多くの予測を的中させたドクター・ペンタゴンが語る最新世界経済事情「異次元経済 金利0の世界 米国崩壊 世界デフレ 日本復活」

連載

第3回

経済のニュースを見ると、世界デフレへの突入について懸念を示す言説が多い。日本が脱デフレを掲げる中で、世界は今後どうなっていくのだろうか。

 「現在進行しているマーケットの動乱は世界がデフレに突入する前触れ」と指摘するのは、ニューヨーク在住のコンサルタントで“ドクター・ペンタゴン”の異名を持つ若林栄四氏だ。
 『異次元経済 金利0の世界』(集英社/刊)によれば、すでにEU圏、そして世界的なデフレ突入のシグナルが出ているという。

 その根拠とは何か?
 若林氏によると、日本のデフレ発動は1990年1月の株価暴落だった。長期金利は同年9月にピークの8%に達した後、ほぼ一貫して低下を続け、金融危機が本格化した1997年には2%を割り込み、2%未満が定着した。
 このことから、国債金利2%割れが実体経済のデフレ突入のシグナルと予想している。

 アメリカとドイツの長期金利は2011年秋に2%を割り込んでおり、その後アメリカは3%に反発したものの、2014年には2%に戻った。一方のドイツを見ると、2%割れが定着している。
 ドイツは、今やユーロ圏を引っ張る存在だ。著者の説と照らし合わせればすでにユーロ圏はデフレに突入し、アメリカもその方向に進んでいると考えることができる。

 では、ユーロ圏の不況は今後どうなるのだろうか。
 若林氏は、「好転に向かうシナリオ」があるとすれば、為替レートが大幅に下がるだろうと予測する。そうすれば、ユーロの中でドイツはますます得をする。そして、輸出で相当稼いでいるドイツが、さらにユーロ安になり滅茶苦茶に稼ぐことによって、ほかの国を引っ張りあげるシナリオができるのだ。しかし、ヨーロッパのためにいろんな緩和措置をやってくれてと頼まれても「うん」と言わない。
 そんなドイツを、著者は「怖い国」と評する。

 本書では他にも、スイスがデフレに追い込まれていくカラクリや世界のデフレリスクなどを分析しながら、デフレに進みゆくこの世界の現状をつづっている。
 では、最後にこの日本はどのようになるのか? 景気の上向きは本物なのか? 次回はその部分について触れていく。

(新刊JP編集部)

目次

第1章
いよいよ迫りくるアメリカ株式の暴落
  • アメリカ経済の「偽りの夜明け」に過ぎない株高
  • マーケットの激動が示す世界デフレの到来
  • 株価暴落後の措置で対照的だった日米中央銀行
  • 「失われた20年」のアメリカ版の始まり
  • アメリカ経済は強くない
  • 経済の実体を正しく反映していない雇用統計
  • まったく伸びていない庶民の手取り額
  • 圧倒的にダウンサイドリスクを恐れるFRB
  • アメリカ経済の本質を示している金利動向
  • インフレリスクの増加では動かないFRB
  • FRBはそう簡単に利上げできない
  • イェレン議長も所詮はただの人
  • アメリカのデフレ突入は運命である
  • 日本で起こったことが約10年遅れでアメリカにやって来る
  • 株価暴落が近いことを示すメガホン・パターン
  • アメリカのデフレ宣言となる株価暴落
  • 世界デフレを示唆するさまざまな指標
  • 日経平均とニューヨーク・ダウの運命の逆転
第2章
未知なる時代、O金利時代の経済
  • 『ゼ口の世界』では資本の拡大再生産が止まる
  • 日本を後追いするアメリカの長短金利
  • 金利ゼ口の新世界では通用しない旧世界の法則
  • 金融業が牽引した1980年代以降のアメリカ経済
  • ニクソン・ショックがもたらした新たなるフロンティア
  • 偽りの夜明けだったアメリカ経済再生
  • 短期主義化・ギャンブル化してきた経済
  • 富の不均衡バブルの発生
  • 賃金上昇の妨げとなった株価重視経営
  • 賃金抑制と設備投資抑制の因果関係
  • 借金依存経済の裏側に横たわっていたもの
  • 低金利が促進するリスク投資
  • レパレッジかクレジットリスクか
  • あるべきプライスが分からない株の怖さ
  • 自己資本と債務の比率を悪化させる自社株買い
  • ゼ口に向かう金利の長期波動
第3章
中央銀行の失敗
  • ゼ口金利の世界では金融政策は無効である
  • デフレの主たる原因は中央銀行の失敗
  • ゼ口金利からQEへ
  • 金利がゼ口でも資金需要がない世界
  • 量的緩和とは何か
  • 中央銀行の当座預金にブタ積みされたマネー
  • 量的緩和に懐疑的だった人たち
  • 信用収縮を防ぐことの重要性
  • マーケットを誘導する中央銀行総裁のお告げ
  • アナウンスメン卜効果を積極的に利用したグリーンスパン
  • 中央銀行のシャーマニズムに踊されるウォールストリート
  • 量的緩和の効果に否定的だったFRB
  • あとのしっぺ返しが怖いアナウンスメント効果
  • 新自由主義が招いた「ゼ口の世界」
  • 政府の財政政策を機能不全にした新自由主義のドグマ
  • 「小さな政府」を信奉していたグリーンスパン
第4章
世界デフレに突入
  • すでにデフレ入りしたユー口圏
  • 長期金利2%割れがデフレのシグナル
  • マーケットの事前予想を上回る大規模なECBによる量的緩和
  • ユー口圏のデフレ対策にほとんど効き目なし
  • デフレの王様ドイツは怖い国
  • 世界デフレの先頭を行くスイス
  • 拡大する一方のデフレリスク
  • 原油価格の底値は30ドル近辺
  • 中国のデフレリスクは米欧よりも小さい
  • デフレから逃れられないアメリカ
  • 著しく改善しているアメリカの財政
  • 行き過ぎた政治の歪みを正すのがマーケット
第5章
金の動きを読む
  • アメリカの金融環境を一変させたニクソン・ショック
  • 屈辱的だったブレトン=ウッズ体制の終了
  • 金の裏付けを持たない紙切れになった各国通貨
  • 金が復権する日
  • 金価格を動かす金の二つの側面
  • 金価格の推移が物語っていること
  • ディスインベストメント時代における金の復権
  • 金の本質的価値への回帰が始まる
  • マネーとの比較によって決まる将来の金価格
  • マネーの総量にふさわしい価格となる金
  • 金価格は2022~2027年に向けて上昇、3000ドルへ
  • 本質を無視した市場解説には耳を貸すべからず
第6章
日本は脱デフレ・上昇波動ヘ
  • 偽りの日没を脱ぎ捨てる日本
  • すでに2012年から長期の上昇波動に入っている日本
  • 日本のデフレの日柄調整は終わっている
  • デフレからリフレへの移行
  • 駅伝形式でやってきたデフレ波動
  • デフレを悪化させた日本銀行
  • 経済は波動で動くものである
  • すでに走り終えているリフレの第一走者・円安
  • 円安終了を示唆する前代未聞のスピード
  • 円高が加速するのは2015年第2四半期から
  • リフレの第二走者・株が巻き込まれるアメリカの転倒
  • 長期金利は2016年から上昇する
  • すべてがポジティブに変わってくる日本経済
  • 日本経済の大転換点となった東日本大震災
  • 日本を有利な状況に誘う原油価格の暴落
  • 膨大に溜め込んだ資産を使える時がやって来た
  • 企業は設備投資・賃上げ法人税で世の中に還元すべき
  • 日経平均株価は2030年に6万3000円を目指す
第7章
2015年は歴史の転換点
  • 日本と米欧の波動が交錯する2015年
  • リフレの上げ潮に乗り始めるのは日本だけ
  • 日欧の道が分かれた1990年前後
  • 格差拡大が止まる三つの要因
  • 日本人がリフレ波動に乗る投資戦略
  • 長いデフレで固まった頭を切り替える必要がある
  • 眉睡ではない2030年に日経平均株価6万円達成

著者プロフィ―ル

若林 栄四

1966年、京都大学法学部卒業。東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行後。同行シンガポール支店為替課長、本店為替資金部課長、ニューヨーク支店為替次長を経て、1987年、勧角証券(アメリカ)執行副社長に就任。1996年末に同社を退職し、現在はニューヨークに在住。ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では投資助言、金融情報サービス提供会社である株式会社ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役を務める。
歴史観に裏付けされた洞察力から生み出される相場大局観で、国内外の機関投資家、個人投資家に壮大な人気を誇る。黄金律やペンタゴンを用いた相場解析には定評があり、「ドクター・ペンタゴン」、「黄金律の伝道師」などの異名を持つ。
著書:『大円高時代』(共著、ダイヤモンド社/1994年)、『黄金の相場学 2005~2010』(講談社/2004年)、『黄金の相場学』(講談社+α文庫/2007年)、『10年大局観で読む2019年までの黄金の投資戦略』(日本実業出版社/2009)『デフレの終わり』 (日本実業出版社/2011年)、『2014年 日本再浮上』(ビジネス社/2012年)、『不連続の日本経済』(日本実業出版社/2012年)、『富の不均衡バブル』(日本実業出版社/2014年)など。

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