■借金、病気、会社からの解雇通知、そして愛する息子の入院…どん底から再起のきっかけになったことは?
――まず、新著『幸せブーメランの法則』を執筆した経緯からお聞かせください。
望月:この『幸せブーメランの法則』では、自分が誰かに与えた影響が自分にも返ってくるんだよということを伝えているのですが、実は僕がこの法則自体を知ったのはもう30年以上前のことになります。
――そんなに以前から知っていたのですね。
望月:ただ、本格的に実践しはじめたのは、22、23年くらい前です。そのときは自分のメンターから実践してみなさいと言われ、1年間、周囲の人たちに与え続けたのですが、まったく返ってこないんですよ(笑)与えるだけのまま体調を崩し、借金もどんどん膨らんでしまって、最終的には会社もクビになって、人生のどん底に陥りました。
でも、この法則は、どんな自己啓発書でも必ず書かれているもので、人生の黄金法則の3本指に入るくらい有名です。自分でも何かおかしいと思って、改めて周囲の人たちに聞いてみると、この法則について4つの勘違いをしていたことに気付いたんですね。「与えたものだけがかえってくる」「与えれば“すぐに”受け取れる」「与えたものは与えた人からかえってくる」「見かえりがないなら、与えても意味はない」という「4つの勘違い」がこの本のテーマとなっているんです。
――その「4つの勘違い」はこの本の最初で書かれていますよね。
望月:それがとても大事だからです。世の中、真面目に努力している人が多いけれど、謙遜してチャンスを逃してしまう人もいますよね。それが日本人の美徳なのかもしれないけれど、「受け取る」のがあまり上手じゃないなと思うことが多いんです。
特に与え続けてばかりでエネルギーがしぼんでしまう人を見ていると、20年前の自分と重なるんです。もしかしたら自分と同じように落とし穴にはまってしまっているんじゃないか、と。そんな人たちに向けて本を書こうとしたのがきっかけです。
――先ほど望月さんがおっしゃったように、「与えること」は様々な自己啓発書で定番として出てきますが、ここまで具体的に踏み込んで説明している本は多くありません。
望月:そうだと思います。僕自身はこの「幸せブーメラン」というタイトルが気にいっています(笑)多くの人は、1対1の関係の中でブーメランのようにかえってくると思っているのですが、実はそうではなくて巡りめぐって自分のところにかえってきます。30代の頃の僕にはそれが分からなくて、人生のどん底に落ちてしまったんですよね…。
――確かに「与えればすぐにかえってくる!」と思ってしまいますよね。
望月:それが、4つの勘違いの中の1つですね。自動販売機にお金を入れてボタンを押せば、すぐにジュースが出てくる。それくらい分かりやすければいいのですが、幸せブーメランの場合、ほとんどにタイムラグがあります。そして、それを待てない人が多いのも事実です。
――それはおそらく損得勘定で与えているからではないでしょうか。
望月:そうなんです。それも近視眼的な損得勘定ですよね。
幸せブーメランの法則は穀物や野菜と一緒で、種をまいてから収穫するまでに時間がかかります。「一粒万倍」という言葉をご存知でしょうか。これは一つの粒で万倍となって稲穂が実るという意味ですが、万倍になるまでには種を植えてから時間がかかりますよね。せっかちな人は稲穂になる前に刈ってしまったりするんです。
――ただ、与えていて何も反応がないと自分の気持ちとしてあまりよくないと思うんですね。
望月:かえってこないと思うときに実践してほしいやり方があります。それは、「お願いする」ということです。
――本書の中で「信頼を貯蓄する銀行」という例でご紹介されている部分ですね。与えることは相手という銀行に信頼を預けているんだ、と。
望月:まさにそうです。だから、信頼の残高がたくさんあると思う人にお願いしてみてください。
でも、昔の僕のように「お願いするなんておこがましい」と思ってしまう人もいるかもしれません。僕はセルフイメージが低かったので、なかなか対等な関係を築くということができなかったんです。
信頼をたくさん与えた人は、必ず助けてくれます。あなたの目を見れば、「ここが勝負時」「一番苦しい時期にいる」ということを相手は分かってくれますから。
――本書の中で、望月さんはあるときを境に次々とすばらしいことが起こるようになったと書かれていらっしゃいましたが、それはどのようなことがきっかけだったのでしょうか。
望月:それがお願いしたときなんですよ!
――そうなのですか! では、そのとき、望月さんにどのような気持ちの変化が生まれたのですか?
望月:受け取ったときに、時間をかけてでもいいから、これを何倍にもして必ずおかえししようと思ったんです。一番苦しいときに助けてもらった恩人ですから、どんなことがあっても必ずおかえししようという気持ちになりますよね。これはどん底の中で受け取ることができたからこそ、気づいたことなのかもしれません。
――どん底から再起した方々の話を聞くと、「与えること」だけでなく「受け取ること」の重要性をちゃんと知っていますよね。
望月:ただ、そういう状況に陥る前に気づいていたほうがいいことだと思うので、この本を書かせていただいたんです。
一生懸命頑張ることは大事ですけれど、それで何か大切なことを忘れてしまうこともあります。普通、そういう状態に陥る前に何かしらのメッセージが本人に届いているはずなんですね。病気や交通事故などがそれに気づくきっかけになるのですが、僕の場合、それでも気づかないまま走り続けていたんです。自分を大事にできていなかったんですね。
このままじゃいけないということを気づかせてくれたのは、当時生まれて間もない自分の息子の入院です。神様が「この人間は自分を大事にできないから、この人間が最も大事だと思っているところに気づきを与えよう」としたんじゃないかと思います。
周囲にはたくさんの信頼できる人たち、自分が受け取りにくることを待っている人たちは与えていれば必ずいるんです。それに気づいていれば、どんなに底に落ちそうになってもポジティブさを失わずに済むじゃないですか。これは幸せに生きる上で、すごく重要なことだと思います。
■「相手が喜ぶことをし続けることが大事」
――これまでは与えるだけでなく、受け取ることの重要性についてお聞きしてきましたが、受け取るということが上手くいきはじめると、逆に受け取るばかりに目が向いてしまうようになるのではないでしょうか。
望月:そうなってしまわないように、与えて、受け取ったら、それをさらに与えるという循環を意識してください。例えば、皆さまに『幸せブーメランの法則』を買っていただけるということは、私への応援の声であり、私が受け取る印税は、皆さまからの応援料、期待料だと思っているんですね。もっとお役に立ちなさいという声だと考えているんです。
だから、僕はいただいた応援料を新たな学びのために再投資して、皆さまにまた伝えたいと思っています。そして、そうやって生まれた善の循環を大きく、はやくしていきたいですね。
――循環を生むことを大切にする、と。
望月:循環がはやくなるとより豊かになります。逆に流れが鈍くなると淀んでしまいます。
―― 一つ疑問に思うのは、根本的な話になりますけれど、「どのように与えればいいのか」というところです。「与える」というのは言葉だけならば理解できますけれど、実際に何をどうすればいいのかというところをイメージするのは難しいように思います。
望月:それはまず、相手に喜んでもらうことを考えてください。役立つことでもいいです。それが与えることの根本になります。もし分からない場合は「どうすればお役に立てますか?」と相手に聞いてみてもいいでしょう。
松下幸之助さんは「売上げとはお役立ち料」だと言っているのですが、まさしくそうだと思います。どんなに自分が良いと思っても、相手が全く関係ないものだったら喜ばれません。相手のニーズを掬うことからはじまるのです。
また、もう一つ。与えるときの気持ちも大事です。自分がワクワクしながら与えるのか、「しょうがないなあ」と思いながら与えるのか。それは大きな違いです。自分がワクワクして与えれば、そのワクワクも相手に伝わりますからね。
――なるほど。この「幸せブーメランの法則」は成功者たちが太鼓判を押す黄金法則として、多くの人々が実践されています。望月さん自身も成功者ですし、これまでたくさんの成功者の方々とお会いしてきたかと思いますが、彼らに共通している点とそうではない点をあげるとすると?
望月:これは2つあります。1つは本書のテーマと合致するのですが、「与え上手な人」ですね。楽しく与えている人は、冒頭にあげた4つの勘違いをせずに、豊かに受け取っています。先ほども言いましたが、相手が喜ぶポイントを知っている人、ワクワクしながら与えられる人は成功しますね。
もう1つは、過去に感謝し、未来に夢を見て、今をワクワク生きている人です。多くの人は過去に後悔し、未来に不安を持ち、今の愚痴をはいて生きています。でも、いつでも機嫌よくいることはとても大事なんです。
――やはりワクワクしているということが一つの鍵なんですね。望月さんがこれまで読んできた本の中で最も影響を受けた一冊をあげるとするとなんですか?
望月:一冊をあげるとすると…そうですね、『クリエイティング・マネー』でしょうか。サネヤ・ロウマンという人が書いた本なのですが、この中で言われているのは、ワクワクしながら与えると10倍になって返ってくるということなんです。つまり、『幸せブーメランの法則』のタネのような本なんです(笑)与えっぱなしでいいということ、ワクワクしながら与えることの大切さが書かれています。
――この本と出会ったのはどのようなときだったのですか?
望月:ちょうどどん底にいた時期でしたから、すごく救われましたね。
――では、『幸せブーメランの法則』をどのような人に読んでほしいとお考えですか?
望月:努力をしているのに成果がなかなか出ていない人に読んでほしいです。皆さんとても頑張っています。頑張っていない人はあまりいないですよね。この本は20年前の頑張っていた自分に向けて書いた側面があって、まったく自分の元にブーメランが返ってこなくても、その場所から逃げちゃいけないよ、と伝えたいんです。
また、一番この本で伝えたいのは、4つの勘違いをしないこと、そして与えることが一番の報酬であるということです。どんな仕事でも極めればどんどん深みが増していきます。それは例えばスーパーのレジ打ちも文章を書く仕事も、経営もそうです。その仕事を好きだと思って、お金という見返りを求めなくてもやり続けるというくらいのめりこむと、その姿をきっと誰かが見ていて、たくさんのチャンスをあなたに与えてくれるはずです。
――最後にこのインタビューの読者の皆さまにメッセージをお願いします。
望月:あなたがやっていることは無駄にはなりません。いつか必ず実になります。ただ、もちろんそこに効率性が必要なこともあるので、そういった工夫をしながら、相手が喜ぶことにできるかぎり力を注いでやってみて下さい。それまでに注いだエネルギーは、何倍にもなって必ず返ってきます。僕はそれをお約束します。
夢をかなえる「宝地図」提唱者。山梨県生まれ。上智大学法学部卒。能力開発セミナー会社などを経て、独立するも失敗し、多額の借金をかかえる。再就職した会社も1年で突然リストラされる。そこから1年でV字回復、研修会社ヴォルテックスを設立。自己啓発プログラムの講師、カウンセラーとして、人材教育に携わる