対談特集 働き方 最先端のビジネス戦略を考える小玉 歩氏と対談者にとっての働くとは

■対談PROFILE
山崎拓巳 氏画像

山崎拓巳やまざき・たくみ(*1)

1965年三重県生まれ。広島大学教育学部中退。22歳で有限会社たくを設立し、現在は3社を運営。「凄いことはアッサリ起きる」・夢・実現プロデューサーとして“メンタルマネジメント”“コミュニケーション術”“リーダーシップ論”など多ジャンルにわたって講演活動中。並外れた話術とカリスマ性、斬新なビジネス理論で、男女を問わず多くの人々を魅了する。出版、映像製作、絵画、イラスト、写真、音楽プロデュースなど活躍の場を広げている

山崎拓巳氏(*1)

対談特集

■1日2時間以上メールに費やすサラリーマン
山崎
「いきなりですけど、何でメールを返信しないんですか?」
小玉
「今は、メール以外にもフェイスブックやツイッター、ラインなどもあって、コミュニケーションの量が増えすぎてしまったと思うんです。そういう時代に生きていると“別にそれをメールで送る必要はないんじゃないか”ということでもいちいちメールで返す傾向があるので、電話でいいじゃないか、ということですね」
山崎
「電話のほうが時間を取られそうな気もしますね」
小玉
「まあ、そうなんですけど(笑)」
山崎
「でも、これは僕にとって衝撃的な出会いかもしれない」
小玉
「山崎さんの本を読ませていただきましたが、コミュニュケーションをかなり重要視されているように思えました。それだけに僕の本には相容れない部分があるのかもしれません。ただ、毎日大量に届くメールを返しきれなくて悩んでいる人は多いんです」
山崎
「サラリーマンが一日8時間会社にいるとして、そのうちの2時間半くらいはメールチェックと返信にかかってしまうみたいですね」
小玉
「それぐらいかかっていると思います。メールだけではなく、上司の説教がセットになっている飲み会のような、嫌だと思っていることにかなり時間を奪われることが非常に多いんです。
そういうところで我慢をする必要はないですし、嫌なら嫌と本音を出して生きていれば、自分の周りに集まってくるのは気の合う人だけになりますから、最高の人生が送れるのではないかということを、この本では書いています。
特に、日本人は本音と建前を使い分けるところがあるじゃないですか」
山崎
「そうですね」
小玉
「建前だとか社交辞令を使って生きていると、この人に好かれたいなという時に“いい人”を演じるようになります。それでもし親しくなれたとしても、それは“いい人”を演じている自分と親しくなってくれたわけで、本来の自分と付き合っているわけではありません。それって悲しいことだと思うんです。
今は職場うつの人が増えていますが、彼らの傾向は、自分の居場所が会社にしかないことです。職場の人間関係が全てなので、壊さないようにとても大事にする。
だけど、会社以外にも気の合う仲間がいれば、会社の人間関係を必要以上に大事にする必要もないと思います」
山崎
「とてもよく分かります。特に、男の人はコミュニュケーションが職場だけで終わってしまうケースが多いです」
小玉
「そういうこともあって、この対談では“働き方”をテーマにしているんです」
山崎
「インターネットができたことで大幅に変わりましたね。 これまでの常識ではできないはずのものが、テクノロジーの発達でどんどんできるようになっている時代ですから、常識を外しておかないともったいない。
たとえば、インターネットが普及する前に経理のOLが10人でやっていた仕事を、今は1人でできますからね」
小玉
「そうなると、組織の形や働き方が変わってくるでしょうね」
山崎
「しかも、アウトソーシングすることもできるわけだから、もしかしたらこれからはクリエイティブだけに頭を使う時代が来るかもしれない」
小玉
「その通りだと思います。例えば、コンピューター・プログラムの言語は世界共通ですよね。アメリカで年収1500万円くらい取っているプログラマーと同じ能力の人を、インドなら年収300万円くらいで雇えます。
こういうことってその人じゃないといけないということはなくて、効率よく仕上げてくれれば誰でもいいわけじゃないですか。そうすると、賃金の安い途上国の人に、どんどん仕事が取られてしまう。それこそ、高給を取れる仕事はクリエイティブの部分にしか残らなくなるかもしれません」
山崎
「日本は、日本語というある意味特殊な言語に仕事が守られている部分があったと思うんですけど、先日、中国の大連に行ったら日本の大企業の経理とか事務方の仕事をやっているという人がたくさんいました。旧満州ですから日本語を話せる人が多いんです。そうやって、どんどんボーダーレスになっている」
小玉
「日本国内だけで物事を考えていたらヤバいという時代がとうとうやって来た」
山崎
「思ったより早くその時が来たと思いますね。働き方とか仕事のお話に戻ると、世の中にどんな仕事があるかわからないうちから会社に入って、自分の業務に特化していくというのはリスクがある気がします。
業種・職種を含めて様々なタイプの人に会うというのはすごく大事なことです。そして、会ったら深く掘り下げて話を聞いた方がいい。“何のお仕事をしているんですか?”“出版関係です”“そうなんですね”で終わってしまってはもったいない。
例えば建築にしても、いろいろな工程があるわけで、人によってやっている仕事が違います。そういうことをいろいろな人に聞いているうちに、自分のワークスタイルが見えてくるはずですし、“こういう仕事があるっていうことは、こういう仕事もあるよな”というように、世の中のことも見えてくるはずです。
そういうことをやっていないと、知らないものだから“世の中は怖い”となってしまう。
知らない場所に行く時って、行きは遠くて帰りはやたら早く感じるじゃないですか」
小玉
「早いですね。あれは何なんですかね」
山崎
「でも、実際にかかっている時間は一緒ですよね。未知とか無知っていうのは恐怖感を伴うので長く感じるということだと思うんですけど。帰りは一度見て知っている場所を通るので、脳が“お休みモード”に入って早く感じる」
小玉
「わからない場所を走っている時は、時間も長く感じるし、疲れます」
山崎
「脳は現状維持が好きですからね。だから、気持ちの赴くまま生きていると、現状維持になってしまう。
自分を変えたいと思っている人は多いと思いますけど、多くの人は結局現状維持を選んでしまう」
小玉
「変わろうと思ったその時は一大決心をするんですけどね」
山崎
「変りたいけど変われない理由は、自分が持っている条件を見て選択をするからです。でも、今自分が持っている条件っていうのは今の状態をキープしていくためのものであって、それらを踏まえたうえで行動しても、あまり変わりません。
だから、僕は自分を変えるためには、あえてバランスを崩すのがいいと思います。バランスを崩してよろけると、意外な一歩が出る。そこに発見があり、新しい条件が手に入るんです。」
小玉
「山崎さんは大学を辞めてビジネスを起こされたということですけど、それが山崎さんにとっての“意外な一歩”だったのかもしれませんね。
自分の話でいうと、会社を辞めて独立する時はすごく勇気が必要だったんですけど、学生ってサラリーマン以上に、いわゆる“レール”に乗っているわけじゃないですか。そこから外れるっていうのはさらに勇気がいるのではないかと思うのですが、葛藤はありませんでしたか?」
山崎
「社会に対して不満があるのに、“社会のレールに乗っている方が安全だから”といって生きている自分に、実は腹が立っていたんです。だから、大学を辞めた時は、初めて社会に反したという喜びがあった。
大学って、入る時はすごくたくさん書類を書くのに、辞める時は一筆書くだけですごく簡単なんですよ。“これで終わり?”と思ったのを覚えています。
それで学生会館から出てくると、空が真っ青だった。その時に“将来もし本を書くことがあったら、プロフィールに広島大学教育学部中退と書いてやる”と自分に約束したんです。その後、実際に本を出すことになって、今でもそれを書き続けています」
■心を劣化させないために必要なこと
小玉
「少し話が変わりますけれど、日本人は、お金を稼ぐことについて、何か悪いイメージを持っているように思います。“あいつは悪いことをやって稼いでいるんじゃないか”とか“金を持っても幸せにはなれない”というような。
ドラマなどに出てくるお金持ちのイメージが強いのかもしれませんが。」
山崎
「お金というものをどう定義しているか、ということでしょうね。“お金=汚いもの”と定義している人は、悪いことをしないとお金持ちにはなれないと思っているので、お金を稼ぐことはできません。
僕は、お金というのは自分が何かの価値を作り上げて、それを誰かに差し上げて、喜ばせた時にいただくものだと思っています。だからお金が欲しくないという人は、誰かの役に立ちたくないというのと同じなんですよ。
お金を稼ぎたいと思っているなら、一度“お金とは何か”を考えて、定義づけてみることが必要です。
これは“幸せ”についても同じですよね。幸せになりたいなら、まずは“幸せとは何か”を定義しないといけません」
小玉
「では、仕事についてはどのように位置づけていますか?」
山崎
「誰かとの関わりのなかで、新しい感情を持たせてくれるもの、自分はこんなことができるんだ、と驚かせてくれるもの。それが仕事かな」
小玉
「山崎さんは絵を描かれていて、ニューヨークで個展を開いたりもされていますけど、やはりそういう部分があったわけですか?“あれ?俺すごくうまく描けるぞ”みたいな」
山崎
「絵はね、ずっと描いていたんですけど、人には見せていなかった。たまたまある女性に見せたら“あなたは絵をもっとおやりになったらどうなの?”と言われて、妙に心に響いたんです。
“でも、僕の絵でできますか?”と聞いた時の彼女の答えが僕の人生観を変えました。
“絵の個展をやると決めたら、絵は変わりますよ”と、そう言われたんです。
見たことのない絵が僕の中にあって、僕の気持ち一つでそれが出てくる。僕が描きたいと思わなかったら出てこないまま一生が終わる。それだったら見てみたいと思えた」
小玉
「バランスを崩すと思いがけない次の一歩が出るというのが、僕にとって今日一番の学びでした。どこかで言いふらします(笑)。最後に、この対談の読者の方にメッセージをいただけますか?」
山崎
「今の学生の子たちって、定年まで一つの会社に勤めるのではなくて、7回くらいは仕事を変えながらキャリアアップしていくことになると思います。終身雇用はいずれ完全になくなると思いますけど、結果を残すとヘッドハンティングされて、収入のいい仕事に就けるようになる。もちろん、途中で辞めてフリーランスになる人もいるでしょう。
そういう中で生きていくためには、なるべく目と耳を閉ざさないこと。社会がどうなっているのかを見続ける目と耳を持つことが大事になります。
それと、自分の内なる声を聞くこと。
今楽しんでいるか、今どんな気持ちかという、自分の内側からの声を無視しないようにしてほしいですね。それは、自分が気持ちいいことだけやりましょうということではないし、嫌なことをしなければならないこともあるはずです。そんな時に、“嫌なことをさせてごめんね”と自分に言えることが、心を劣化させないためにも必要だと思います」
インタビュー画像、小玉歩さん×山崎拓巳さんの画像

(*1)記事中の山崎拓巳さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」となっている異体字ですが、環境によって文字化けする可能性があるため、「大」の字を使用しています。