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人生が2000%うまくいく ハーバードの秘密

著者インタビュー

国際性が豊かで世界的な視野を身につけられる“ハーバード”

― まず、医学博士である左門さんがハーバードについての本を執筆した経緯をお話していただけますか?

左門: 私がハーバードに留学したのは、サンケイスカラシップという奨学金を給付してもらえたという理由があったからなのですが、そのハーバードで、非常に素晴らしい経験をたくさんしました。その経験を多くの人に伝えたい、知ってもらって、それを仕事や勉強に生かしてほしいという想いが前からあったんですね。

そして、とある出版関係のパーティーで、ハーバード本の企画をあたためていた編集者と出会い、この本の出版が本格的に動き出しました。ただ、たくさんの方に本を読んでもらうにはどうすればいいか、議論を重ねに重ねて、それから2年経ってようやく王様文庫から刊行することになったのです。

― ハーバードの雰囲気とはどのようなものでしたか? 日本の大学との違いなどあれば教えて下さい。

左門: 2年間、ハーバードに通いましたが、まずは国際性が豊かですね。いろいろな国から人が集まっています。それは学生だけでなく、教員もそうです。学長はずっとアメリカ人のようですが、教員はいろいろな国の方がいますよ。

また、バックグラウンドも幅広い。私は大学院にいたのですが、医療関係者だけでなく、弁護士やエンジニアもいました。女性も多かったですし、年齢もさまざまです。基本的にある程度仕事をしてから入学してくる人が多いんです。年齢的にはだいたい20代後半から30代はじめが多かったですね。

― 左門さんがハーバードで学んで、今でも仕事で最も活きていることはなんですか?

左門: これは実利的な面と、実利的ではないけれどとても役立つ面、2つあります。

まず、実利的ではないけれど、役だっている面からお話をすると、「世界へ目を向ける」という視点を得られたことですね。ハーバードには世界のリーダーを育てるという教育目標があります。つまり、これはグローバルな視野での問題解決の方法を考える力を身につけるということです。そして、授業でも学生同士の日常会話でも、必然的にそういう話になります。

また、先ほども言ったように国際性が豊かな人脈が築けるという点も非常に大きいです。

― 国際性豊かだと、それぞれのバックボーンが違うわけですから、各国の事情みたいなものも出てくるのではないですか?

左門: それはありますが、みんなそこで学びたいと思ってやってきているので、モチベーションはとても高いんです。また、特にビジネススクールは人脈作りのために通っている人が多いですね。学閥はあまりつくらないけれど、同窓会組織は非常に盛んで、そういうところを通して人脈を作っています。
実利的な面でいえば、医学統計学の知識と実践技量でしょうか。これは私の個人的な体験談なんですが(笑)

― 本書で、ハーバードの教育は「基礎を大切する」ということが特徴だと書かれていますが、左門さんはこの「基礎を学ぶことの大切さに」ついてどのようにお考えですか?

左門: やはりどんな分野においても、プロの人はその分野の基礎がしっかりしていますよね。それはイノベーションを起こすときだけでなく、逆境や大ピンチの状況でもそうです。誰よりも基礎を重視して、そのステップを踏んで対応します。

私がハーバードで体験したエピソードをご紹介しましょう。普通、実験の際に、水などは教員が用意してくれるものなのですが、ハーバードの場合はどのように水を確保するか、からやるんです。例えば、水の中に藻が生えていてもいい実験と、そうではない実験があります。水の中に藻があったら、それを取り除かなければいけないので、30分かけてそれを取り除く実験から始めるんです。

実はこの作業は実験における基礎中の基礎です。ところが教科書にはあまり書いていないんですよ。他にも基本的なことがたくさんあって、そういったところをみっちりと教えてくれる。逆に応用的なものは、基礎ができていれば、自分で本や論文を読めば理解できるはずです。

複雑で広範で奥深いことに挑むときほど、基礎が大事です。そのことをハーバードが教えてくれました。

ハーバードの学生の特徴、左門さんから見ると?

― 以前、「新刊JP」でハーバードの卒業生である、パックンマックンのパックンにインタビューしたんです(記事はこちら)。その際に、ハーバードの学生の特徴について聞いたところ、「言われたことを鵜呑みにしない」「テストの答えが分からなくてもそれらしい回答にしてしまう」といったことを挙げられていらっしゃいました。左門さんはハーバードの学生の特徴としてどのようなものがあるとお考えですか?

左門: まさにそうだと思いますね。現場主義というか、自分で見て、聞いて、自分で決断し、責任をとるリーダーシップと、周りとうまくやっていくコミュニケーション能力、その上でそつのなさは、確かに大きな特徴だと思います。

また、社会に貢献するという使命感を持ち、それを世界で実践する人が多いです。もともと世界中から学生や教員が集まってきていることもありますが、世界の人の役に立つことをするのが人生で最もすばらしい生き方という信念を教え込まれます。

また、性格的な面だと、自信家で、うまくいくさという楽天的、加えて、ユーモアに長け、いたずらっぽい人が多いように思いますね。

― では、ハーバードでの授業はいかがでしたか?

左門: 一回の授業は、あらかじめ数十ページの資料と、十数ページの教科書を自分で読みこんでから臨みます。これは学生にとってはかなりきつく厳しいのですが(笑)、その反面、教員の教育への意欲、情熱と使命感はものすごく、素晴らしい授業ばかりでした。まさに学生と教員の真剣勝負といってもいいでしょう。

ハーバードならば予習でやるべきことを、日本の大学では授業で一方向でやっている感じなので、その部分もかなり違いますね。

― 本書の中に、ハーバードにはさまざまな学生メディアがあると書かれていましたが、そのメディアにはどのようなことが書かれていたのですか?

左門: 大学、学生、卒業生、民間など発行母体により多少違いはありますが、一言でいえば、世界中のありとあらゆることでしょうか。大学内外のことだけでなく、政治、経済、宗教についても踏み込んでいます。

― 左門さんが若い頃に読んで、影響を受けた本を教えてください。

左門: 年齢によって影響を受けた本は違いますが、欠かせないのは中学時代に私の生き方を変えた下村湖人の「次郎物語」ですね。

学校でよく泣いていた中学生1年の私に担任の国語教員がある日勧めてくれました。3世代同居の大家族内での次男が、自分は家庭で大切にされていないと思い悩んでいることを見抜いたんですね。この本を読んで「愛される喜びから愛する喜びへ」と人生のパラダイムシフトがあり、より積極的に前向きに生きるようになりました。

また、他に読んだものでは、日本の小説なら森鴎外、外国の小説ではマルタン・デュ・ガールのチボー家の人々なども印象に残りました。

― 医学生時代ではどうですか?

左門: これは親友から「読め」と渡された、国家試験合格での日本初の女医の人生を描いた渡辺淳一さんの「花埋み」ですね。これは、後半涙が止まりませんでした。「花埋み」は医学関係者にもぜひ読んでほしいですね。

― 本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?

左門: まずは、高校生から30代前半までの方ですね。この本を読めば誰でも留学できることが分かりますので、今は留学を考えていなくても、少しでも向上心のある方は読んでほしいです。
また、仕事や事業をよりうまくやって行きたいという方、これからのグローバル社会、職場の国際化に対応して生き抜いていくすべての人にきっと役立つ多くのヒントがあります。

― このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

左門: この本はどちらかというと若者向けですが、教育に関心もお持ちの中年以降の方であれば、お子様に勧めてほしいですね。

そして、二十代から三十代前半の方なら、欧米の大学院の多くの院生はこの年代なので、是非、ハーバードに限らず留学してほしいです。行きたいという強い意志を持てば、誰でも行くことが可能です。グローバルな視点が身につき、世界が自分の庭先になるだけでなく、国際的で豊かな人脈と、なんと行っても前向きに積極的で生き生きと楽しい毎日が送れるようになるはずですよ。

また、ハーバードのエピソードをより多く盛り込んだ第二弾の発行を担当編集者と企画していますので、是非第二弾もお読みいただければと思います(笑)


著者プロフィール 左門 新 (さもん あらた)

医学博士。ハーバード大学院卒。Harvard Club of Japan会員。
医学部卒業後、サンケイスカラシップ奨学金を得て、ハーバード大学院へ留学。
その後、英バーミンガム大学医学部へ研究留学。帰国後、都立築地病院、
国立小児病院での勤務のほか、神奈川県保健所や厚生省(当時)にて、医療行政にも従事。
自治医科大学講師、産業医科大学教授として教鞭も執る。
数多くの国際共同研究班のメンバーとして、また、世界保健機関(WHO)の
専門委員として、世界各国の第一線の教育者との関係も深い。
ハーバードで学んだ「人生を輝かせる知恵」や、
臨床・研究・行政・教育にまたがる豊富な人生経験から、
British CouncilJapan Association会長として、
若い世代への様々なアドバイスや留学支援を行っている。