書籍情報 「世界をよくする仕事」で稼ぐ
― 三菱商事とドリームインキュベータで学び、サイバーエージェントに1億円で事業を売却した僕の働き方

定価: 1,575円
著者: 大澤 亮
出版社: プレジデント社
ISBN-10: 4833450623
ISBN-13: 978-4833450621

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プロローグ 地球に貢献する仕事とは
1 チャレンジ 挑戦と失敗を繰り返そう
2 海外へ 想いを実現する方法を探す
3 就職 貧しい人のために働きたい
4 起業 ITブームに乗る
5 新事業 成功するための3つの原則
6 再就職 コンサルティング会社で修業を積む
7 転職 会社経営に挑戦する
8 挫折 右脳型社員のマネジメント
9 成長と成功 僕が学んだリスクのとり方、運のつけ方
エピローグ 種を撒き続ける

著者インタビュー

― 大澤さんの著書『「世界をよくする仕事」で稼ぐ』(プレジデント社/刊)についてお話を伺えればと思います。まずは「世界をよくする仕事」の場である株式会社ピース トゥ ピースを立ち上げた理由について教えていただきたいです。

大澤 : 原点ということでいえば、商社に勤めていた時にアフリカでODAに携わっていたことだと思います。
途上国支援の形としてよくあるのが、ODAの仕組みとしてよくある「G-to-G(政府から政府へ)」なんですけど、僕はもっと小さな個人の思い(Piece)を困っている人に届けて平和(Peace)につなげられる仕組みを作りたかったんです。
もちろん、「思い」といっても実際はお金やモノで支援をするわけですが、それを募金活動のような形で行っても長くは続かないんじゃないかというのがあって、もっと楽しく、自分の好きなことを通じてそういった支援ができないかと考えた時に、「日本人や先進国の人が大好きなもの」というカテゴリーで「ファッション」というのが思い浮かびました。
ファッション業界って市場規模が10兆円くらいあってとても大きいんですけど、ムダが多いんです。デザイナーがどんどん新しいデザインの服を作っても、売れ残ったらどんどん捨てられてしまう。そういう状況をなんとかして支援と結びつけられないかということで 「Piece to Peace(ピース トゥ ピース)」を立ち上げました。

― 途上国を支援したいという気持ちを持ち始めたのはいつ頃のことだったのでしょうか。

大澤 : 母親がクリスチャンで、やはり途上国支援のための募金活動をしているのを小さい頃から見ていたんですよ。でも、ある時にその募金したお金が使われるような国に行ったことがあるのか訊ねたら、行ったことがないというわけですね。
行きもしないのに、「恵まれない子どもたちがいるから」といって募金をするって、何だか違和感があるじゃないですか。だったら自分が行ってみようと思ったことがODAに関わりたいという気持ちにつながったというのはあります。
それと、昔の彼女が国際協力に熱心で、働くのならば何か社会のためにならないと意味がないという考え方だったんです。そういう意味では、いつからというよりはいろんな人との出会いに影響を受けて少しずつ変わってきたのかもしれません。

― 従来のようなNPO法人でなく、株式会社として利益を上げながら社会貢献をしているという「ピース トゥ ピース」ですが、そのビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか。

大澤 : 「ピース トゥ ピース」では、途上国支援に賛同してくれる海外のファッションブランドの商品を日本で展開しているのですが、これには大きく分けて二通りあります。
一つは「インポート」といって、単純に輸入して小売店に卸すというものです。
もう一つが「ライセンス」というものなのですが。これはブランドの権利を借りるような形で、ブランドのデザインや風合いなどはこちらで日本向けに企画しますというものです。やはり海外と日本では、消費者の好みが違いますし、そもそもサイズが全然違うので日本向けにアレンジする必要があるんです。
うちで扱っている一番大きなブランドが「オムニピース」というロサンゼルスのブランドなんですけど、これなどは殆ど「ライセンス」でやっています。
だから、仕入れという意味でいえば、「インポート」と「ライセンス」の二種類があるということですね。これを日本で販売していきます。

― 販売方法はどうなっていますか?

大澤 : まず、卸販売があり、これは、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズ、アーバン・リサーチ、エリオポールといったセレクトショップに商品を卸して売上・利益を得るという形。 次に、委託販売というのがあって、これは主にデパートなんですけど、端的にいえば「場所貸し」ですね。売り場の一区画を貸しますから好きに使ってください、というものです。売上の一部をデパートに場所借り料金として支払い、残りを頂く仕組みです。
卸にしろ、委託販売にしろ、売上の一定%を寄付します。 これらの売り方と、あとは通販もやっています。
もう一つは「サブライセンス」です。さっき言ったように「ライセンス」というのはあるブランドの権利を有料で借りるものなんですけど、「サブライセンス」はその権利をさらに他の会社に売ることです。
たとえばうちは「オムニピース」の権利を借りて主にTシャツを作って販売しているんですけど、別の会社が「オムニピース」の帽子を作りたいと言ってきた場合に、その帽子をデザインして売る権利を、その会社に売るわけです。その売上のいくらかを「オムニピースに戻して、さらにいくらかが寄付される、ということもやっています。

― なるほど。

大澤 : だから、企画会社という側面が強いんです。たとえば「TABLE FOR TWO」っていうNPOがあって、そこもアパレルの物販をやっていて、その製造企画をうちでやっていたんです。それで、以前にセレクトショップの「JOURNAL STANDARD」と組んで「TABLE FOR TWO×JOURNAL STANDARD」ということで、専用の商品を作って販売したことがあります。それが一つ売れるごとに20円が寄付に回る。
このように、世の中のためになることを、一般的なビジネスのスキームを使ってやっています。

― 消費者の方は単純に格好いいから買うわけですが、それが社会貢献に結びつくというのはすばらしいですね。

大澤 : そうですね。ただ、若干の問題として、こちらの思いが届かないというのがあります。商品を卸した先のお店では「社会貢献」とか「寄付」について謳わないで売るので、消費者の方はそういったことを知らないままなんですよ。

― たしかに、売り場で大っぴらにそういったことを謳うのも、ちょっと違和感があります。

大澤 : そうなんですよ。そういうことを「イヤらしい」と感じる日本人の気質もありますし、純粋にファッションを売っているのであって「寄付」や「社会貢献」と売りものにしたくないというお店の思いもあります。うちとしても、そこまで押しつけがましいやり方はしたくありませんしね。
だから、「社会貢献」ということでいうと、モノを売るだけでは全然足りないんですよね。多少の寄付はできるでしょうけど、もっと「コト」を広めないといけない。
それで、個人であれ会社であれ「良いコト」を広めるプラットフォームとして考えついたのが、「人生のヒケツを教え合う場所 shAIR (シェア)」です。
今は、何か(成功体験やスキルなど)を伝えたい、教えたいという個人に、何かを教えたい時のプラットフォームとしてご利用頂いていて、既に参加者数も合計数千人になっています。
モノだけでなく、こうした「コト」があると、消費者は参加しやすいし、良いことは広まりやすいと感じています。

― 大澤さんご自身のことについてもお聞きしたいのですが、「ピース トゥ ピース」は大澤さんにとって5社目となる会社です。仮に、今よりももっと大きな社会貢献ができるアイデアを思いついたとしたら、さらに別の会社を立ち上げたりということもあるのでしょうか。

大澤 : 今のところさきほどのshAIR含め、「ピース トゥ ピース」で自分のやりたいことができているので、何か新しいことをやるにしてもこの会社の中でやると思います。ファッションや教える・学ぶ人向けのプラットフォーム事業だけでなく色々なプロジェクトがある面白い会社にしていきたいですね。

― さきほど、好きなこととして「ファッション」を挙げられましたが、これまでにアパレルの会社にいたわけではないんですね。

大澤 : そうですね。僕のキャリアの特徴なんですけど、まったく脈絡がないんですよ。今の会社を立ち上げる前は「土屋鞄」にいたんですけど、鞄の業界はまったく知らずに入りましたし、その前のコンサルティング会社(ドリーム・インキュベータ)にしてもそうでした。それまでとは違うカテゴリの会社に行くのが面白いんですよね。
当然、最初は苦労するわけですけど、今振り返ると糧になっていることも多いです。幅の広い経験をしてきたことは、今の会社での意思決定に生きていると思います。

― 業界が変われば、働く人のタイプも変わると思いますが、どんな業界でも、どんな場所でも周囲の人と上手に付き合っていくためのコツがありましたら教えていただけませんか。

大澤 : 僕は昔からあまり人から嫌われたことがないんですね。だから自分の考えていることが全ての人に当てはまるかはわからないのですが、一つは絶対にサボらないというか、常に会社のことを考えることです。当たり前のことですが、会社のために努力して利益を出そうという姿勢がある人が嫌われるということはまずありませんから。
それと、ネガティブなことを言わないということも大事です。悪口はもちろんですし、否定的なことを言うのもいいことではありません。たとえば無理な仕事が回ってきたとしても「できません」と言うのと「○○ならできます」と、条件をつけてでも肯定的な返事をするのでは、印象はまったく違います。

― これまでに働いていたそれぞれの会社で、得たもの、学んだことを挙げるとしたらどのようなものになりますか。

大澤 : 最初に入った商社では、自分のレベルの低さに気づいたということに尽きます。
ODAは政府が政府に対して支援をするものですけど、現場ではJICAや大使館、民間企業も関わってきます。商社は各団体の間に入るので、経営的な視点とコミュニケーションスキルは絶対欠かせない。そういうところで自分の能力が全然足りていなかったんです。
商社を辞めたあとは、慶応大学のビジネススクールに行きながら起業したのですが、すぐに資金がショートしそうになってしまいました。そんな時に、ベンチャーキャピタルから6000万円の出資の話があったんですけど、その契約の寸前に事業を3500万円で買いたいという申し出がアメリカの会社からありました。結局出資の話は断って売却する方を選んだんですけど、すごく反省の多い体験でしたね。

― どんな反省がありましたか?

大澤 : 事業を起こすタイミングが早すぎたんです。その事業というのが2000年に立ち上げた証券会社の比較サイトだったんですけど、広告収入をモデルにしていたんですね。当時はまだバナー広告がありませんでしたし、「ネットなんかに広告を出せるか」という雰囲気もありました。それもあって、アクセスはたくさんあるのに収入につながらないということが起こってしまいました。アメリカではすでにネット広告が当たり前になっていたんですけど、日本はまだそういう時期ではなかったんです。
だから、事業を始めるタイミングって、もちろん遅いのはダメなんですけど、早すぎる、もしくはマネタイズまで時間がかかる事業を小資本の会社が実行してもうまくいかないんです。自分たちの計画が甘すぎたというのもあるんですけど。

― その次も、起業されたんですよね。

大澤 : 中国茶のネット通販事業を始めました。これも一年くらいは苦労したんですけど、月の売上件数も数件から数十件、数百件、数千件・・・とだんだんと伸びていってきちんと利益が出るようになりました。ただ、そこで迷いが出てしまったんです。

― 迷いというのは?

大澤 : 結論から言うと、この事業に対して残りの人生を全て注ぎ込めるのかということを考えた時に、イエスと言えない自分がいたんですね。
赤字の時は必死にやっていたんですけど、利益が出るようになったことで考える余裕が生まれたので、この事業をもっと伸ばす方法を考えた時に、ネット通販だけじゃなくてオフラインもやらないとダメだとなったんです。でも、それに本気で情熱を持って取り組めるのかというと、そうではなかった。そういう迷いだったのですが、それも今となってはいい経験になっています。

― その次がコンサルティング会社の「ドリームインキュベータ」ですね。

大澤 : そうですね。ここではそれまでの経営とは全く違う視点からの「経営の視点」を学んだと思います。とにかく思考の深さが違った。
ある事業を始める時に、普通なら6割方行けそうなら実際に始めてしまいます。小規模で始めてみて、うまくいきそうだったら大きくしていく。
でも、コンサルティング会社って成功する確率極限まで高めて、計画を綿密に作り込むわけです。失敗する可能性があるのなら、その理由を調べ上げてもう一度練り直す。
インプット・アウトプットの仕方から時間の使い方まで、全てが勉強でした。

― 確かに、全然脈絡のないキャリアですね。

大澤 : その次が「土屋鞄」です。これは中国茶の事業をやっていた時に行っていた勉強会で、今の土屋社長と知り合ったのがきっかけです。色々と相談に乗っているうちに「うちに来ないか?」と言っていただいたという流れです。ここで、未だかつてなかったような挫折を経験し、またファッション業界・バッグ業界の大きな課題にぶちあたり・・・
そして、次が今の「ピース トゥ ピース」ですね。

― 今は、社会貢献したいという思いを持って、それを起業という形で実現しようとしている学生も増えています。そういった方々にアドバイスがありましたらお願いします。

大澤 : 伝えたいことは一つで、まずはビジネスの勉強、経験をしなさいということです。
起業の勉強というよりは、ビジネスの仕組みについてですね。これがわかっていないと、昔の僕のように思いだけはあるのに何も実現できないということになってしまいます。ビジネスを理解してから社会貢献を目指しても遅くないはずですから。

― 本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

大澤 : 男女問わず20代、30代の意識の高い人でしょうか。働くこと、仕事、ビジネス、キャリアに関しての意識が高い人たち。
僕は何回か起業をしていますが、この本は起業のための本ではありません。自分がこれまで経験してきたことや失敗談がたくさん盛り込まれているので、読んでくださる方がその失敗から何かを学び取ってくれればいいなと思っています。
起業に限らず何か新しいことを始めようと思っている人に読んでもらいたいですね。

― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。

大澤 : 二つあります。一つは、何か小さくてもいいから、チャレンジすることの大切さです。チャレンジしない人は会社にいてもどこにいても魅力的じゃなくなっていきますからね。
これからは、個人がどれだけ活躍できるかという時代です。これまでは、40代になってからの転職は厳しいと言われてきましたけど、問題は年齢じゃないんです。うちの会社にも40代、50代の人がたくさん面接に来ますけど、チャレンジできて魅力的であれば採用したいと思っています。
チャレンジをし続けていると当然失敗もするわけですけど、失敗から学べることって物凄く大きいし、自分の糧にもなります。だからこそ小さくてもいいのでチャレンジをしてみてほしいです。
もう一つは「運」についてです。自分のキャリアを振り返ると、すごく「運」に恵まれてきたなと思います。「運」というのは主に人との縁なんですけど、こういうことが個人のキャリアや人生に与える影響は大きいものです。その運をどうやってつけるのかを、たくさん勉強して自分のものにすると、人生が変わるんじゃないかなと思っています。この本でも自分なりのやり方を4つくらい書いているので、参考にしてもらえたらうれしいですね。
こうした「運」をあげる、そのために人の縁をつくる・つなげる、という意味でも先ほど話したshAIRは多くの20代、30代の方々には使って頂きたいですね。

人生のヒケツを教え合う場所 shAIR (シェア)
http://www.shair.co.jp/

一般的なスクール等では教えてくれない大切なコトを個人から学べ、かつ貴重な縁と出会える場です。
僕もちょいちょい起業の経験や新しいコトをはじめることの大切さなどを教えてもいますすし、学びたいことのために一ユーザーとして参加もしています。
一方的に教えるだけ、とか、学ぶだけとかって人生ではありえなくて、両方あっての人生だと思うので。
(インタビュー・記事/山田洋介)

「世界をよくする仕事」で稼ぐ
― 三菱商事とドリームインキュベータで学び、サイバーエージェントに1億円で事業を売却した僕の働き方

定価: 1,575円
著者: 大澤 亮
出版社: プレジデント社
ISBN-10: 4833450623
ISBN-13: 978-4833450621

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