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本を出したい人の教科書 ベストセラーの秘密がここにある

定価: 1400円+税
著者: 吉田 浩
出版社: 講談社
ISBN-10: 4062189070
ISBN-13: 978-4062189071

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インタビュー

■本を出したことがないのに本をプロデュースする人たちがいる!? ――まずは吉田さんのお仕事である「出版プロデューサー」についてお話をうかがいたいと思います。

吉田:一言で説明をすると、日本中にいる隠れた作家、才能、企画を探し出して、日本中出版社に売り込むという仕事です。私は30年前からこの出版プロデュース業を行っていますが、「出版プロデューサー」を名乗ったのは、私が最初です。

――これまで何冊の本をプロデュースされてきたのですか?

吉田:この30年間でだいたい1600冊くらいの出版をお手伝いしてきました。
また、私自身も200冊の本を書いてきました。すべて、商業出版で、印税がもらえる出版です。私が出版プロデューサーを名のってから、500人くらいが出版プロデューサー、出版コンサルタントを名乗って、さまざまな出版セミナーをやってきたと思います。
私の強みは、たぶん、その中でも一番、出版社とのコネクションを持っています。企画書を売り込む先として500社、1500人くらいの編集者がいます。
すべて、編集者の個人アドレスに企画書を送って企画を採用していただいています。

――売り込む先が500社あるというのもすごい数ですが、出版プロデューサーを名乗る人が500人もいるというのも驚きですね。

吉田:本の出版点数が増えて、ヒットが増えれば、書店さんも潤いますし、出版業界が活性化するので、全体的には歓迎されることだと思います。しかし、出版プロデューサーの中には、1冊も自分の名前で本を出版したことがない人がいます。そういう方の中には、高額な予算をいただいておきながら、本が出ないという、トラブルも多くなってきました。
医者にたとえるならば、医師免許を持っていない人が「うちで安く手術をしますよ」と言っているようなものです。また、水泳でいうのであれば、コーチが「私、1回も泳いだことがないんです。でも、泳ぎ方を教えますよ」と言っているのと同じです。
1冊の本を出版するまでは、数え切れないくらいの苦労があります。それを1回も乗り越えたことのない方が、果たして、本当に「いい本」を作れるのか疑問です。
私は童話や絵本を含めて200冊、自分で自分の本を書いてきましたが、200冊とも悩み、苦しみました。その苦労を知らずして、出版プロデュースはできないと思いますね。

――本を出したことがあるかどうかが、信頼できる人かどうかの一つの見分け方になるのですね。
出版プロデューサーの仕事は、隠れた才能を発掘することだと先ほどおっしゃいましたが、「著者探し」というのは出版業界の大きな課題になっていますよね。

吉田:まさに、その通りです! 今は、ベストセラーを出した著者に出版社が行列をつくって並んでいるような状態です。しかし、私は決して行列に並びません。私がプロデュースをするのは、「初めて本を書く人」「今まで一度も本を出したことがない方」なのです。

――では、吉田さんはどのように著者を発掘しているのですか?

吉田:私が会長を務めているNPO法人「企画のたまご屋さん」では、日本全国から本の出版企画が集まり、それを毎週月曜日から金曜日まで1本ずつ、1000人近くの出版社の編集者にお送りするという事業を展開しています。
毎年、どのくらいの企画が送られてくるかわかりますか?
年間1000本です。ただ、年間で200本くらいしか売り込みができないので、800本の企画書はボツになってしまうんです。これは無料で企画を売り込んでいるので、ボツになるのは仕方がありません。
私個人は、日本を代表する経営者の本を出版プロデュースしています。
会社の社長から出版の依頼を受けて、毎日、企画書を作ったり、売り込みをしたり、本の販促活動をしています。
私個人が行っている「出版コンサルティング」は「月に3人まで」と決めています。 本の販促までやっているので、それ以上の本作りを進めると、クオリティが下がってしまうのです。これは平均ですが、毎年、私が出版プロデュースをした本が36冊出ています。

――ちょうど月3冊ですね。

吉田:そうなりますね。私がプロデュースをした本は、売れる企画に仕上げて、有名な出版社に売り込みをします。また、商業出版なので、著者は印税を必ずもらえます。
最近お手伝いした本では、『ねこ背は治る!』(自由国民社)という本が、3年間で37万5000部のロングセラーとなりました。ベストセラーは、年間300冊くらいしか出ないのですが、毎年、その中の2~3冊は、私が出版プロデュースした本です。

――今おっしゃった、商業出版と自費出版の区別がつかない方もいらっしゃいます。この違いについて教えて下さい。

吉田:自費出版から説明をすると、基本的に書店に並ぶことはほとんどありません。大手の出版社でもほとんどが返品扱いにされるそうです。
また、1冊目を自費出版にしてしまうと、作家生命はほとんど終わったも同然です。 「まともな出版社から出せないから自費出版したんだ」と周りからレッテルが貼られてしまい、「逆ブランディング」になるんです。
一方、商業出版は印税がもらえますし、出版社も宣伝してくれます。全国の書店でも売られます。自費出版には自費出版のメリットもあります。否定はしませんが、出版をするならば、必ず、商業出版を選んでください。

――書店に並ばないというのは、すごくショックですよね。

吉田:結局、自分で全部、本を買い上げることになります。出版社によっては、「共同出版」とか、「企画出版」とか、「企業出版」とか、「カスタマイズ出版」とか、名前を変えていますが、著者が多額な費用を支払うという点では同じです。

小さい出版社でも商業出版をしているところは、何年もかけて大事に本を売ってくれるところがあります。それは著者として嬉しいことですよね。小さくてもよい出版社はたくさんあります。小さな出版社は「売る力がない」と誤解しないでください。

――今回、吉田さんが執筆した『本を出したい人の教科書』(講談社)は、本の作り方、出版業界の裏側を勉強する上で大変参考になる一冊でした。ここまでベストセラーの作り方を明かしていいのか、と思いました。(笑)
そこでお聞きしたいのですが、やはり著者でも編集者でも、ヒットメーカーは限られてくると思います。なぜヒットを出せる人とそうではない人に分かれてしまうのでしょうか?

吉田:空手や柔道に「型」があるように、企画書作りにも「型」があると思います。
私がこの本の中で、ベストセラーの作り方は「タ行5段活用」だと言っています。
タは「タイトル」、チは「著者」の知名度や実力、ツは「ツキ」、テは「テーマ」、トは「トレンド」(時代の波)。この5つからベストセラーが生まれます。これが「型」です。
私の場合、この戦法としての「型」を300種類くらい持っています。
さりに、その組み合わせは、数万種類、数百万種類なります。
ですから、まず、本を出したい方は、その「型」を学んでください。 「型」とは出版のルールであり、売れる本を作る方法論です。
「型」がわかると、それに照らし合わせて、その本が売れるかどうかが分かるんです。

たとえば、タイトル(書籍名)作りにもルールがあります。メインタイトルは0.3秒で分かること。タイトルの役目は「視覚効果」です。本屋さんで積まれている本をパッと見たとき、タイトルが認識できる時間は、たった0.3秒です。
次に、サブタイトルは3秒でわかること。サブタイトルの役目は「心理効果」です。
私の本のタイトルは「ベストセラーの秘密がここにある」です。これは本を買わせる導線となります。「この本は私のために書かれたんだ」と思わせれば成功です。
帯(キャッチコピー)は「イメージ効果」です。
帯は、表紙の中で最も文字が多いゾーンです。ここは30秒以内で読めるようにしてください。
出版にはいろいろな「型」があります。この「型」を無視してしまうと本が売れないし、書店からもすぐに消えてしまいます。

――そういえば『本を出したい人の教科書』の装丁はとてもシンプルできれいですね。

吉田:この本の装丁は重原隆さんという、今、最も実力のある装丁家にお願いをしました。講談社から出版された『スティーブ・ジョブズ』の本も重原さんの装丁です。
私から、「10年後も古びない装丁、10年後も斬新な装丁にしてほしい」と、かなり無茶なリクエストをしたら、その通りに作っていただきました。また、背表紙のところにもかなり心ニクい演出が施されているので、手に取ったら、ぜひ、その演出を探してください。

―この本は「ベストセラーを目指す人」向けというかなりニッチな本だと思っていたのですが、読んでみるとそうではなく、企画マンや広告マンなど、多様な業種、職種の人でも読める内容ですね?

吉田:本は、だれもが自分の夢をかなえる「戦略」です。これは、実は、会社の経営者が売上を伸ばす「戦略」と全く同じなんです。
まず、経営者にとって出版は「経営課題を解決できる力」があります。特に、どの会社でも一番困っている集客とセールスが、本によって一瞬で解決できてしまいます。
なおかつ、1冊の本は「10人の営業マンに匹敵する」ので、見込み客に配るだけでもお客さんがどんどん増えていきます。経営者にとって、本を出しているという信用力はとても強いんですね。
同じことが個人にも言えます。出版によって、だれでも、どんな夢でもかなってしまいます。有名になりたい、講演会をしたい、周りからモテたい、先生と言われたいなど、どんな個人的な夢でもかまいません。本によってその願いかかなうのです。
ですから、この本の中には、戦略や戦術、USPについて、コアコンピタンスの見つけ方、ポジショニングなど、実に様々なマーケティング理論、ブランディング理論が描かれています。どんな業種、職種の人が読んでも、「なるほど」と思うことがたくさん書いてあると思います。

■今、世の中を騒がせている「ゴーストライター」について ――吉田さんのもとには、本を出したいという多くの方が訪れると思いますが、その中には困ってしまう人もいるかと思います。そういう方は周りにいますか?

吉田:そうですね。(笑) たくさん、いらっしゃいます。一番よくあるパターンは、私が主催する出版記念パーティーに、分厚い企画書を持ってきて、手当たりしだい編集者に配る方です。これはすごく迷惑なことです。編集者は企画書を粗末に扱えないですよね。また、その場で手渡されてもカバンもないのでとても困ります。
まずは名刺交換をして、「会社あてに企画書を送ってもいいですか?」と聞いたうえで送ってください。企画書の売り込みには、この正しい手順を踏んでほしいです。

――確かに、それは迷惑なことですね。

吉田:ふだんの生活が非常識な人は、それで、全然、かまいません。人と違って、ある程度とんがっていないと、いい本を書くことはできません。
ただ、常識や礼儀は持ち合わせていないと周りが迷惑します。

――話は変わりますが、吉田さんが思う「いい本」の定義について教えていただけますか?

吉田:『本を出したい人の教科書』(講談社)の本の中に書いていますが、「いい本」とは、「読者を幸せになり、著者がもっと幸せになる」。これが定義です。
これはピーター・F・ドラッカーの『マネジメント』の考え方によるもので、彼の考えを意訳すると「企業のミッションとは、幸せなお客様の創造である」と言っています。
そこから考えると、私は「出版の使命とは、お客様である読者を幸せにすることだ」と思うのです。しかし、本を書く上で一番苦労するのは著者ですよね。だから、私は、著者が一番幸せになってほしいのです。

――ここからは、最近の出版業界のトピックについて吉田さんにお話をうかがえればと思います。まずは、電子書籍ですね。今、AmazonやKindleなどを通して、誰でも自由に出版ができるようになっています。いわゆる「セルフパブリッシング」というものですが、30年間、商業出版のお手伝いをされてきた吉田さんはどのようにお考えですか?

吉田:私が、電子書籍で成功していると思うのは、「ダイレクト出版」だけですね。あの出版社はマーケティングをしっかりしている。でも、その他のほとんどの電子書籍は「電子の海の藻屑」と化していると思います。
紙の出版と比べて圧倒的に信用度が低く、そのクオリティもインターネット上のブログの記事やメルマガの寄せ集めと変わりません。電子書籍は、直接、手にとって、中身をパラパラとめくって見ることができないのもデメリットでしょう。電子書籍は製作費が安いという反面、情報価値の低いものが生まれます。何十万冊、何百万冊、電子書籍が生まれても、情報価値が低いものは売れません。売れないものは「電子の海の藻屑」になると思っています。

――もう一つ、最近「ゴーストライター」という言葉が話題になりました。 佐村河内守氏の場合、自作の曲をゴーストライターが書いていました。また、ホリエモンについてもゴーストライターを雇って小説を書かせたことが話題になりました。
その一連の騒動の中で、ゴーストライターと出版は切っても切れないという話も出てきています。吉田さんはゴーストライターという存在について、どのようにお考えですか?

吉田:出版は、ゴーストライターによって書かれてもいいジャンルと、そうではないジャンルに分かれます。たとえば、ビジネス書はゴーストライターが書いてもいいと思いますし、小説はNGです。その線引きは、「ビジネス」か「芸術」の違いだと思います。
ビジネス書は、著者のノウハウを教える本です。「1次情報」を持っているのは著者であり、ゴーストライターはあくまでその内容を読者に伝えるためにわかりやすく文章を書いてゆきます。著者が自分で学んだノウハウや、語り下ろしや、講演会の内容であれば、ゴーストライターを使ってもまったく問題ないと思います。芸術の場合、その人にしか書けない魂の叫びが作品になるので、そこでだれかに代筆してもらうのは、道義的におかしいですよね。

――ゴーストライターという職業はあまりスポットが浴びない世界ですが、非常に厳しいという話をよく聞きます。

吉田:ゴーストライターの世界も、一握りの「ベストセラーを生み出せる書き手」と、そうでない人たちに大きく分かれています。私は30年間、本づくりをしてきた中で、のべ4500人のスタッフと一緒に仕事をしたのですが、ライターは1000名くらいいました。
しかし、その中で、ベストセラーを書けるライターは30人くらい。残りの970人は、年商200~300万円くらいのとても苦しい生活をしています。
昔、女性ライターさんが私の出版セミナーに来たとき、「今の仕事で一番大切なことは忍耐です」と発言しました。私が「忍耐って、どういうことですか?」と聞くと、「仕事が入ってこないときに、気が狂わないように我慢することです」と言われてびっくりしました。
その女性ライターさんは、2ヶ月も3ヶ月も、ひとつも仕事入ってこないことがあるそうです。そういうときに、正気を保つのは、確かに大変だと思います。

――吉田さんはたくさんの本を読まれていらっしゃいますが、その中でも影響を受けた本を一冊あげるとすると?

吉田:私は童話作家としても活動を続けているのですが、もともとはSF作家になりたかったんです。だから、ロバート・A・ハインラインのSF小説のファンでした。最初に読んだのが『夏への扉』で、とても感動しました。彼の書いた『宇宙の戦士』は、アニメの『ガンダム』の原作になった作品としてよく知られています。
また、安部公房の作品は、高校時代に全部読みました。不条理だけれど、異常に面白いんです。『水中都市・デンドロカカリヤ』という作品が一番のお気に入りです。

――『本を出したい人の教科書』(講談社 1400円)の本を、どのような方に読んで欲しいとお考えですか?

吉田:はい、これから本を出したい方8割、すでに本を出している方2割です。
すでに本を2~3冊出版している方は、自分の本づくりが間違っていないかチェックしてください。

――確かにこの本は、「初めて本を書く人」だけでなく、「2~3冊出したけど売れなかった」という人にとっても読んでもらいたいですね。
ベストセラーになる秘訣がぎっしりと詰まっているので、とても参考になりそうです。
では、最後に、このインタビューを読んでいる読者の方にメッセージをお願いします。

吉田:本はだれでも書けるということです。
ほとんどの編集者が「本を出すのは難しい」と言います。
それはある意味では正しいのですが、本を出したい人の権利や夢を最初から否定していることになりますよね。
出版はマイナスがプラスに逆転する唯一の自己表現です。
この本の中にも書きましたが、20年間近くクレーム処理の仕事をしていたおじさんが、自分の仕事のエピソードを本にまとめたところ、60万部くらい売れて、そのおじさんは、自分の仕事に誇りを持てるようになりました。
どんな仕事でも、プラスに逆転する価値が絶対あるんです。
この本は、ベストセラー作家の本田健さんが出版プロデュースしてくれた本です。
本田健さんが、本書の帯で伝えているメッセージはそれが言いたいのです。
「だれの心のなかにも1冊の本が眠っている」のです。
だれでも本は書けます。
本を書いた人は「人生の主人公」です。
本を通して、自分の人生の主人公になってほしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
(了)

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定価: 1400円+税
著者: 吉田 浩
出版社: 講談社
ISBN-10: 4062189070
ISBN-13: 978-4062189071

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