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売上が上がるほめる基準 スタッフが集まる、育つ、離れない! ほめる基準

  • 売上が上がる
    ほめる基準
  • 定価: 1500円+税
  • 著者: 原 邦雄
  • 出版社: 商業界
  • ISBN-10: 4785504757
  • ISBN-13: 978-4785504755
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著者インタビュー

■ コンサルタントからラーメン屋の店員に転職…そこで得たものとは?

― まず、『売上が上がる ほめる基準』を執筆した経緯から教えていただけますか?

原 : 前作にあたる『やる気と笑顔の繁盛店の「ほめシート」』を去年の4月に出版したのですが、その読者から進化版を読みたいという意見が届いたんですね。一方、私もバージョンアップしたものを書きたいと考えていまして。

― では、前作からの流れの中で本作を書かれたということですね。

原 : そういうことになりますね。

― 「ほめること」が売上アップにつながるという、今までありそうでなかった一冊ですが、コンサルタントの方が執筆した本の中では珍しく徹底的に現場主義を貫いています。

原 : 売上を上げているのは、経営者でもコンサルタントでもなく、お客様と接している現場の従業員たちだという考えが根底にあります。私は、船井総研からラーメン屋の皿洗いに転職しましたが、現場がいかに大変かということをこの身で知りました(笑)

― 船井総研のコンサルタントからラーメン屋の皿洗いに転職というのはすごい経歴です。ギャップは大きかったのではないですか?

原 : そうですね…。まず気付いたことは、現場には現場の言葉あるということでした。経営的な視点では正論であっても、それが通じないんです。コンサルタントや経営者とは別の論理があります。
また、これは経営者の皆さんに分かってほしいのですが、頑張っていないスタッフはいません。売上が悪くなれば現場のせいにされ、売上が良ければ経営陣の仕組みづくりが良かったといわれるものですが、結局どちらも現場の人間がやっていることです。現場スタッフはみんな、売上をのばそうと頑張っています。

― 最近では、ワタミや「すきや」を運営しているゼンショーなどが従業員不足に追いやられているというニュースが流れていますが、その点についてはどのようにお考えですか?

原 : 人口が減少し、若者の数も減っている中で、アルバイトの働き手が少なくなっているのは当然だと思います。また、その対処方法も今のところありません。日本は世界で最も高齢化が進んでいる国の一つですから、前例がないんです。不景気が20年続き、頑張って給料を上げようという時代から、働きやすさを第一に求める時代に変わってきていますから、人手不足に悩んでいる会社がすぐに改善するのは難しいと思いますね。

― そういった企業の現場の疲弊ぶりが問題視されていますが、一方でワタミやユニクロなどの経営者の著作がベストセラーになるなど、カリスマ経営者やコンサルタント信仰も強いものがあります。

原 : 究極的な話をすると、経営者は現場の気持ちが分からないものです。経営者の悩みは資金繰りと育成ですし、現場は自分の給料のことを心配します。同じ日本語を使っていても、目的や悩みの内容は全く違う。これは日本に限らず世界で同じ現象が起きています。
ただ、日本だけをフォーカスしてみてみると、「言わなくても分かるでしょ」という部分が強いように思います。経営者側が「言わなくてもできるだろう、考えられるだろう」と思ってやらせてもできない。それはなぜかというと、現場が経営者の考えが分かっていないし、経営者も現場のことが分かっていないから。経営者はどうして人が離れていってしまうのかが分からないんです。 一方でアメリカでは、経営者たちのミッションやポリシーは末端まで伝わらないという前提でスタートをしています。だから細かく行動を指示するし、契約もしっかりする。現場に対する期待がないんです。日本と真逆ですよね。

― なるほど。「言わなくても分かるだろう」という考え方になると、大きな企業であればあるほど経営陣と現場がかい離していきますよね。

原 : その傾向は強いですね。売上をあげているのは現場だということが忘れられがちになります。

― 実際に原さんがラーメン屋に転職されたとき、どのようなことに戸惑いましたか?

原 : やはり何もできないことですね。それまで年商100億円や200億円の経営者にアドバイスしていた人間が、いきなり洗い場に行くわけですからね。何もできなくて、お店に貢献することができないんです。洗い場をまわすというのも技術が必要ですし、非常につらい時間でした。

■ 「現場で頑張っていないスタッフは一人もいない」

― もともと原さんはほめるタイプの上司だったのですか?

原 : いえ、逆です(苦笑)ダメ出しばかりしているタイプの上司でした。

― では、ほめるようになったのは、そのラーメン屋で現場を学んでからですか?

原 : 店長になってからですね。それまでのやり方では売上がのびなくなってしまったんです。だから、この本で書かれている「ほめれば売上が上がる」という理論は船井総研で学んだものではなく、ラーメン屋の現場で店長として学んだものです。

― 実際に現場に関わったからこそ、ですね。

原 : そうですね。どんどんスタッフはやめていくし、売上ものびない、やる気もあがらない。自分もしんどくなっていく。限界を感じたときに、スタッフを変えるのではなく、自分自身が変わらないといけないと思いました。

― その転換にあたり、スタッフから何か言葉があったのですか?

原 : 「原さん、今月のMVPは誰ですか?」と聞かれたんです。一番頑張ったアルバイトスタッフは誰ですか、と。私はそのとき、みんな頑張っていないと思っていたんですよ。全員やる気がないなと。でも、よく考えれば確かにみんな頑張っていたし、MVP的なスタッフもいたんです。それからですね、一人ひとりほめ言葉をかけたのは。

― 人をほめるって実は難しいことだと思います。その人のちゃんと見ていないといけないし、ただ「ほめればいい」という話ではなく、その人のことを考えたほめ方をしなくてはいけないですが、原さんは「ほめかた」についてはどのように考えていましたか?

原 : この本のタイトルに「基準」という言葉が入っていますが、その部分が大事だと考えています。なんでもほめればいいというものではありません。この本は「売上を上げる」その手段として「人をほめること」を提案しています。目的がある「ほめ」、基準がある「ほめ」です。その目的を、経営陣・スタッフ一同で共有しないといけないのですが、その部分を忘れてしまっている経営者も多いですよね。

― それが本書に出てくる「Key Goal Indicator」(KGI)という指標の重要性ですね。どうなると目標を達成できたのかを意味します。日本では馴染みの薄い用語ですが…。

原 : 日々の進捗をはかる「Key Performance Indicator 」(KPI)は多くの方が知っていると思いますが、この「KGI」はまだ珍しいと思います。ただ、重要さでいうならば、こちらの方が上ですね。
どこにいけばゴールなのか。どこを目指してチームが存在しているのか。大事なのはプロセスよりもゴールです。「KPI」は「KGI」をクリアするためのものですから、「KGI」を設定し、共有することが必要なんです。

― ゴールだけを評価すると、プロセスを評価してほしいという声があがってきますが、日本はその傾向が強いですよね。

原 : だから、どのようにして日本人に合わせたものをつくっていくかが大事です。

― 具体的な解決方法はあるんですか?

原 : 一つは、現場とゴールを共有し、現場を巻き込んだ仕組み作りをすることです。勝手に決められ、押しつけられることに反発が起こるわけで、ならば企画段階から協力してもらうべきです。ただ、「KGI」は経営陣やコンサルタントが考えるべきです。

― 原さんがラーメン屋の店長だったとき、新人の方と接する上で気をつけていたことはありますか?

原 : これは皆さん忘れがちですが、初めてスタッフとして入店するとき、みんな緊張と不安でいっぱいなんです。ときには、あまりの不安で来ることができない人もいます。だからこそ、受け入れる私たち側がウエルカムの雰囲気を作り出し、初めて働くという大きな山を登ったことをねぎらう姿勢が必要です。

― 来ることが当然だと思うのではなく。

原 : それはそうです。不安ですからね。また、働いて結果を出すのが当然と思うのではなく、適度にほめてあげることも大事です。みんな、不慣れながら頑張っているはずです。

― コンサルタントとして、いろいろな経営者の方とお話されていると思いますが、ほめることの重要性を認識していない人は多いのですか?

原 : 仕方なくほめているとか、甘い世の中になったと考えている経営者は多いです。それは世代の違いからくる価値観も理由の一つで、今、経営者になっている人たちは、ほめられずに育ってきた世代なんですよ。だから、「なんでほめないといけないんだ」と。

― 本書をどのような方に読んでほしいと思っていますか?

原 : 資金繰りで悩んでいる経営者や、従業員の育成で悩んでいるマネージャーの皆さんに読んでほしいです。また、ほめているけれど売上につながっていない経営者にも。「ほめる基準」というのが分かると思います。

― インタビューの最後に、読者の皆さまにメッセージをお願いします。

原 : 育成や資金繰りの悩み、売上が上がらない悩みを解決するための方法を書きました。今いる従業員と一緒にいかに売上を上げていくか、具体的な事例と読んだその日から実践できるツールを用意していますので、ぜひ、読んでいただいて使ってほしいと思います。