場者から「本当にノロが防げるの? それならうちの施設も検討したいから電話をちょうだい」と名刺を渡され、展示会が終わった後に電話するという動きを取ります。ところが、それだと相手はすでにテンションも下がっているし、日常の業務もありますから「やっぱり今はいいや」となって、2回目の接触をすることすらできなくなってしまうんです。

こうならないように、その清掃会社さんでは、ある仕掛けをつくりました。その仕掛けとは、「ノロウイルス危険度チェック診断」です。ブースで来場者に対して、「この展示ブースでは、通常33,000円で提供している「ノロウイルス危険度チェック診断」を限定120施設に限り、無料で対応します」とトークするようにしたのです。「申し込みが殺到していますが、まだ少し枠があります。どうしますか?」と。

――そうすると、次回の面談アポイントに確実に結び付けられますね。

清永:そうです。相手から望まれて次回の面談アポイントが取れる。結果から言えば、3日の展示会期間でウイルスチェック診断の申し込みが124件ほど。そこから受注につなげられたのが88件件ほどだったと思います。その仕掛けをつくらなければ、ブースで200人対応したとしても、次回の面談につながったのはおそらく40件もなかったと思います。 そう考えると、一つの仕掛けで劇的に成果は変わりますよね。

――そういう仕組みを作る人は誰に任せればいいのですか?

清永:私は社内で展示会出展のプロジェクトチームをつくることをすすめています。
メンバーは営業部門だけでなく、マーケティング、開発、購買、経理、メンテナンスなど各部門から1人ずつ出してもらって、社長自身がプロジェクトオーナーになる。

多くの企業では、部門同士の仲がよくないケースがあります。セクショナリズムの壁と言ってもいいでしょうね。会社というのは機能別の組織ですから、一生懸命に仕事をすればするほど、たとえば、「『営業部は売りために早く出荷したい』、でも『製造部は原価を下げるためにゆっくり段取りしてからつくりたい』」のように、利害が対立してしまう面があるからです。でも、展示会で成果を出すという共通の目的をもって、何度もぶつかりながら、プロジェクトチームの中で話し合っていくことで、だんだんと壁がなくなっていく。社内の風通しを良くし、組織を活性化させるという意味でも、展示会は大きなきっかけになりますね。せっかく出展するなら成功したいと思うのは誰もがそうでしょうし。

――出展する上で旗を持つ人は、やはり経営者や経営層の方がいいのでしょうか。

清永:そうですね。全体を統括する部分は経営者や決裁者の方がやるべきだと考えます。私は中小企業をお手伝いすることが多いのですが、大企業だけでなく中小企業も人気ブース、売上につなげられるブースにすることは十分に可能です。特に社員数が300人まで以内の企業なら、社長自身がプロジェクトを統括してほしいですね。

――「展示会営業」を取り入れるべき企業はどんな企業ですか?

清永:どんな商材を扱っていても効果はあります。ただ、特に効果が出やすいのは法人向けのビジネスをしている企業ですね。

――「BtoB」の企業ですね。

清永:そうですね。消費者向けのビジネスならば、ウェブでのマス向けのPRを打つという方法もありますしね。ただ、BtoBだと、ウェブでのPRよりもちゃんと面と向き合う形の方が効果的なケースが多いです。

――本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?

清永:「展示会に出ているけれど、なかなか成果が出ない」という経営者さん、出展ブースの責任者さん、あとは展示会のブースに立ったことがある方。また、以前展示会に出ていたけれど最近は出ていないとか、これから展示会に出展することを検討している会社さん、それに、展示会の主催者さんやブース設営会社さんにも役立つと思います。本書をお読みいただいた方が、本書のノウハウを活用して大きな成果を出すことを心から応援しています。

(了)

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