だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1487回 「スティーブ・ジョブズ 世界を変えた言葉 / スティーブ・ジョブズ 自分を貫く言葉」

2011年10月5日に惜しまれつつもこの世を去ったスティーブ・ジョブズ。アップルコンピュータ社の創業者として、また中興の祖として、偉大な業績を残した人物でした。CEOであると同時に、技術者でもあったジョブズは、ビジネスライクな言葉よりもアーティスティックな名言を多くこの世に遺しています。ジョブズがどんな生き方を志して、どんな心構えで仕事に臨んでいたのか。この2冊の名言集で分かります。

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スティーブ・ジョブズ遍歴

☆ スティーブ・ジョブズについて 1955年生まれのアメリカ・カリフォルニア州出身。 1972年、リード大学に入学するも、まもなく中退。 1974年、ゲーム製作会社「アタリ」に入社。 1976年、スティーブ・ウォズニアックと開発したコンピューター「Apple?」を発売。 1977年、アタリを退社し、スティーブ・ウォズニアックらとアップルコンピューター社を設立。「Apple?」を発売し、これが大ヒットとなる。 1984年、「マッキントッシュ」を発売するも、アップル社は初の赤字転落。 1985年、社内の対立から、ジョブズはアップルを退社。会社ネクストを立ち上げる。 (ピクサーを買収し会長に就任したのもこの時期の出来事です。) 1996年、アップルがネクストを買収する形でアップルに復帰。 1997年、社内の対立を制して暫定CEOとなる。 1998年、「iMac」を発売。 2000年、正式にCEOに就任。

その後のジョブズの活躍は知ってのとおり、「iPod」「iTunes Music Store」「iPad」「iPhone」など、革新的な新製品を世に出し続けてきました。 しかしその業績の裏で、病魔がジョブズの体を蝕み、2011年10月5日に帰らぬ人となりました。

このような経歴を持つジョブズですが、自伝や評伝を一冊でも読んだ人なら分かるとおり、ビジネスマンとしては、「変わり者」だったようです。というより、生粋の技術屋であり、アーティストであったのです。評伝には、時には子供のように激昂するジョブズの様子なんかが、描写されていました。しかしその一方で、ジョブズの理念は彼の顧客にとって受けがよく、一部の熱狂的なファンを「アップル信者」「ジョブズ信者」という言葉で表すこともありました。

そんなスティーブ・ジョブズが、生前、僕らに遺した言葉を集めたのが、今回紹介する2冊の本です。

世界を変えた言葉」より

本書は経済紙のインタビューや、講演・会談などからジョブズの名言をチョイスしています。「世界を変えた言葉」は主に、仕事面におけるジョブズの理念や構想・アイデアを、「自分を貫く言葉」は主に、ジョブズの人生観を表す言葉を選りすぐってあります。自伝や評伝に比べ、情報量は少ない名言集というスタイルですが、その分、直感的に心に響きやすく、なにより読みやすく構成されています。

本の中から、いくつか名言をピックアップしてご紹介していきましょう。

「世界を変えた言葉」より

●問題を焼き払ったところで活路は見出せない。  必要なのは革新だ。  アップルはそうやって栄光を手にしたのだし、そこに戻る道もまた革新しかない。

●アップルに必要なのはコスト削減ではない。革新だ。

●リーダーとフォロワーを分けるのは、イノベーションである。

革新=イノベーションについての言葉を3つチョイスしました。ジョブズの強いこだわりを感じます。そして、これがジョブズの最大の強みでもあったと思います。

●僕らがしたいのは、今までに作られたどんなモバイル機器よりも  ずっと高性能で非常に使いやすい、画期的な製品を作ることだ。  それが、iPhoneだ。わかったかな?  つまり我々は電話をもう一度発明するつもりなのだ。 有名な言葉ですね。先ほどのイノベーションと合わせて、アップルが成功を収めた企業理念を分かりやすく、そして情熱的に教えてくれる言葉です。

では、ジョブズが革新的な製品を生み出せたのはなぜでしょうか? その答えの一つが次の言葉です。 ●創造力とは、単にモノとモノを結びつけるだけのことだ。  創造的な人々は、どうやって創造しているのかと聞かれると、  少し後ろめたい気持ちになる。  なぜなら、彼らは実際に創造をしたわけではなく、  ただ何かが見えただけだからだ。  しばらくすると、彼らにはそれが自明な事に思えてくるのだ。  というのも、彼らには自分自身のそれまでの経験を結びつけて、  新しいモノを作ることができるからだ。 そんなアイデアマンのジョブズが日本人を評価した言葉も残っています。 ●日本は非常におもしろい。  何でも真似をするという人もいるが、今はもうそんなことはないと思う。  日本人は、再投資をしているんだ。すでに発明されたものを手に入れ、  それを理解するまで徹底的に研究する。  だから、元々の発明者よりも、よっぽどよくわかってしまうこともある。 天才的なセンスで数々の業績を残したジョブズですが、社内外の対立も多く、人間関係は決して良好だったとは言えません。また、自分で創業したアップルを追い出されるという不幸もありました。そんなジョブズは、心の強い人間だったんでしょうか? ●It分野の起業は大流行だが、問題は継続できる人がいないことだ。  分かる気はするけどね。誰かを解雇したり、何かを中止したり、  難しい局面に対処しなければならなくて、失望や苦痛に苛まれることばかりだから。  でもそんなときこそ、自分の真の姿や価値観を見つけられるチャンスなんだ。

ジョブズだって辛いものは辛かったんですね。

「自分を貫く言葉」より

●死に近づきつつあると意識すれば、何かにしがみつこうとせずにすむ。  誰だってすでに裸なんだ。ならば、自分の心に従わない理由はない。

 一つのことに集中して取り組むなら、  その間は、あり得たはずの別の人生をあきらめなければならない。  意義のある何かを成し遂げたいのなら、  そのことしか目に入らないひたむきさで、突き進まなければならない。  ビジネスマンではなく、クリエイティブな人間になりたいのなら、なおさらだ。

「世界を変えた言葉」では、ジョブズの主に仕事面、経営者としての理念や、ビジネスシーンを俯瞰した名言が収録されています。

もう一方の「自分を貫く言葉」では、ジョブズの人生観や、技術者としての信念を表す名言が収録されています。

どちらがオススメか、は、人によって違うと思うので一概には言えませんが、まずは書店でパラパラとめくって、あなた自身の目で確かめてみて下さい。

スティーブ・ジョブズ 世界を変えた言葉

なぜ“本当にやりたいこと”なのに先延ばしにするのか?(ひとつ前の新刊ラジオを聴く)

スティーブ・ジョブズ 世界を変えた言葉 / スティーブ・ジョブズ 自分を貫く言葉

スティーブ・ジョブズ 世界を変えた言葉 / スティーブ・ジョブズ 自分を貫く言葉

2011年10月5日に惜しまれつつもこの世を去ったスティーブ・ジョブズ。アップルコンピュータ社の創業者として、また中興の祖として、偉大な業績を残した人物でした。CEOであると同時に、技術者でもあったジョブズは、ビジネスライクな言葉よりもアーティスティックな名言を多くこの世に遺しています。ジョブズがどんな生き方を志して、どんな心構えで仕事に臨んでいたのか。この2冊の名言集で分かります。