インターネットの発達によって、かつてより起業することへのハードルは下がったといわれています。
ただ、そうはいっても起業にはお金が必要ですし、勤めている会社を辞めるのは勇気がいります。なにより、自分が考えている事業が成功するかどうかは不透明。そういったところでなかなか決心がつかない人は多いはずです。
ところで、成功する起業家とそうでない起業家にはどのような違いがあるのでしょうか?
本書の著者で税理士の原尚美さんは、本書のなかでそれらを分けるマインドに触れています。
■たった一人の責任でリスクを取る勇気を持っているか
魅力的な事業のアイデアがあるのに資金がない、というのは、特に若い起業家でありがちなことです。この場合、選択肢として十分な資金が貯まるまで起業を先送りするか、金融機関などから借金をしてでもすぐ起業するかに分かれますが、成功する起業家は後者だといいます。
ビジネスは、ある意味でスピード勝負という面があり、十分な貯蓄ができるまで起業を待っていては、せっかくのアイデアが色あせてしまいかねません。かといって今ある資金だけで初めても中途半端な起業となってしまい、小さなリターンしか得られない危険性もあります。
たとえお金を借りてでも自分のビジネスに投資できない人は、そもそも起業に向いていないのかもしれません。リスクを取れない人にはリターンもないのです。
■他人を巻きこむ程のエネルギーを持っているか
ただし、十分な資金を用意したからといって、もちろんそれがすぐに成功につながるわけではありません。
原さんは、起業を含めビジネス成功のカギは、いかに資金を用意するかではなく、いかに多くの人を自分のビジネスに巻き込めるかだとしています。その意味では、起業を成功させる最後のカギは創業者の情熱と事業プランだといえます。
特に、魅力的な事業プランは、創業時の最大の支援者といえる金融機関を巻き込み、資金調達を助けてくれるはずです。反対に、もし金融機関を説得できず融資を受けられなかったとしたら、それは彼らがあなたの事業が成功しないと判断したということであり、今一度事業計画を見直す必要があります。
創業時に融資を受けられるかどうかというのは、自分の事業計画がビジネスとして成立するかを試す尺度なのです。
■実現したい世界観(ビジョン)を持っているか
非の打ちどころがない事業計画を立てたとしても、実際に始めてみると思い通りにいかないということは珍しくありません。
どんな事態にも対応するために、創業計画の段階から楽観的な予測と悲観的な予測の両方を用意しておきましょう。
事業が軌道に乗るまでは赤字を補てん金や、自分の生活費を含めてかなりのお金がかかります。こういったお金については余裕を持って確保しつつも、うまく軌道に乗ったら次はどうするか、といったビジョンもあらかじめ決めておくと、不測の事態に慌てることなく状況に応じた経営ができるはずです。
本書では、税理士ならではの視点から起業をサポートする情報やノウハウが明らかにされており、創業融資に欠かせない要素(自己資金・事業計画書・社長面接)への対策や、資金調達をした後にすべきこと、その資金をいかに増やすかということまで解説されています。
巻末には、上場する際のファイナンスについても綴られており、これから起業するという人はモチベーションが上がるはずです。
クライアントの9割が黒字企業という原さんだけあって、その内容は説得力抜群。
起業を考えている人は、ぜひ本書に触れて、自分の事業アイデアを実際に成功させるためのノウハウやマインドを学んでみてください。
税理士。東京外国語大学英米語学科卒業。スタッフ20名全員が女性だけの、「原&アカウンティング・パートナーズ」を主宰。
全日本答練で、「財務諸表論」「法人税法」を全国1位で税理士試験に合格。
一部上場企業の子会社や外資系企業から中小企業まで幅広いクライアントをもち、企業会計の現場に強い。
中小企業は節税よりも財務力を強化すべきとの思いから、事業計画書の作成など地に足のついた経営支援を通じて、クライアントの9割が黒字の実績を誇る。慶應義塾大学大学院の税理士補佐人講座、日税連の地方公共団体外部監査人講座修了。
税理士会蒲田支部副支部長。