―まず、総額一千万円の借金をお持ちだったという衝撃の告白から本書はスタートしますが、どうして一千万円もの借金を背負ってしまったのでしょうか。
「すごく簡単に言うと、いわゆる「ムダづかい」です。ムダづかいで一千万も借金をこしらえることなんてあるのか?!と思われるかもしれませんが、あるんです。簡単に借金なんて作れてしまうんですよ。
僕は昔、とてもだらしない人間でした。部屋も片づけられないし、時間にもルーズでした。毎晩飲みに出かけて、お金をバーンと使ってしまう。欲しいものがあれば、値段もかんがえずにあれこれ買う。計画的にお金を使わないから、どんどん出費がかさむ。
だから、本当に大変でした。借金の苦労って、経験のある人にしかわからないですが、まさに地獄です。借金のためにお金を稼ぐのって、苦労なんですよ」
―そもそも野呂さんは一千万円近くの年収があったはずですが、どんどん「貧乏」になっていきました。たくさん稼いでいるはずなのにお金がなくなってしまう人は実は多いのではないかと思いますが、それはどうしてなのでしょうか。
「年収が何千万円でも何億円でも貧乏な人はいます。逆に、年収が三百万円でもお金に余裕のある人、豊かな人もいます。
貧乏というのは、お金の流れのバランスが悪い人のことをいいます。
入ってくるお金に対して出て行くお金が多すぎれば、誰でもたちまち「貧乏」になります。入ってくる額が少なくても、出費をきちんとコントロールできている人は貧乏とは無縁です。貧乏になるかどうかはとてもシンプルなんですよ。
自分がいまいくら持っていて、今日どのくらい使っていいのか、きちんと分かっている人は貧乏にならない。それがわからずに、どんぶり勘定で買い物を続けていたり、「まあいいか」と衝動買いをする人は、いくら稼いでいても永久に貧乏のままです。
「たくさん稼いでいるんだし、ちょっと贅沢して100万の時計買ってもいいだろう。自分にごほうびだ」とノリで買い物をしてしまうクセのある人は要注意です。そういう人は貧乏になりやすいです。計画性がないからです」
―本書内で野呂さんがお金と向き合いスッキリできるようになる方法を「お金の片づけ」と呼んでいますが、具体的にどういうものなのでしょうか。
「「お金のお片づけ」とは、お金にだらしなかった僕が起死回生するにあたって編み出した、お金を管理する方法なんです。毎日自分が使っているお金をわかりやすく確認して、出費の流れをはっきりさせていきます。そうすると、ムリなく自然にムダづかいが減って、いつのまにか貯金も増えてしまうんですよ。
「お金のお片づけ」の基本は、その日一日過ごすお金を毎朝用意し、毎晩出費を確認するのこと。用意するのは手帳とペンと、買い物をしたレシートだけ。特別な道具はいりません。やろうと思ったその日から始められます。どんなにだらしない人でも、これなら続けられると自信を持って保証します。
「お金のお片づけ」を、部屋を掃除するように、毎晩お風呂に入るように、習慣にして続けていけば、必ずお金の悩みは解決できます。
「お金のお片づけ」の詳しい方法やコツは本書にしっかり書いていますので、ぜひお読みください」
―「お金の片づけ」を実践し、どのようなことが変わりましたか?
「僕の場合は、2週間で効果が表れました。「あれ?いつもより余裕があるな?」と感じ始めるんです。これは明らかにムダ使いが減ったから。
お金のお片づけをするようになって、それまでの自分がいかにムダ使いの多い生活をしていたかがわかるようになりました。たとえばコンビニに立ち寄ったら、「ついでにこれも買っておくか」と、レジ前に置いてあるからあげを買ってしまう。よく考えたらそうのども乾いていないのに、「なんとなく」ドリンクを買ってしまう。そういう出費を日々繰り返していたんですね。まさに「チリも積もれば山となる」で、あっという間にすごい額のムダ使いに膨れ上がります。
「お金のお片づけ」をするようになって、まずこのムダ使いの部分がなくなるという大きな変化が起きました。いらないものを買わないようになると、気持ちまですがすがしくなりましたよ」
―「お金の片づけ」を実行する際に、気をつけるべきことはなんですか?
「お金のお片づけ」の必須アイテムは、なんといってもレシートです。ですから、どんなに小さな買い物をしても必ずレシートを受け取ることを心がけてください。自動販売機でドリンクを買った場合など、レシートが発行されない場合は、忘れずにメモしておきましょう。
また、その日のお金のお片づけはその日のうちにすることも大切です。夜寝る前までには今日のお金をきちんと片づけて、次の朝はすっきりした状態で迎えましょう。そして新しい一日は、新しいお金で過ごします。とても気分がいいですよ」
―「お金の片づけ術」で、手帳をどのように使うのですか? また、どのような手帳を使うのが良いのでしょうか(野呂さんご自身はどんな手帳を使っていましたか?)
「手帳はどんなものでもかまいません。その日のお金の使い方を振り返って、手帳に「○」か「×」かを記していきます。いま使っている手帳に、「○」「×」とマークをつけるところから始めてもいいのではないでしょうか。
お金のためだけの手帳を用意し、「○」「×」だけでなく、その日一日の買ったものの記録や、その感想などを書いておくのもよいでしょう。
また、一日の出費は、その日の行動と密接に関わっています。毎朝、一日のスケジュールを確認しながら「ここでタクシーに乗るから、3千円の出費」など、出費の予定を書きこんでおくのも効果的です」
―この本では、使ったお金を「ハッピーなお金」と「ダメなお金」に分けて考えていますが、「ハッピーなお金」と「ダメなお金」の違いとはなんですか? また、「ハッピーなお金」が増えることでどのようなことが起こるのでしょうか。
「「ハッピーなお金」とは、その人にとって価値があるお金です。使うことによって自分も周りもハッピーになるお金とも言えます。いっぽうで、「ダメなお金」とは、あまり意味がなかった出費です。
たとえば、誰かとレストランで食事をしたとします。その食事がとてもおいしく、会話も弾んで、新しいアイディアが生まれたとしましょう。その食事には、2万円がかかったとします。高額ですが、その日に生まれたアイディアで新しいビジネスがスタートできたら、それは「ハッピーなお金」です。
一方で、ひとりきりでファストフードに入り、安いからという理由だけでハンバーガーのセットを買って、なんとなくムシャムシャ頬張って食事を終えたとします。500円程度で済んだし、お腹はとりあえずいっぱいにもなりました。でもこれは、僕にとっては「ダメなお金」です。なぜならその間、誰とも話もしていませんし、アイディアも生まれていないからです。空腹を満たしてくれるだけで、それ以上の価値を生んでいない500円は、誰かと話してアイディアを得られた2万円より、ずっと「ダメなお金」なんです。
ハッピーなお金が増えるということは、自分自身の生活がハッピーになっていくということ。僕たちは日々お金を使います。使うお金がぜんぶハッピーになれば、人生そのものがハッピーになっていくんですよ」
―野呂さん自身はこの手帳術を実践した後、どのようなお金の貯まり方をしていったのですか?
「毎朝、銀行でチェックしていると、ある日突然「あ、10万円貯まっている」と気が付きました。借金が雪だるま式に大きくなっていったのと同様に、貯金も速度は若干遅いのですが、それこそ、雪だるま式に増えて行きました。
なにせ、使っているお金が半額以下に減ったのですから・・・。
あとは、すべてのレシートを○印にしたい!すべての日々を○印にしたい!という思いが強くなりましたね。気がつくと、HAPPYな数字が、貯金通帳にあるという感じでしょうか?」
―よくお金をよく使っているという野呂さんですが、お金を使う際に自分なりに決めているルールはありますか?
「僕は「本当にこれが必要かどうか」と考えてから買いものをします。衝動買いは絶対にしません。「欲しい」という気持ちだけで買ってしまうこともありません。欲しいし、なおかつ必要だと思えるものだけ買うようにしています。
また、あらゆる出費が自分への投資だと思っています。「頑張ったから、ご褒美に」と思って何かを買うことはないですね。むしろ、「これを買えば明日から仕事がもっと頑張れる」と思えるものを買います。
買いものには、人生観が表れると思います。必要なものだけを買えるようになると、自然に身の周りもスッキリしてきて、部屋もいつも清潔で整頓された状態になるんですよ。ムダなものに囲まれている生活をしている人は、ムダづかいも多いはず。いちど自分のお金の使い方を見直してみるといいと思います」
―本書を執筆した経緯についてお聞かせ願えますか?
「一千万円の借金を抱えていたころ、僕は文字通りどん底にいました。いつも気分は追い詰められていました。でも、僕はそこから立ち直って、現在はとてもすっきりと充実した生活をしています。「お金のお片づけ」を実行して、僕は生まれ変われたと思いました。人生が180度変わったと言っても過言ではありません。
この経験から、僕と同じような悩みを抱えている人たちと気づきを共有できたらと思ったんです。だらしなかった僕だからこそ、伝えられることがあります。不器用でダメな僕だけど、こんなにシンプルな方法で立ち直ることができました。「稼いでいるのに、なぜかいつもお金がない」と悩む人たちに、今だから伝えたいことを、正直な気持ちで綴っています」
―本書をどんな人に読んで欲しいとお考えですか? また、最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
「「お金のお片づけ」は、稼いでいる額には関係なく、どんな人にも有効な方法です。
もっと上手に自分のお金をコントロールしたい人、お金に振り回されたくない人、効率よくお金を貯めて行きたい人に読んでもらいたいですね。家計を預かる主婦の方々にも、ぜひおすすめです。
お金のお片づけを習慣にして、ハッピーにお金を使いながら、生活を楽しく余裕あるものにしていきましょう!来年から、来週からではなく、今からはじめることが何よりも大切です」