だれかに話したくなる本の話

元編集者が語る「好きなことを仕事にしよう」本の危険性

書店に行って「ビジネス・自己啓発」の棚を見ると「好きなことを仕事にしよう」「やりたいことで生きていく」といったうたい文句の本が溢れている。いかにも魅力的な文言だが、実現できる人がどれだけいるだろうかという疑問もわく。

■「好きなことを仕事にする」を鵜呑みにするな

「オレたち凡人は社会に出てもやりたいことを探している人間が大半」

そう語り、「好きなことを仕事にしよう」的なうたい文句を鵜呑みにすることに警鐘を鳴らすのは、『GIG WORK(ギグワーク) 組織に殺されず 死ぬまで「時間」も「お金」も自由になる ずるい働き方』(すばる舎刊)の著者、長倉顕太さんだ。
元編集者でもある長倉さんはこうした本がよく売れることを認めたうえで、「どれだけの人が好きなことで稼いでいるかあやしい」とも述べる。

好きなことを仕事にしようにも、好きなことと稼ぐことが一致するとは限らないし、一致したとしても必ずしも成功するわけではない。そもそも大半の人は好きなこともやりたいことも定まっていないだろう。
ならば「好きなことを仕事にする」という生き方は一度忘れた方がいいのかもしれない。

「好きなことを仕事にする」を実現できるのが一握りの人ならば、仕事をするうえで「好きなこと」なんてどうでもいい、ついでにいえば「目標」なんてものもいらない。だから「好きなことを仕事にする」などという目標を定める必要はない。

大事なのは「好きなこと」ではなく「今、自分にできること」であり、把握しておくべきは「目標」ではなく、自分が今どんな人間かという「現在地」である。これまでの仕事や人生経験で得てきたスキルや知識、つまり「現在地の自分」をつかって、社会や顧客、周囲の人々に貢献するという生き方が、今の時代に必要とされているのだと長倉さんは言う。

■会社にしがみつく人生から抜け出すために考えるべきこと

目標を追うよりも、現時点の知識やスキルを使って誰かに具体的な貢献する生き方をしていく方が、人のつながりができやすくなり、「あの人はこういうことをやっていて、このスキルがある」といった情報が周囲に広がっていきやすい。こうした他者からの評価や評判がこれからの時代を生きる大きな武器になる。こうした評判を耳にした人から、人づてに仕事が舞い込むことが増えるからだ。

こうした依頼の中には、自分の知識やスキルが役立つ一方で、これまでやったことがないチャレンジングな仕事も含まれていることだろう。そのチャレンジを続けていくうちに、少しずつ自分のできることの幅が広がり、人脈もできていく。

自分が勤めている会社ではなく、自分という個人に宛てて仕事を発注する人ができれば理想的だ。会社への依存度は経済的にも精神的にも低くなり、生き方や働き方の選択肢が増える。これこそが長倉さんが本書で提唱する「GIG WORK(ギグワーク)」という働き方だ。

冒頭の話に戻るが「好きなことを仕事にしたい」といううたい文句の本に惹かれる人が多いのは、「好きなことを仕事にできているかどうか」の問題ではなく、おそらく「選択肢があるかどうか」の問題だ。好きな仕事ではないが、他に食べていく道がないから会社にしがみつかざるをえない、という人がそれだけ多いということなのだろう。

ならば、考えるべきはいかに自分に選択肢を作るかだ。会社に使われるのではなく、誰と仕事をするか、どんな仕事をするか、いつどこで仕事をするかという選択権を自分の手に取り戻すために、本書は大きな助けになってくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

GIG WORK(ギグワーク) 組織に殺されず 死ぬまで「時間」も「お金」も自由になる ずるい働き方

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