ブックナビゲーターの矢島雅弘が、『新しいバカドリル』の著者であるタナカカツキさん、天久聖一さんと対談! タナカさんと天久さんのペースに巻き込まれる矢島は一体どうなる!? まさに「笑撃」のロングインタビューとなっています!
ブックナビゲーター・矢島雅弘(以下、矢島)
『新しいバカドリル』の著者であるタナカカツキさんと天久聖一さんにスタジオにお越し頂きました。
今日はよろしくお願いします。
両者
よろしくお願いします。
矢島
それではまずお二人のプロフィールを順に伺ってよろしいでしょうか。
まずタナカさんの方から。
タナカカツキさん(以下、タナカ)
ハイ。タナカでございます。よろしくお願いします。
矢島
よろしくお願いします。
タナカ
1966年生まれでございます。
なので、戦後で言うと、ちょっと良く分かんないんですけど(笑)
満42才になりましたね。18歳の時、1985年にマンガ家デビューしました。
あとは平坦な没個性の毎日でございます。
矢島
いやいやいや(笑)
タナカ
じゃ、相棒の天久のプロフィールでございます。
天久聖一さん(以下、天久)
僕もカツキさんとほぼ同じですね(笑)。年が2つ若いくらい、まあ40才なんですけど。
タナカ
あと出身地も違いますね。僕は大阪なんですが、天久は四国の香川出身です。
矢島
どちらも食べ物がおいしいところじゃないですか。
タナカ
そうですね。大阪は食い倒れの街。香川はうどんのみ?
天久
そうですね。うどんのみですね(笑)
矢島
(笑)すみません不勉強で申し訳ないのですが、お二人はどこから一緒に仕事をし始めたんですか?
タナカ
それはですね、2人とも田舎に住む、漫画家を心ざす青年でして、
当時漫画家になるためにはもう東京に行くしかないと。
今やったら地方で仕事できるかもしれないですけど、当時は東京にしか出版社がないので、
打ち合わせするってなったらもう東京に行くしかないんですよ。
僕らはマンガで雑誌社賞なんかを頂いてデビューすることになるんですが、
それと同時に上京って感じになんですよね。で、上京してすぐに知り合ったのがヒサ(天久)なんですよね。
矢島
そこから縁が会って2人で一緒に出版をしたりとか、もしくは励まし合ったりした関係があったわけなんですか。
タナカ
そうですね、励まし合いながら(笑)。
やっぱり漫画家って東京の人が多いんですよね。その中で地方から出てきた。
すると厚い壁があるんです。まずは担当者との言葉の違い、文化の違い、様々です。
僕らのなかでこれはおもしろいと思っているものでも、やはり東京にもっていくと「これは…」
とピンとこないというか。そういうことありましたよね。天久くん
天久
ありましたね。文化の違いは。
矢島
ちなみに僕は埼玉出身なんで、関東出身になるんですけど、
今回のディレクターが実は関西、兵庫の出身なんです。
さっきちょっとお笑いについて語っていたんですが、
関西の方っていわゆる典型的なお笑いが好きだと思ったんです。ベタなお笑いですね。
で、シュールなのは東京の好みなのかなと思ったんですけど、
今回のバカドリルを見たときに思ったのが、シュールだな、と(笑)
タナカ
そうですね、ただ僕ら関西から東京に来まして、東京の笑いは当時でもシュールやったんです。
これから漫画家として生活していかなあかんということで、僕ら東京の笑いに合わせたんですね。
矢島
なるほど。
タナカ
ええ。実はほんとはベタなんです(笑)。このラジオを聞いていいただいてもわかるとおり、
かなりえせ芸人的な(笑)感性しておりますよ。でもこれじゃやっていけないと言うことで。
当時、テレビでも関西芸人ってそんなには出てなかったんです。
矢島
そうですね、はい。
天久
だから東京と関西のお笑いってかなり違っていたと思うんですけども、
やっぱり東京のほうが当時シュールで不条理で、見ているとかなりハイセンスやったんやないかなと思いますね。
まあ、それは人によって違うんでしょうけど。
でも、当時の東京には、ラジカル・ガジベリビンバ・システム(*1)…宮沢章夫(*2)の劇団があったりして。
タナカ
楽しかったよね。
天久
それがすごく新鮮でしたね。
でも、僕が上京してきた頃、つまり20年くらい前にも、関西でシュールの笑いが出てきてましたよね。
ダウンタウンの松本人志とか深夜番組のシーンとか。
だから、そのへんのハイブリッドな笑いに結構影響を受けました。
『バカドリル』も結構シュールって言われていますけど、ベタなネタもの多いと思います。
自分らの中ではね。
矢島
で、その『バカドリル』の話になんですが。
天久
はい、でました!『バカドリル』!
矢島
今日はそのお話を聞きたいんですよ(笑)。
この『バカドリル』を出版するに至った経緯をお聞きしたいんですが、これはどういった経緯で?
タナカ
これはもともと、あるデパートのフリーペーパーに連載してたものなんですよ。
僕ら漫画家としてデビューしまして、やっぱり漫画家なのにマンガ雑誌で仕事させて頂けなかったんですよね(笑)。
矢島
なるほど。
タナカ
先ほどいった文化の違いなのか、ただ漫画の腕がないだけなのか。
で、そういうところで書いていたんですが、なんせページが1ページしかないもので、
ページもののマンガを書けなかったんですね。
なので、紙1枚で絵があって、そこに文章があって…
まあ、文章が添えられているという感じで成立するようなものを当時書いていたんです。
そういうものが溜まりに溜まって、
1993年か94年にバカドリルっていう本をまとめて単行本として出版させていただいたんです。
矢島
読ませていただきました。
タナカ
これが10…何年ぶり? 学がないもんですぐに計算できないですけど(笑)
それで今回、お互い歳もとって熟した、
ということで10何年前と同じ様なタイトルでもう一回本を出そうかということで、
『バカドリル』上下巻出させていただいたんです。
で、せっかく書くからには新しくないといけない、と。
でも、内容の新しさにまったく自信がないんで、
自分でまずタイトルにもう「新しい」ってつけちゃえって。
ごり押しで『新しいバカドリル』上下巻というのを出させて頂きました。
次のページでは『バカドリル』の心髄に迫る!! 止まらないタナカさん&天久さんの暴走に矢島は一体どうする!?
【用語解説】
(*1)ラジカル・ガジベリビンバ・システム…
宮沢章夫、竹中直人、いとうせいこうによって結成されたギャグユニット。
1985年より活動開始。後にシティボーイズなども参加している。
(*2)宮沢章夫… 劇作家、演出家。多摩美術大学在学中から放送作家として活躍。 1992年に発表した戯曲『ヒネミ』は岸田國士戯曲賞を受賞している。