1年目から無理なく年収1000万円稼ぐ 起業1年目の教科書

著者インタビュー

―『起業1年目の教科書』についてお話を伺えればと思います。経営コンサルタントとして、起業を考えている人のコンサルティングを数多く手がけている今井さんですが、タイトルのように、「1年目」から結果を残す人というのは割合的にどのくらいいらっしゃいますか?

今井:「起業してから3年生き残れるのはわずか数%」というようなことがよく言われますが、僕の周りの人は普通にやって普通に生きていますよ。何割が1年目から結果を残しているかという正確な数字はわかりませんが。
今はサラリーマンの年収が全体的に下がってきていて、収入の割に労働時間が長いということが起こっています。収入と労働時間の関係でいえば、起業した方が効率がいいのではないかと思います。

― この「1年目」というのは起業においてどのような位置づけなのでしょうか。2年目以降の土台作りと位置づければいいのか、それともすぐに売り上げを立てなければいけないのか、によって「結果」の意味合いも変わってきます。

今井:この本での「起業1年目」というのは、起業しようと決めた時点がスタートになります。だから起業の準備も含まれているんです。というのもここが一番不安が大きくて、怖い時期ですから。その不安を少しでも軽くしていただこうと思ってこの本を書きました。
起業の準備に関する本はたくさん出ているのですが、これをやりましょう、あれをやりましょうということばかり書かれていて標準化されていますし、「この通りにやらないとうまくいかないのかな」と思わせるところもあります。著者からしたらそのつもりはなくて、自分がうまくいったパターンや、経験上一番うまくいくパターンを書いているだけだと思うんですけどね。
起業には「こうしないと失敗する」という正解はなくて、何をどんな順番でやるにしても自分らしくやるというのが一番だということを伝えたかったんです。

― 本書でも書かれていましたが、起業への不安で一番大きなものは「お金」に関するものです。準備段階で算出できる数字を算出しておくことで不安は軽減するというのは納得できるお話ですが、実際のところ、どのあたりの数字まで把握することができるのでしょうか。

今井:基本的には出ていくお金、使うお金は把握できます。だからそこをきちんと計算して、「売上ゼロの期間がこれくらい続いても生きていける」というように最悪のケースを考えて準備することが大事になります。
ただ、どんなに綿密に準備しても、起業した後に想定外の出費は必ず出てきますから、ある程度余裕を持って計算しておいた方がいいでしょうね。

― 今井さんのところに持ち込まれる相談事としてどのようなものが多いですか?

今井:それは本当に人それぞれなのですが、起業前で準備中の方からは「どんな商品を作ればいいかわからない」という相談が多いです。もう起業している方からは売り方とかマーケティングについての相談が多いですね。ステージごとによくある相談が分かれてくるところがあります。

― また、「ビジネスモデル」は後から考えてもいい、という意見は意外でした。こういうものこそきっちり詰めて考えておくべきではないかと思ったのですが、そのあたりについてはいかがですか?

今井:ビジネスモデルについては「走り始めてから試行錯誤する」というのが結局は早いと思っています。起業する前にあれこれ計画しても、やってみたら間違っていたということが多いので、それならまず走り始めてしまってから、あれこれ試しつつうまくいく方法を模索する方がいい。この試行錯誤をどれだけのスピードで、どれだけ時間をかけてできるかというのがカギですね。

― 商品やサービスの開発も悩ましいところです。オリジナリティにこだわって「唯一無二のもの」を作りたくなる気持ちはわかるのですが、あまり固執しすぎても良くないということを書かれていましたね。

今井:そういうこだわりはあっていいのですが、同時に他人の意見を聞ける柔軟さも必要です。「これは絶対に売れる」と思って作った商品も、ふたをあけてみると大体は売れません。そういう時は、人の意見を聞きながらどこがいけなかったのかを考えないといけないわけです。
僕は、こういう時はお客さんに意見を聞くようにアドバイスしています。売れない原因が商品そのものにあるかはわかりません。商品が悪いのか、それとも単に知られていないだけか、というところも含めて調べる必要があります。

― 手持ちの資金も限られているでしょうし、一刻も早く売上を立てたいところです、そこで大事になるのが本書で書かれている「愛のある売上目標」ですが、これを設定するポイントを教えていただけますか?

今井:最初は自分が生きていくのに必要な額を目標にすればいいと思います。スタートはそれで十分。それができたら次の夢が出てくるはずですから、その時に新しい目標を作ればいいと思います。

― 個人的には「価格を上げる理由をコツコツ作る」というのが面白かったです。これができずに苦しんでいる会社がたくさんあると思いますが、取引先や顧客に納得してもらいやすい理由としてどんなものが挙げられますか?

今井:自分の会社ならではの良さや価値を伝えることではないでしょうか。それがないと、他の会社と同じだとみなされてどうしても相場で価格が決まってしまうので。
「価格が上がるぶん、こんなメリットがありますよ」というのを挙げていくことで、取引先も顧客も納得しやすくなるはずです。

― 今井さんが最近受けた起業にまつわる相談で、ユニークだったものを教えていただけますか?

今井:「こうすれば絶対うまくいく」という正解を求めてくる方が多いというのはありますね。自分で試してみればいいのに、僕に聞いて正解と教えてもらわないとやらない。でも、先ほども言ったように起業に正解はないんです。
あとは、相談する質問自体が間違っていることも多いですね。たとえば、誰が食べてもものすごくまずいという饅頭があって、それを売ろうとしたけど売れないからマーケティングを教えてほしいというような相談です。この場合問題なのはマーケティングじゃなくて饅頭の味でしょう。自分の商品やサービスのどこに問題があるのかがわかっていない人は多いです。

― 本書からは「起業は大きなハードルではない」という強いメッセージを感じとれますが、一般的にはやはり「起業を成功させるのは難しい」と思われています。この固定観念の原因はどんなところにあるとお考えですか?

今井:今すでに成功している人しか見ていないからだと思います。メディアで取り上げられる有名な経営者にしても、起業した当初は余裕がないなかで少しずつ階段を登っていったはずなのですが、そこの苦労は身内しか知らないことです。
メディアは成功した後しか報じないわけで、それを見て、彼らのようにやらないとうまくいかないんだと勘違いしてしまうというのはあると思います。

― 最後になりますが、起業を考えている全ての方々にメッセージをお願いいたします。

今井:1日10分とか30分でもできることはあるので、そういう時間を積み重ねていけば起業は必ず成功すると思います。 短い時間でも毎日自分の夢に向かって取り組んでいたら、人間は楽しいという実感だとか、やりたいことをやれている充実感があるはずで、それ自体一つの成功です。たとえ資金繰りが大変だったとしても、起業している以上夢は叶っているわけで、自分のやりたかったことをやれている充実感を大事にしていただきたいですね。

(新刊JP編集部)