「負け側になりたくなければそれなりの武装が絶対に必要」
― まず現在(4月16日現在)日経平均が19885円と好調で、4月10日には20000円を超えました。この株価の好調をどう捉えていますか?
冨田:いろいろな要因や理由が重なって、今、日本の株が買われているからここまで上がってきたのでしょう。では、どんな要因や理由が重なってここまで上がってきたのかですが、そのような要因や理由はどうでも良いと思っています。多くの人々やお金を多く持っている人が、売る人よりも多いから上がってきただけです。
― これだけ株価が好調だと、株をやってみようと思う人も多いと思いますし、SNSなどでもそうした声があがっていますが、そうした傾向についてどうお考えですか?
冨田:私は株が好きですので、やってみようと思うなら「ぜひどうぞ!」とおすすめしたいです。ただし、株式投資の世界は百戦錬磨の兵(つわもの)がひしめき合う「勝負」の世界。誰かが勝って、誰かが負ける。勝つ側になりたい。負け側になりたくなければそれなりの武装が絶対に必要です。安易な気持ちで準備もせずに株式投資の世界に飛び込むことは非常に危険です。
― 本書では「個人投資家」ではなく「個人トレーダー」を目指すべきだとしていますが、その違いはなんですか?
冨田:投資というのは、成長性が見込めると自分が判断した特定の企業に対して株を買うという形で資金を投入することです。その企業の業績が見込み通りに上がり株価が上がれば、その分の利益を得ることができます。ただし、この投資については情報量も多く資金力もあり、頭脳明晰な人たちが集まった機関投資家や大手ファンドなどのプロしかできない行動です。個人投資家はこのような行動が資金的にも人的にもできません。「個人投資家」が戦って、勝てる相手ではありません。勝てないということは、負ける、つまり損をするということです。
一方、個人トレーダーというのは日本語で表すと「個人投機家」という言葉が近いと思っていますが、自ら投資判断をするのではなく、「株の値動き」そのものに注目し、投資家としてのプロである機関投資家や大手ファンドなどにしかできない行動に付いていくのです。「株の値動き」を見ていると、彼らの動きが見えてくるのです。
― 「個人投資家」ではどうしていけないのでしょうか。
冨田:個人投資家自体を否定するわけではありません。投資というのは前の回答でも言いましたように、ある特定の企業の成長性を見込んで長期的に応援する、という意味合いを含んでいる行為ですので、好きな企業、応援したい企業などがあってその株を買うという投資行為自体は、「経済活動」という観点から考えた場合には、立派なことだと思います。
ただ、もしも個人が株で稼ぎたいと思っているのなら、その場合は投資家ではなくトレーダーになりなさい、ということなのです。「稼ぐ」という観点から考えた場合には、一般の個人投資家には勝ち目はほとんどないと自らの経験を通じて私は感じています。
― この本でいうところの「プロ」とは一体どのような意味なのでしょうか。
冨田:プロという言葉をつかっていますが、「今の仕事を辞めてトレードに専念しろ」と言いたいわけではありません。それはむしろ逆で、今の仕事は大切に続けるようにと本書の中でも繰り返し述べています。ここでいうプロというのは、「趣味」気分で株に手を出してはいけない、やるからには「仕事」のつもりでやりなさい、ということなのです。
趣味というのは自分の楽しみのためにやることですから、楽しいことしかしたくないし、やりたいときにしかやろうと思いません。それではいけない、ということです。プロのトレーダーとして株で稼ぐためには、イヤだなと思うことも時によってはする覚悟を決める、また、気が向かなくても体調が悪くても、決めたことはやりぬかなければなりません。「仕事」であると思えば、できるはずです。
トレードで成功できる人はどんな人?
―「株で稼ぐ人と損する人」の違いについて教えていただけますか。
冨田:これについては本書でじっくりと説明していることで、具体的な違いのひとつひとつを話しだすと長くなりますが、ひとことでまとめるとしたら「稼ぐための準備」がきちんとできているかどうか、ということに尽きると思います。準備ができていない人、また、準備しようという気持ちさえない人は「損する人」になってしまうでしょう。
― 冨田さんが株をやり始めたのはいつ頃ですか? そのきっかけはどのようなものでしたか?
冨田:今から十数年前の2002年頃でしょうか。当時はインターネットを使って稼ぐ人たちが世間をにぎわしていて、ネット株ブームと呼ばれるような現象も起こり始めていました。カリスマトレーダーやデイトレーダーなんていう存在も注目を集めていました。もともとテレビゲームや競馬などゲーム性のある賭けごとが好きだったので、これなら自分にもできると思って株の世界に足を踏み入れたのです。
― うまく軌道に乗るまでどのくらいかかりましたか?
冨田:他の賭け事でも同じかもしれませんが、最初は「勝ったり負けたり」の繰り返しでした。ただ残念ながら小さく勝って大きく負けるというようなことも多く、マイナスが嵩み、1000万円程度あった投資資金はみるみる減っていきました。資金が底をつきそうになったとき「株をやめる」という選択を考えたりもしましたが、勝っている人もいるのだから自分にもできるはずだと思い直し、一から株の勉強に取り組みました。それが今につながっています。ようやく自分なりの「勝てるしくみ」を確立できたのは本気で株の勉強をしてから3年くらい経過した頃のことです。
― 株取引を個人で行うなかで、欠かすことができない素質や能力などはあるのですか?
冨田:素直な人、でしょうか。将来長期に渡って株取引を個人で行うなかで、いろいろなことを学んだり、経験したりします。そのときに、勝つために良いことを素直に取り入れ、勝つために悪いことを素直に捨てることができるかどうかが大切です。新しいことを学ぶ時というのは、最初はやはり成功している人の「真似」をどれくらい忠実にできるかということが大事だと思います。まず、成功している人を真似るのです。しかし、多くの人は何も勉強せずに最初から自分流を築こうとします。何も自分流自体が悪いと言っているのではなく、物事には段階があるのです。自分なりにカスタマイズしていくのは真似たあとでいいのです。
― 冨田さんの公式ウェブページで「かんたん、ラクラク、サクサク、大きく儲ける」などの初心者をあおる言葉が大嫌いだと書かれていましたが、これからそうした甘い言葉で初心者を引きつける人も増えると思います。そうしたときに、その人が信頼できるかどうかどの部分で見分けるべきなのでしょうか。
冨田:「かんたんに」とか「ラクラク」なんていう言葉であおる人は、一切信頼しない方がいいと私は思います。(笑)なぜなら、もし、株がそれだけ簡単であるなら、世の中にはもうすでに株で上手くいっている人があふれかえっているはずだからです。でも、実際はどうでしょうか? 現状は昔と何ら変わってないです。個人投資家のほとんどが負けているのが現状です。長く稼ぎ続けるトレーダーになるためには、甘い言葉に惑わされることなく、行動規範や考え方の訓練が必要ですし、トレード技術の勉強も必要です。楽して儲かるなんてことは、あり得ません。
― トレーダーとしてこの株価好調が今後続いていくとお考えですか?
冨田:もし私がトレーダーではなく株の予想屋でしたら、「そうですね!今後日経平均は40000円を目指していくでしょう!」と景気の良いことを述べるでしょう。(笑)しかし、私はトレーダーです。「遠い未来のことはわかりません。」株が上がるなら買いますし、下がるなら売るだけです。
最初にも述べましたが、いろいろな要因や理由が重なって、日本の株が買われているからここまでは好調なのでしょう。じゃあ、今後ですが、多くの人々や多くのお金を持っている人が売る人よりも多ければ好調が続きますし、多くの人々や多くのお金を持っている人が買う人よりも多ければ不調になるだけです。
― 本書をどうして執筆されたのですか?
冨田:2つの理由があります。ひとつは、ここまでに確立してきた自分自身の「株で稼ぐためのしくみ」を改めて自分自身で確認するためです。長年同じことを続けていると、だんだん自分自身の考え方にブレが出てきたり、決めていたルールが曖昧になったりもします。今回、読者の方に自分のやり方をオープンにすることによって、自分自身に対して再度確認することができました。
もうひとつは、虐げられてきた一般の個人投資家を少しでも上のステージに引き上げて、まずは「負けない」ようにしてあげたい、そして、「稼げる」ようにしてあげたいという想いです。私自身、過去に大損を経験し、稼げない時代を経てきたので、ある意味「逆襲」といった気分です。
― 他の株取引についての本と違う部分を出すために、どのようなことに意識して執筆されましたか?
冨田:楽して誰かに儲けさせてもらおう、という人ではなくて、「自分自身の力で長く稼ぎ続けたい」という人に向けて書いた本です。長く続けるためには、小手先のテクニックだけでは無理で、考え方そのもの、もっと言えば生き方そのものを見直す必要があります。売買のテクニックを延々と書いている株の本が多い中、行動規範や思考法について本書の多くのページを割いたのは、そのためです。こんな内容の株の本は、他にはないと思います。
― 本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?
冨田:いちばん読んでほしいのは、まずは「これまで、どうしても株で勝てなかった」人たちです。株が好きなのに、株で損をしてきた人たちです。そして、その中でも、今まで損をしてきたのはなぜなのかを知り、反省し、未来に向かってプロとして変わっていこうとする意志のある人たちです。もちろん、これから株を始めたい、株に興味があるけど自分にできるかどうかわからない、最初に大損することなく上手く立ち回りたい、という人たちにも「自分がプロ個人トレーダーに向いているかどうか」「どうすればプロ個人トレーダーになれるのか」を判断できる内容になっています。
(了)