だれかに話したくなる本の話

「病んでるときはつぶやかない」 ZOC、SNS、ファン、そしてこれからの香椎かてぃ

アイドルグループ・ZOCのメンバーである香椎かてぃさんが、初めてのスタイルブック『新あいどる聖書』(扶桑社刊)を刊行した。

ファッションをはじめ、メイク、コスメ、髪型、ピアス、生い立ちなど、嘘偽りない自分の姿をさらけ出した一冊は、アマゾンで6月10日時点で299件のレビューがつき、その9割以上が最高評価と圧倒的な支持を得ている。

新刊JPは今、最も注目を集めるアイドル・香椎かてぃさんにインタビューを行い、この本の撮影エピソードを皮切りに、自身の生き方や考え方についてお話をうかがった。今回はZOCの中の香椎さん、そしてSNSとの関わり方について、これからの香椎さんなどがテーマだ。

聞き手・構成:金井元貴(新刊JP編集部)

■「断捨離ZOC」中? ZOCの中の香椎かてぃ

――かてぃさんにとって今のZOCとはどんな場所なんでしょうか。

香椎かてぃ(以下、かてぃ):うーん、ZOCですよね(苦笑)。ZOCって、部活と一緒なんですよ。グループで活動していて、何かあっても連帯責任。だから、今は全員で誰もヘマをせず、頑張りたいという気持ちです。

…でも実は今、自分の中で断捨離ZOCをしていて。距離を置いているんです。だから、あまり言えることがないんですけど、ZOCのことは好きですよ。

――なぜ断捨離ZOCをすることに?

かてぃ:昔からそうなんですけど、自分は友達がいないと思い込んでしまうことが多くて。誰も私を相手してくれない、誰も私をほめてくれないと塞ぎ込んだ結果の断捨離ZOCです。つまり、かまってほしいんです。

でも、巫まろちゃんが新メンバーで加入しましたし、断捨離ZOCをしている場合じゃないですから(笑)。メンバーとはすごく仲良いですし、早く集まりたいです。

――最近したメンバーとのやり取りはなんですか?

かてぃ:最近、西井(万理那)と美容について語り合っています。先日、私が病み散らかしてしまって、西井に連絡をしたら、「本当に西井なの?」っていうくらい慰めてくれて。お姉ちゃんという感じです。

最近気づいたんですけど、今、私って、かなのと同い年ではありますけど、ZOCの中で最年少なんですよね。だから、メンバーにクソ甘えてやろうという気持ちです(笑)。

――なるほど(笑)。どんな甘え方でアプローチするんですか?

かてぃ:直接本人たちに伝えることなく、ふとした瞬間に「私、今、苦しんでいるよ」っていう感じを出すんです。そうすると、藍染カレンさんがちょこちょこと家にやってくるようになるということを最近気づいたんですよ(笑)。

――ZOCのメンバーとは「仲が良い」という表現ではない、別の信頼関係を表す言葉が必要そうですね。

かてぃ:こんなに異質な存在が混ざり合っている関係性は初めてです。でも、それぞれどんな人なのか把握できてきて、扱い方も分かってきたので、今は余裕です(笑)。

■「病んでいるときはつぶやかない」――SNS、ファン、これからの香椎かてぃ

――ついにご自身の本が出ました。これから「香椎かてぃ」というアイドルをどのようにセルフプロデュースしていきたいか、目標などがありましたら教えてください。

かてぃ:もっと自分のことを発信していけたらと思います。コスメもファッションも新しいことも。それでギャルをどんどん増やしていきたい(笑)。

――『新あいどる聖書』の中で挑戦した新しいことってありますか?

かてぃ:私、撮影でほとんど笑ったことがなかったんですよ。いつも、ガンつけてくださいと言われるので。でも、今回は、アイドルっぽいページをつくりたいから笑ってくれと言われて、それは自分の中で新しさがありましたし、恥ずかしかったです(笑)。

今まで酔っ払って笑っているときの写真しかなかったので、珍しいと周囲から言われますね。

――かてぃさんにとって喫煙は一つのシンボルですが、お酒の方は?

かてぃ:お酒はあまり飲めません。でも、歩きながらお酒を飲むのが好きです。アイドルの友達って2人しかいないんですけど、そのうちの1人のBiSHのアイナ(・ジ・エンド)さんとスミノフを片手に飲み歩きしながら、語り合ったんですよ。それが本当に楽しくて。もちろん抱える悩みは違いますけど、同じ職業なこともあって、最近はお姉ちゃんみたいな感じで接しています。

――かてぃさんはSNSも使っていますが、あまり発信したりはしませんよね。SNSとの付き合い方について気を付けていることはありますか?

かてぃ:病んでいるときにつぶやかないように気をつけています。病んでいるときにネットに触ったら危険ですよ。飲酒運転と同じです。

――確かにその通りです。

かてぃ:だから昨日(このインタビューの前日)もつぶやいてしまったのですが、自分が病んでいることを共有したくないんです。私が病んでいると、ファンの子たちも病んでしまうので。なるべくポジティブなことを発信したいですよね。

――見ている人を奮い立たせるような発信も多いですよね。

かてぃ:お母さんがポエマーなんです。遺伝しました。

――どんなときに文章を考えたりするんですか?

かてぃ:思いつく場所は新宿が多いです。ポエムは自分に向けて書いていることが多いんですけど、共感してくれる子が多くて嬉しいです。

ただ、最近、「デカい鼻くそが取れたよ!」とか「お風呂これだけ入ってない」という報告をファンの子から受け取ることがあって、これはちょっとまずいなあと(笑)。ポジティブな報告なんですけど、真似はしてほしくないな。阻止しないといけませんね。

――コメントはちゃんと読んでいるんですね。ファンの方からいただいて嬉しかった言葉は?

かてぃ:先日手紙が届いたんですけど、「病んでいてもいいと思います。病んでいるあなたも、クソ生きてやると立ち上がるあなたも、最高に愛おしいです」というメッセージをいただいて、すごく響きました。自分が勇気づける側なのに、逆に勇気づけられました。本当に感謝です。

――『新あいどる聖書』をどんな人に読んでほしいと思いますか?

かてぃ:私より年上の方、30代の方からもメッセージをいただいたり、10歳の子からも「応援して大丈夫ですか?」と言われたりするんですが、年齢関係なく読んでほしいですし、特にこれから何か新しいことを始めようとしている人に、動くきっかけになってもらえればと思いますね。

あとは同世代が就職活動をしていて、悩んでいる子も多いのですが、絶対に自分のやりたいことをやれと伝えたいですね。

――ファンの皆さんにメッセージをお願いできればと思います。

かてぃ:この本を手に取ってくださった方は、皆さんも自分のやりたいことをたくさんして、失敗して、長生きしてください。

私の賞味期限がいつまで続くかは分かりませんが、それまで皆さんを楽しませることができたら、私の人生は満足です。

(了)

■香椎かてぃさんプロフィール

“孤独を孤立させない"をテーマにかかげるアイドルグループ『ZOC』のメンバー。ミスiD2017で大森靖子賞を受賞したことがきっかけになりメンバーに抜擢。
ZOCでは担当カラーは紫、ハイセンスでバグらせ、SNSは心配される、そんな中でも嘘のない言動にひかれ熱狂的なファンが多い。
本人の描いたイラストがグッズで商品化されたりと、多才な一面を持つ。香椎かてぃの“かてぃ"は、芸人の狩野英孝からきているらしい。

新あいどる聖書

新あいどる聖書

学なし底辺ギャルが、引きこもり、DVを受けつつもミスiDに応募し、アイドルとして立ち上がった。

この記事のライター

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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audiobook:「鼠わらし物語」(共作)

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