BOOK REVIEW
今や企業がFacebookアカウントを持ち、情報発信をすることは珍しくない。しかし、「世の中の流れがそうなっているから」という理由だけで運用し、自社の製品情報や告知を垂れ流すだけになってしまっている会社もまた多いのが実情ではないか。
どうすればFacebookの持つ力を最大限生かし、ビジネスの成果につなげることができるのか。『Facebookを「最強の営業ツール」に変える本』(坂本翔著、技術評論社刊)には、そのヒントが散りばめられている。「今さらFacebookの使い方なんて…」と思わず、参考にしてみてはいかがだろうか。
Facebook運用のカギは「数を求めない」こと
本書の著者である坂本翔さんは行政書士としての活動のかたわら、Facebookを活用した音楽イベントの集客経験を生かし「SNSコンサルタント」としても活動している。
ところで、企業のFacebookの運用担当者がぶつかる壁の一つに「ファンの数をどう捉えるべきか」というものがある。ファンや友達の数をそれなりに集められているのに売上に結びつかない、という悩みは多くの企業に共通のものだ。
だが、坂本さんは本書のなかで「現代のFacebook活用においては、ただ数が多ければよいというわけではありません」と説く。そもそも「数」を追い求めること自体がナンセンスというわけだ。
なぜ坂本さんはこのような主張をするのか。彼がコンサルティングを手がけたクライアントのなかに、ある対照的な二つのケースがあったという。
かたや「万単位のファンを集めていながら、ターゲットを意識した投稿をまったくしていなかったために、投稿への反応やリーチが少なく、結果的に売り上げにつながらない」というA社。
その一方で「これからFacebookページを作りたい」というB社。坂本さんはページを作るところから関わり、ファン数は千単位に到達したが、それでもA社とはケタが違う。しかし、売り上げ効果を見るとB社の方が顕著だったのだ。
こういうことが起きた理由として、A社はファン数を集めることにこだわりすぎ、「どんな人にファンになってもらいたいのか」という発想が抜け落ちてしまったことが挙げられる。その結果、「お客になってくれないだろう人」ばかりをファンにしてしまい、どんなにFacebook投稿を繰り返しても売上には結びつかなかった。
逆に、B社はファン数こそ少なかったものの、「どんな人に」「どんなメッセージを」届けたいのかというところから逆算した上で、Facebookページをデザインしていった。当然、ついてくれるファンの少なからぬ人がお客にもなってくれた、というわけだ。
坂本さんは本書のなかで度々、「ターゲットを絞り込む」ことの重要性について触れている。ターゲットをしっかり絞り込むことができれば、より効果的に投稿を届けるためのベストなタイミングも決まるからだ。
たとえば本書では、架空のケースとして「神戸市のあるレストランに集客するため」のターゲティングについて詳細に解説されている。
「55歳で共働きの男性会社員」を想定顧客とし(実際には「家族構成」「年収」「起床時間/就寝時間」など計13項目にわたって、ターゲットの「生活ぶり」を細かに設定している)、その想定からいって、「帰宅時の18時ごろ」にFacebookのニュースフィードで見てもらえるようにするのがベストだろうという仮説を立てる。
こうした仮説にもとづき試行錯誤を繰り返すことで、投稿の精度は確実に上がってくるという。
本書は、「これまでFacebookを一切使ったことがない」という人でも分かるよう、その活用の仕方を「一から」解説している。
また、「かくあるべし」という抽象的な話に終わることなく、「プロフィールは400字までが適切」「投稿回数は1日1回まで」「コメントは投稿の数時間後に返す」などの実践的な技が紹介され、それぞれの技についての「合理的な理由」が添えられている点も好感を持てる一冊だ。
CONTENTS
第1章 Facebook営業の「基本」を知る
- 「Facebook営業」とは何か?
- Facebook営業はここが「すごい」
- Facebook営業は「4つの要素」で構成される
- Facebook営業は「売り込まずに売る」
- Facebook営業は「信頼の積み重ね」
- Facebook営業は「Facebookページ」を使う
- Facebook「集客」で見込み客を集める
- Facebook「教育」で思い出してもらう
- Facebook「販売」では遠回りの戦略を取る
- Facebook「維持」でリピーターを獲得する
- Facebook営業の「流れ」をおさえる
第2章 Facebook営業の「準備」をする
- Facebook営業にも「名刺」が必要
- プロフィールは「意外と見られている」
- 「フロントエンド商品」を販売するのが先
- プロフィールでは「実績」を見せて売る
- プロフィールは「数字」でインパクトを出す
- プロフィールは「400字まで」が適切
- 「ギャップ」を利用して読み手の記憶に残る
- 話の落差で「ストーリー性」を出す
- 補足情報で「心に残る引っ掛かり」を用意する
- 自分の顔は「必ず公開」する
- 写真で「自分の個性」を表現する
- 写真は「服と背景の色」に気を配る
第3章 Facebook営業で「見込み客」を集める方法
- 見込み客を「ファン」と「友達」にする
- Facebook営業の対象を「絞り込む」
- 集客ターゲットの例① 神戸市のレストランの場合
- 集客ターゲットの例② 大阪市のヨガ教室の場合
- 「ファン」と「友達」を増やす方法
- 「現実世界で出会った人」とは必ず友達になる
- 友達は「現実世界の知り合い」に限らない
- Facebookページに「集客」する方法
- ファンと友達は「どのくらいの数」が必要か?
第4章 Facebook営業の「効果的な投稿術」を知る
- 投稿しても「リーチ」が少なければ意味がない
- 投稿で意識するべき「3つのポイント」
- ベストな投稿タイミングは「21時~22時」
- 混雑しがちな「週末」は避ける
- 「業種や目的」に合わせてタイミングを決める
- 投稿回数は「1日1回」まで
- 「行動の最大化」でチャンスを広げる
- 「親密度×重み×経過時間」を意識する
- 「交流」すればするほどリーチが伸びる
- コメントは「投稿の数時間後」に返す
- 「タグ付け」と「チェックイン」を活用する
- 「自分勝手な投稿」は無意味と思え
- 宣伝投稿までの「プロセス」を見せる
- おさえておきたい「4種類の投稿」はこれだ
- 投稿の割合は「1:4:3:2」と考える
- 「反応が悪い投稿」は続けない
- 「公開」設定で拡散を狙う
- 「自分で選んだ」つもりにさせる魔法の投稿
- 写真のない投稿は「読まれない」と思え
- 「タイトル欄」は自分で作ればよい
- 「やってはいけない」5つの投稿
第5章 Facebook営業の「効果的な投稿例」を知る
- Facebook投稿の「3つの役割」
- 「日常投稿」の例① プライベート感で「共感」を呼び込む
- 「日常投稿」の例② 人間味のある投稿で「親近感」を与える
- 「情報提供型投稿」の例 お役立ち情報で「ブランディング」
- 「間接的な宣伝投稿」の例① 商品名やサービス名は「さりげなく入れる」
- 「間接的な宣伝投稿」の例② 商品への「こだわり」を簡潔に述べる
- 「間接的な宣伝投稿」の例③ プロセスを小出しにして「期待感」を上げる
- 「直接的な宣伝投稿」の投稿例 「宣伝」と割り切り販売へ誘導する
第6章 Facebook営業 「イベント集客」でつながる方法
- 「イベント集客」は誰でもできる
- イベント情報は「2段階」に分ける
- 「キリのよいタイミング」で詳細を投稿する
- 読み手の視点を「宣伝」からずらす
- イベントページの「効果的な作り方」
- イベントページに誘導する「3つの方法」
- 期待感を高めるイベントページへの「投稿」
- Facebookが最大の効果を発揮するとき
第7章 Facebook広告で「集客を加速」させる方法
- 「Facebook広告」の全体像を把握する
- 「どこで広告を使うのか?」を考える
- 「誰に届けるのか?」が広告の成否を決める
- テキストと画像で「刺さる広告」を作る
- 「投稿を宣伝する広告」で販売への誘導をサポート
- 「1日500円」から始めてみる
第8章 Facebook以外のSNSを活用する方法
- Facebookだけが営業ツールではない
- 「Instagram」は女性・視覚的・クローズド
- 「Twitter」の売りは圧倒的な拡散力
- 「ハッシュタグ」で見込み客を引き寄せる
- 「LINE@」はプッシュ通知が利点
- 「Facebook営業」は不変のもの
PROFILE
坂本 翔
株式会社ROC 代表取締役
行政書士オフィス23代表
SNSコンサルタント
次世代士業コミュニティ「士業団」団長
高校時代、バンド活動で食べていくことを決意するも、来場者が3名のイベントを経験。「集客」の重要性を痛感し、当時ブームだったブログを活用した集客法で、高校生ながら赤字続きだったイベントを黒字へ転換する。
士業の認知度向上などを目的に『士業×音楽=LIVE』を主催。過去三回で延べ600名以上を集め、新聞やラジオでも取り上げられる。行政書士としても、県内最年少での開業から約一年で100件以上の案件を受任。これらの集客は、SNSの活用により実現させている。
このような実績から、25歳で商業出版を実現し、商工会など全国から講演依頼も受任。自身でもSNSマーケティングセミナーを定期的に開催している。
現在は、『株式会社ROC』として中小企業のSNS運用代行やWEBコンサルティング事業を行いながら、次世代士業コミュニティ『士業団』では、同業者である士業に対して経営支援を行うなど、現代の集客に悩む経営者を支援している。