―『40代で後悔しないためのカスを掴まない技術』についてお話をうかがえればと思います。まずは本書のなかで大坪さんがもっとも伝えたかったことはどんなことだったのかを教えていただければと思います。
大坪:僕は営業やマーケティングなど、ビジネスマン向けの教育を仕事にしているのですが、そういった場で目につくのが、セルフイメージが低いばかりに、せっかく持っている能力を生かせない人です。
僕から見て、ビジネスで成功する人とそうでない人の間に能力的な差はさほどありません。成功できない人というのは、自分はどうせうまくいかないという気持ちがどこかにあるために、巡ってきたチャンスを自分で潰してしまう。これはとても勿体ないことです。
この本を通じて、成功するために必要なのは能力や才能ではないということ、誰にだって成功することは可能だということを知ってほしいと思っています。
■―その成功を手に入れるためには、本書のタイトルにもなっている「カス」を掴まないことが大切です。大坪さんのいう「カス」とは一体どんなものなのでしょうか。
大坪:「カス」というと少し刺激の強い言い方かもしれませんが、この本では、経験しないで済むならそれに越したことはない仕事や人などを「カス」と呼んでいます。こういったことは、生活のいたるところで出くわしますから、心当たりがあるという人は多いはずです。
■―確かに思い当たることはあります。「カス」の存在を意識し始めたのはいつごろのことですか?
大坪:フルコミッション(完全歩合制)の保険営業をやっていた頃です。僕がやっていた営業というのは、システム上新しいお客さんから契約を取ると、一年間は掛け金の何割かが入ってくるのですが、二年目以降はほとんど入らなくなって、何年かするとゼロになってしまうというものでした。
だから、常に新しいお客さんを開拓し続けていないといけません。新しい契約を取るためには、その10倍くらいの人と知り合いになっている必要がありますから、セミナーだとか色んなところに顔を出すわけです。
そうすると、来ている人の中には良からぬ人というか、こちらを利用しようとしている人もいるんですよ。たとえば、ネットワークビジネスの勧誘などがそうです。ネットワークビジネスが全て悪いわけではないのですが、こちらの人間関係を換金しようとするだけの人もいて、そういう人は勘弁してほしいじゃないですか。こういう出来事から「カス」を意識するようになりました。
■―フルコミッションでやっている営業さんだから、「付き合ってはいけない人」や「関わってはいけない仕事」に敏感だったのかもしれませんね。
大坪:それはそうかもしれません。どうしても「お金を払って契約してくれますか、どうですか?」というシビアな話になるわけですから、相手もこちらも真剣にならざるを得ません。結果、おかしいな、と思う人とか仕事には気づきやすくなるというのはあると思います。
■―しかし、私たちのような会社員はそこまでの危機感を持たない人が多いはずです。こんな人が「カス」を見分けるにはどうすればいいのでしょうか?
大坪:「カスな仕事」ということでいえば、それを自分のところに持ってきたのがどんな人か、という点に注目すればいいと思います。
たとえば、何かトラブルがあった時に、まっさきに逃げてしまう人や他人のせいにする人、状況が変わるとてのひらを返したように態度を変える人が、どんなにうまい話を持ってきても簡単には信用できないはずです。仕事を見極めるのも基本的にはこれと同じですね。
■―となると、「人を見る目」が大事になってきます。「カスな仕事」を持ってくる「カスな人」はどのように見分ければいいのでしょうか。
大坪:僕の場合は、まず話の内容に不自然なところがないかと見ます。前に言ったこととの整合性がとれているかということもありますし、あとは反応ですよね。たとえば、こちらの質問に対して一瞬返事が遅れたとしたら、そこに何かあるのではないかと考えます。
また、初対面の人が信用できる人かどうかを判断するならば、会話のなかに複数回出てくる単語を注意して聞いておくといいと思います。その人がよく使う単語は相手を理解するためのヒントになるので。
たとえば、人は周囲の人間関係が充実していて、寂しさを感じていない時には「絆」という言葉はあまり使いません。だから、「絆」という言葉が会話の中によく出てくる人は、もしかしたら寂しい人なのかもしれない。そういう風に、相手がよく使うキーワードから、相手の性質を推測してみると「カスな人」を見分けやすくなるのではないでしょうか。
■―プライベートの異性関係で「カスな人」の見分け方がありましたら教えていただければと思います。
大坪:相手の子ども時代の話を聞くというのはいい方法だと思います。それと、今現在両親とどういう関係を築いているかというのも大事な要素ですね。特に、男性は父親とどんな関係にあるか、女性は母親とどんな関係にあるかということを聞き出すことをおすすめします。
もし、良好な関係にあるということであれば、人格の根本的なところで怒りを抱えていたり、屈折していたりということは考えにくいので、かなりの確率で「カスな人」ではないと言えるはずです。
■―私たちが直面する可能性の高い「カスな人」としてたとえばどのような人が挙げられますか。
大坪:会社員の方は、どちらかというと社外で会う人に気をつけるべきでしょうね。もちろん社内にも「カスな人」いるのでしょうが、身内にいる限りは大きなトラブルにはなりにくいですから。
プライベートの時間で知り合う社外の人だとそうはいきません。関わると破滅させられるような人だっていますし、大変な不利益を被ることだってあります。デート商法や訪問販売もそうですし、久しぶりに会った昔の知り合いが別人になったように変わってしまっている可能性だってあるわけです。
だからこそ、「カスな人」を見抜く目は持っておくべきだと思います。
■―本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
大坪:すでに独立している人もいるでしょうし、これから独立して「カスな人」「カスな仕事」に遭遇しやすいということで、30代の方々に向けて書いたのですが、これからはいわゆる「正社員」という働き方はどんどんなくなっていくはずで、個々人が業務請負という形で会社に関わっていくというケースは増えていくでしょう。
そうなると、必然的に今いる組織の外にいる人との接点は増えますから、この本で書いている「カスな人」「カスな仕事」の避け方は役に立つことは多いはずです。その意味では、今会社に勤めている方々に、年齢問わず読んでいただきたいですね。
■―最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。
大坪:経済的に成功するかどうかというのは、どんな人と付き合うかでほぼ決まってしまいます。となると「カス」を見分けて回避することは、成功するかどうかの生命線です。
この技術は会社の中にいても大事なのですが、会社の外に出た時は特に必要になります。この本に「カスを掴まない技術」について書いているので、読んでいただいて、40代以降、経済的に満たされつつ、自分が心から好きになれる仕事に就いているという人がたくさん出てきたら、僕も幸せです。
(新刊JP編集部)
ファイナンシャルアドバイザー。1964年、長崎県生まれ。九州大学卒業。大手企業からフルコミッションの生命保険営業マンに転身するものの、成績不振のため月収が3000円以下に落ち込むこと3度。しかし、その半年後には一転して1000万円を超え始める。生命保険業界で世界トップクラスの成績を達成しないと加入できない、MDRT日本会で大会委員長・国際委員長を歴任。現在は、キーストーンフィナンシャル代表取締役として、自らが実践してつかんだ富裕層・キーマンの顧客化ノウハウを営業のプロに教えている。