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目次

第1章 
睡眠不足が認知症を招く
第2章 
眠りの常識 ウソ? ホント?
第3章 
眠る力を高める5つの法則
第4章 
悩みを解消する快眠メソッド
第5章 
1分で効く! 快眠のための
手のひらセルフケア
第6章 
理想の寝室のつくり方

INTERVIEW インタビュー

眠くないのに布団にもぐるのはNG 快眠のコツとは?

――脳が若返る快眠の技術』では、冒頭で認知症と睡眠の関係について紹介されていますね。

著者近影

認知症は誰もがなる可能性のある病気ですが、ここ数年で認知症と睡眠の関係が研究で明らかになってきています。睡眠時間が不足していたり、睡眠の質が悪かったりすると認知症になる可能性が高くなることが分かってきました。
アルツハイマー型認知症は、健康な脳なら排出されるはずの脳のゴミ(アミロイドβなど)が、排出されずに溜まってしまうことが要因の一つとされています。実はこのゴミ出しは、睡眠中に行われていることが分かってきました。つまり、質の良い睡眠によって認知症を予防をすることができるんです。

――認知症といえば、最近ではアニメ「ドラえもん」のドラえもん役だった声優・大山のぶ代さんが発症し、話題にもなりました。

現在は3人に1人が認知症になる時代といわれています。60歳を過ぎてから、「もっと睡眠をとればよかった」と後悔しないように、働き盛りの40代からは睡眠を意識して欲しいんです。
もちろん、認知症の原因は睡眠だけではありませんが、一つの大きな要因であることは確かです。

――適切な睡眠時間は何時間ほどなのでしょうか。

これは年齢によって異なります。25歳だと7時間。45歳だと6時間30分。65歳だと6時間といわれています。これは実際に眠っている時間の平均値で、もちろん個人差はあります。布団に入ってから起きるまでの時間とカウントすると、プラス30分加えるといいでしょう。

――年齢を追うごとに必要な睡眠時間が短くなっていくんですね。

そうです。高齢の方は必要な睡眠時間が短くなっているのに、時間があるからと布団の中にいる時間が増えがちになります。それが逆に睡眠の質を悪くしているんです。
先日、シニア向けに2泊3日の「快眠ツアー」を催行した際に、睡眠日誌を書いてきてもらったんですね。それを見たら、一番長くて1日11時間ほど寝床にいる方がいらっしゃったんです。夜8時に布団に入って、朝7時に起きるという感じですね。午前2時頃には目が覚めて眠れないので、睡眠剤を飲んでいらっしゃると。

――布団の中にいる時間が長いのはNGなのですか。

長いのがNGというわけではなく、眠くないのに無理やり眠ろうとすることが良くないんです。眠ろう、眠ろうとして焦ってしまい、それが逆にストレスとなってしまう。高齢になるにつれて必要な睡眠時間は減っていきますが、そのことに気づかず「昔のように眠れなくなった」と勘違いしてしまうケースも多いんですよ。

――そういった悩みを持っている方々にはどのようにアドバイスされるのですか?

眠くなるまで起きていて、寝床にいる時間を短くしましょうと伝えます。睡眠を圧縮すると質の高い眠りになるので、少し遅寝早起きにするくらいが、ちょうどいいんです。この方法は高齢者だけでなく、若い方にも有効です。寝床に8時間いるうちの4時間しか眠れていないなら、寝床にいる時間を4時間半に圧縮します。4時間半しっかり眠れるようになったら、少しずつ長くしていって、適切な睡眠時間で固定します。これは質の高い睡眠を獲得するために、非常に効果的な方法です。

――布団にいる時間が長いことのほかに眠れなくなってしまう要因は何がありますか?

働き盛りの人ですと、体内時計の乱れやストレスが大いに関係しています。また、男性はお酒ですね。途中で目覚めて眠れないという人はだいたい寝る前にお酒を飲んでいます。アルコールが分解されるた後は交感神経が刺激されるので脳が興奮状態になって目が冴えてしまうんです。ですから、眠れないからといって、お酒に頼るのは間違いです。ただ、お酒は絶対にダメというわけではなく、食事のときの楽しみとして、上手につきあうのが大切ですね。

――体内時計の乱れはどのようにして起きるのでしょうか。

不規則な生活が第一です。また、それ以外にも要因があり、夜に明るい光を浴びることも体内時計に影響を与えます。朝の光は体内時間を前に進め、夜の光は後ろにずらします。夜型になっているとすれば、朝にしっかり光を浴びて、夜は部屋の電気を暗めにしながら過ごすと良いでしょう。最近では調光・調色タイプのシーリングライトが各メーカーから出ていて値段もこなれてきていますから、そういった照明はお勧めですね。
それからもう一つ、夕方以降にうたた寝をすると疲れが減ってしまうので、いつもの時刻に眠くなりません。これからの季節、コタツでのうたた寝には気をつけてくださいね。

お互いぐっすり眠れる理想の夫婦の寝室、ポイントは?

――年齢が高くなってからの睡眠において、注意すべき点はなんですか?

年齢を重ねるごとに必要な睡眠時間が短くなるのが普通です。だから、まずは自分にとって適切な睡眠時間を知ることから始めましょう。
また、この本では眠りの法則を5つ挙げています。「体内時計を整える」「疲れをためる」「深部体温のメリハリをつける」「就寝前は心身をリラックスさせる」「心地よく眠れる寝室をつくる」の5つで、これらが満たされているかどうかが一つの基準になるはずです。
あともう一つ大切なことがあって、夜、目が覚めてトイレに行く方も多いですよね。でも、パチンと電気をつけてしまうと眠れなくなってしまうことがあります。強い光に刺激されて脳が目覚めてしまうんです。もちろん真っ暗だと転倒などの危険があるので、フットライトやセンサーライトで足元を優しく照らすと良いと思います。いつもトイレに起きたあと、1~2時間眠れなくて悩んでいた方が、スマートフォンを足元に向けながら目に光を入れないように用をたしたら、すぐに眠れたというケースもありました。

――この本では「ぐっすり眠れる理想の寝室」をイラスト付きでご紹介されています。夫婦別室で眠ることと夫婦が同じ部屋、同じベッドの上で眠ること、どちらがいいのでしょうか。

単純に睡眠という観点のみで考えれば、一緒のベッドではないほうがよく眠れます。パートナーの動きで目覚めることはありませんし、自分自身も自由に動けます。また、暑がりや寒がりという体質は人によって快適な温度は違いますから、自分にちょうどいい環境をつくることもできます。
今は部屋の中を上手く仕切って、相手の気配は感じるけれどもそれぞれ独立したスペースで眠るという半個室タイプが人気ですね。

――夫婦同じ部屋ですと、「いびき」という問題があります。

いびきを防ぐには、横向きやうつぶせで寝ることで気道が確保され、軽減されます。サポートグッズとしては「抱き枕」や、クッションや衣類をつめたリュックを背負いながら眠る「背枕」というものがありますね。あとは、妊婦さんがとる「シムスの姿勢」は、太りがちでよくいびきをかいてしまう男性にも効果的だと思います。
また、喘ぐようないびきが突然途中で止まる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるので早めに病院で診察を受けるべきでしょう。

――これからだんだんと寒さが増していく時期です。冬の寒さをしのぐためのオススメアイテムを紹介していただけますか。

寒いと掛け布団や毛布などたくさん掛けてしまう人は多いと思います。ただ、かけすぎると体が圧迫されて血行が悪くなり、逆に温まらなくなってしまうことがあります。そこで、3枚以上かけている人は、床からの冷気を防ぐことを考えましょう。布団やマットレスの上に保温性の高い敷きパットを敷いたり、下にアルミシートで断熱するのも効果的です。
あとは、女性で寒いからと靴下を履いて寝る人が多いですが、足が締めつけられて血行が悪くなってしまうことがあります。また、寝ている間に汗をかくのですが、その汗が靴下に溜まって、明け方に足が冷えてしまうことがあるので、靴下よりもレッグウォーマーのほうがオススメですね。また、もっと大事なのが腹巻きです。お腹を温めて内臓が冷えないようにする。そうすれば全身も温まりますから、腹巻きとレッグウォーマーの組み合わせはぜひやっていただきたいです。

――このインタビューの読者のみなさまへメッセージをお願いします。

40代の方々は「まだ頑張りがきく!」と思って無理しがちになりますが、毎晩ちゃんと眠って、脳のゴミを出してほしいですね。ゴミがたまったままだと仕事の生産性が下がって残業が増え、さらに睡眠不足になるという悪循環で、脳のゴミがどんどん蓄積されてしまいます。それが将来の認知症につながる可能性もあるので、その日のゴミは、その日のうちにキレイにしましょう。もちろん、60代、70代の方々も、質の良い睡眠をとってもらいたいです。睡眠はさまざまなことが影響するので、自分では気づかない盲点があるかもしれません。ぜひ本書を参考にしてみてくださいね。