「腰痛が治るのはどっち?」

インタビュー

 マッサージをしても、整体に通っても、ストレッチをしても改善しない、慢性化した腰痛は本当に辛いもの。
でも、その原因と適切な対処を知れば、症状は改善されます。
 今回は、『腰痛が治るのはどっち?』(学研パブリッシング/刊)の著者であり、「病院でよくならなかった人のための整体院」として誕生した川井筋系帯療法治療センターで20年以上腰痛患者の治療にあたる川井太郎さんにインタビュー。
 長引く腰痛がなぜ起こるのか、どうすれば治るのかをお聞きしました。

― オフィスワークでも立ち仕事でも、腰痛は多くの人の悩みの種です。よく素人でやってしまいがちなのが、ストレッチや筋トレで症状を軽減させようとすることですが、この方法にひそむリスクについてお聞かせ願えればと思います。

川井:自分の体の痛みについて、今はインターネットで調べて情報を得る方は多いと思いますが、腰痛の改善方法をネットで調べると「筋肉が弱っているから鍛えないといけない」とか「ストレッチが効果的」というようなことが出てきます。
 確かに「腰痛の予防」ということであれば筋肉を鍛えるのは効果的なのですが、すでに痛みが出ている状態なのに鍛えて負荷をかけるというのは逆効果です。
 そもそも、腰痛は筋肉が弱いから起きるものではないんです。筋肉が固まり自然な体の動きができないことによって腰に負担がかかって痛みが出るので、筋肉をゆるめることで自然な動きができるようにしてあげればいい。
 となると、一般的に思い浮かぶのは「ストレッチ」ですが、ストレッチは固くなっている筋肉を無理に引っ張って伸ばすもので、実は「ゆるめる」ものではありません。やり方によっては伸ばした個所とは別の場所を痛めてしまうリスクもあります。

― 「伸ばす」と「ゆるめる」は混同しやすそうですね。

 川井:筋肉は無理に伸ばそうとすると、反発して元に戻ろうとする性質があります。だから伸ばすというよりも、自然にゆるむようにしていくというアプローチが必要なんです。どうすればいいかというと、その筋肉が動ける範囲で少しずつ動かしていく。こうすることで血液循環が回復して、自然に筋肉がゆるんで伸びるようになっていきます。

― 内臓系の病気が原因で腰痛が出ているケースを除くと、「体のゆがみ」が腰痛の原因だとされていますね。この「体のゆがみ」はどのようにできていくのでしょうか。

 川井:最も影響が大きいのは、日常生活の動きです。たとえば、椅子に座る時に足を組む習慣があると、毎日やっているうちにその時の筋肉の状態が脳に記憶されてしまう。こうしてだんだんと筋肉が不均衡に縮こまってしまうわけです。特に体を支えている深いところの筋肉が固く縮こまったままになってしまうと、自然な動きが取れなくなってしまいます。これがゆがみの原因になります。
 ただ、体のゆがみというのは多かれ少なかれ生まれた時から誰にでもあるものです。その後の生活習慣によって、そのゆがみが大きくなる人もいれば、小さくなる人もいます。

― 体のゆがみを大きくしないために、日頃から気をつけておくべきポイントがありましたら教えていただければと思います。

 川井:偏った姿勢や偏った動作をできるだけしないということがまず一つあります。
これは足を組む癖があるなら、逆の足に組み替えれば偏りがなくなるということではなく、そもそも足を組まないのが一番いい。それと、長時間同じ姿勢でいないということも大事ですね。

― 本書の中で「腰椎すべり症」「腰部脊柱管狭窄症」「腰椎椎間板ヘルニア」など、腰痛が出やすい症例が取り上げられていますが、これらはどれも「体のゆがみ」が原因で起こると考えていいのでしょうか。

 川井:そうですね。これには体の土台である骨盤が大きく関係していて、たとえば、骨盤が前に傾いてしまっていると、バランスを取るために腰が反り返った状態になりますから、腰椎への負担が大きくなります。やがて腰椎が前に押し出されて、すべるということになります。
 また、骨盤が左右で傾いていると腰椎間でヘルニアが起こりやすかったり、ねじれた状態になっていると脊柱管が圧迫されやすくなり、脊柱管狭窄症になりやすいといえます。

― この「体のゆがみ」を改善するポイントが、先ほど少しお話に出た「筋肉をゆるめる」ということですね。これはなかなか感覚としてわかりにくいところがあるのですが、「筋肉がゆるむ」とはどのような感覚なのでしょうか。

 川井:言葉にすると「力が抜ける感覚」ですかね。たとえば、緊張している時というのは、筋肉がこわばって、肩が上がってしまっていますよね。これを、大きく息を吐いて下ろすようにすると力が抜けて自然な状態になる。そんな感じです。
 筋肉が縮こまっていると、血管が圧迫され、血液循環が悪くなりますから、老廃物もたまりやすくなります。そうするとさらに筋肉は固まったままになって体の動きが悪くなるので、日頃から力を抜くことを意識するといいと思います。

― 「筋肉をゆるめる」ということは「体のゆがみ」の改善にも結びつくのでしょうか?

 川井:はい。たとえば骨盤でいうと、骨盤の周りのある筋肉が固く縮んでしまうことによって、他の筋肉との間に不均衡が生まれて、骨盤を押し上げたり、ねじれを起こしたりといった「体のゆがみ」をつくります。その固く縮んだ筋肉をゆるめてあげれば不均衡が解消されるわけですから、骨盤も元の位置に戻るということです

― ぎっくり腰のように、ある日突然発症する腰痛も、筋肉をゆるめる方法で改善することができますか?

 川井:ある日突然痛くなったのだとしても、そこに至るまでに腰に負担のかかりやすい状況ができあがっているんですよ。それまでに痛みがなくても、骨盤が押しあがってきていたり、ねじれていたりすると、何か動作をした時にかかる負担は大きくなっています。それに耐えきれなくなった時に痛みが出る。

― 腰痛は多くの方が悩まされているだけに「これは腰にいい」「この体操が効く」というような、「常識」がたくさん出回っています。川井さんから見て間違っているものがありましたら教えていただければと思います。

 川井:最近一番気になるのは歩き方ですよね。ウォーキングの際の「正しい歩き方」として、歩幅を広くとって、腕をしっかり振って、かかとから接地する歩き方がよく推奨されていますが、このように歩くと腰への負担は大きくなります。かかとから意識的に着地しようとすると、接地時の衝撃がもろに股関節や腰に伝わってしまう。だから、熱心にウォーキングする人の方が腰が悪かったりするんです。

― エクササイズとしていいからといって、腰にもいいとは限らない、ということですね。

 川井:その通りです。特に体のゆがみが大きい人が大きな動作をすると、さらに体がゆがんでしまうこともあるので注意が必要です。スポーツで体を動かせば、体のゆがみが元に戻るように思えるのですが、実際にはゆがみを大きくしてしまうことの方が多いのです。

― また、腰痛は生活習慣とも深くかかわっています。特に悪い生活習慣はどんなことですか?

 川井:最近では座り仕事の方が多いので、座り方ですよね。先ほどお話ししたように、足を組むのは良くないのですが、いわゆる正しい座り方を長時間キープするのは大変です。座っているときは基本的に足の筋肉を使わないので、骨盤から上の筋肉だけで体を支えることになって、立っているよりも腰や背中の負担が大きかったりします。
 もしこれが辛いなら、できるだけ浅く腰かけてやると、下半身の筋肉を適度に使って体を支えられます。もしくは、骨盤が背もたれにしっかり当たる位置まで深くかけて、背もたれに骨盤をサポートさせる座り方も腰への負担は少ないですね。
 それと、立ち上がり方も気をつけていただきたいポイントです。ご年配の方に多いのですが、床や畳から立ち上がる時に、両手を床についたまま先に腰だけ上げて、その後に上半身を腰の力で持ち上げると、上半身の重みが全部腰にかかります。腰の悪い人ほどこういう立ち方をされるのですが、これでは痛くなるのは当たり前で、先に上半身を起して、骨盤の上に乗せてから立ち上がる方が負担は少ないはずです。不安であれば、何かにつかまればいいわけですし。
 こういう、日常生活の動きの癖に気をつけるだけでも腰痛が良くなる方はかなり多いのではないかと思います。

― 本書で紹介されている「骨盤ゆらゆら体操」は骨盤周りの筋肉、とくに深部にあるインナーマッスルをゆるめることができるとされていますが、具体的に体のどの部分にはたらきかけるものなのでしょうか。

 川井:これは仰向けに横たわって行う体操なのですが、その状態で深呼吸をすることでお腹周りの筋肉、足を開くことで股関節と臀部まわりの筋肉をゆるめることができます。そして、膝を抱えて揺らす動きでは、骨盤から腰につながっている大腰筋や腰方形筋がゆるみます。がんばりすぎずに、「こんなものでいいのかな?」という程度にやるのが筋肉をゆるめるポイントですね。
 腰痛の症状の改善というよりは、その原因となっている体のゆがみの改善につながるので、痛みが治まっても少しずつ続けていただきたいです。

― 最後になりますが、腰痛に悩む方々にメッセージをお願いできればと思います。

 川井:腰痛は日常生活の中の動きがおかしかったり、無意識に負担のかかる動きをしていることで起こりやすくなるものですから、生活の仕方を見直して、変えていけば症状を改善できる可能性はあります。
 それと、無理に鍛えたり、ストレッチをするとかえって悪化させてしまうことが多いので、とにかく固くなっている筋肉をゆるめること、無理なく動く範囲で少しずつ体を動かすことが大事になります。そうやっていけば腰痛は必ず良くなりますので、ぜひ本書を読んで実践してみてください。

著者プロフィ―ル

川井 太郎(かわい・たろう)

川井筋系帯療法治療センター院長。あん摩マッサージ指圧師。「病院でよくならなかった人のための整体院」として、20年以上にわたり病状、疾病と「身体のゆがみ」との相関性を臨床研究。身体力学、身体運動学に基づいた独自の「川井筋系帯療法」で、腰痛をはじめ、頭痛や首・肩のこり、慢性疲労などの筋骨格系病状、アトピー、喘息などのアレルギー体質的症状を改善に導いている。保健医療学修士、米国アンチエイジング医学会(A4M)認定 ヘルスケアプラクティショナー、日本抗加齢医学会認定 抗加齢医学指導士などの資格も有する。最近では、『腰痛解消!「神の手」を持つ15人:2014年最新版』(現代書林)で紹介されるほか、雑誌やTV、NHKカルチャー教室での講師など幅広く活躍。著書に『腰痛・股関節痛・足のしびれが消える「骨盤ゆらし」』(マキノ出版)、『スマホうつ』(秀和システム)がある。

目次

第1章 あなたが信じている腰痛の常識ウソ? ホント?
  • 質問1 腰痛になったとき、まず行くべきは、病院・整形外科?それとも、整体・マッサージ?
  • 質問2 病院で原因がわかる腰痛、わからない腰痛、どっちが多い?
  • 質問3 腰痛の出る場所は誰でも同じ? それとも、人によって違う?
  • 質問4 「椎間板ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」、最近、増えたのはどっち?
  • 質問5 春、夏、秋、冬、最も腰痛になりやすい季節は?
  • 質問6 腰痛になりやすいのは、男性? それとも、女性?
  • 質問7 腰痛ベルトは、したほうがいい? しないほうがいい?
第2章 腰痛の原因は「体のゆがみ」にある。ウソ? ホント?
  • 質問8 サルには腰痛がない。ウソ? ホント?
  • 質問9 腰痛になるのは、腰が弱いから。ウソ? ホント?
  • 質問10 「体のゆがみ」は親から遺伝する? しない?
  • 質問11 「体のゆがみ」は自覚できる? 自覚できない?
  • 質問12 「体のゆがみ」はレントゲン写真に写る? 写らない?
  • 質問13 筋トレで「体のゆがみ」を正せば、腰痛は治る? 治らない?
  • 質問14 ストレッチでインナーマッスルはゆるめられる? ゆるめられない?
  • 骨盤ゆらゆら体操
第3章 腰に負担をかけない生活習慣、正しいのはどっち?
  • 質問15 腰痛が起こりやすい時間帯は、朝? それとも、夜?
  • 質問16 休日は、しっかり寝て休息をとる、それとも、いつも通り起きる、腰のためにいいのはどっち?
  • 質問17 朝食をしっかりとる、朝食を抜く、腰に負担となるのはどっち?
  • 質問18 腰痛の人におすすめの食べ物があるって、ホント? ウソ?
  • 質問19 電車の中で立っているのと座っているの、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問20 歩きっぱなしの営業職、立ちっぱなしの販売職、座りっぱなしの事務職、腰に一番負担がかかる職業は?
  • 質問21 腰までつかる半身浴、肩までつかる全身浴、腰にいいのはどっち?
  • 質問22 よくスポーツをする、あまりしない、腰にいいのはどっち?
  • 質問23 繊細な性格の人、大雑把な性格の人、腰痛になりやすいのはどっち?
第4章 日常動作、腰痛予防に役立つのはどっち?
  • 質問24 広い歩幅で歩く、狭い歩幅で歩く、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問25 椅子に座るとき、浅く座る、深く座る、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問26 椅子から立ち上がるとき、目線を上に向ける、下に向ける、腰痛予防に有効なのはどっち?
  • 質問27 うつぶせ、仰向け、横向き、睡眠時に腰に一番負担がかからない体勢は?
  • 質問28 下にある物を持ち上げるとき、足は前後に開く、左右に開く、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問29 リュック、ショルダーバッグ、キャリーバッグ、腰への負担が一番少ないのは?
  • 質問30 腰痛予防のため、運動前にしておきたいのは、腰をまわす運動、ひざの屈伸運動、どっち?
第5章 あなたの腰痛、本当はどっち?
  • その腰痛の診断結果、本当に正しいですか?
  • 川井式 腰痛簡易判別表
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰椎すべり症
  • 仙腸関節機能障害(仙腸関節痛)
  • 梨状筋症候群
  • 急性腰痛症(ぎっくり腰)
  • 坐骨神経痛
おわりに
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