だれかに話したくなる本の話

あの名作は、誰が、なぜ、盗み、壊したのか

『失われたアートの謎を解く』(筑摩書房刊)

「美術鑑賞の面白さは、今あるものを美術館で見るだけではないんです。むしろ、戦争や盗難、天災といった様々な理由で、この世からなくなってしまった美術品、つまり「失われたアート」を見る面白さもあるんです。」

そう語るのは、アートブログ「青い日記帳」を主宰するTakさんこと中村剛士さんだ。美術鑑賞の達人、カリスマアートブロガーとして知られる中村さんは、これまでも著書『いちばんやさしい美術鑑賞』(筑摩書房)や、『カフェのある美術館』(世界文化社)などを通して、肩肘張らないカジュアルな美術鑑賞の楽しみ方を紹介してきた。その中村さんが新たに着目したのが、すでにこの世から姿を消してしまった美術作品、つまり「失われたアート」を愛でる楽しみだ。

失われたアートの謎を解く

失われたアートの謎を解く

名画の悲劇は美術史の知られざる裏の顔だ。

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