「お金を貯める」。
老後に至るまでの自分の人生を考えた時に、どうしても「お金は貯めなければいけない」と思ってしまうものです。なぜなら、安心して暮らせる保証がほしいから。
しかし、有り余るお金を持っているであろう成功者たちは、「お金を貯める」という考え方は最優先ではないようです。
『デキない人のお金の使い方 デキる人のお金の使い方』(CCCメディアハウス刊)は「株の学校ドットコム」の運営者で投資家でもある柴田博人氏と、同じく「株の学校ドットコム」の運営者でマーケッターでもある竹松祐紀氏の2人の若きミリオネアが、人生を豊かにする「お金を使い方」を指南する一冊。
彼らが訴えるのは、「お金の貯め方」よりも「使い方」に意識すべしということ。
では、正しい使い方とは一体どういうものなのか? どのように使うことが、自分をお金に愛される人へ成長させてくれるのか? 40代の柴田氏と、30代の竹松氏のお二人に質問を投げてみました。
(新刊JP編集部)
「貯金するほど破綻する」この本の冒頭に書かれた一文の意味。
――まず柴田さんにお聞きしますが、共著者となる竹松さんとの出会いや、どのようなきっかけで「株の学校ドットコム」の運営に携わり、本書を執筆することになったのかをお聞かせ下さい
柴田:
出会いは、まさしく偶然でしたね。初めてちゃんと話を聞いた時には、志が高く、何事にも物怖じしない非常にユニークなキャラクターだなと強く感じました。自分の夢に向かって進む行動力はとても魅力的であり、出会ってすぐに「一緒に働かないか?」と声をかけました。
とても向上心が高く、私が運営していた「株の学校ドットコム」にも興味を示し、すぐに関わってくれました。その後すぐに「株の学校ドットコム」のマーケティングプロデューサーになったのですが、すでにマーケティングは常に人を感動させるレベルを目指していて、その結果、「株の学校ドットコム」はそのジャンルにおいて日本一のサイトになることができました。
――では、竹松さんにも同じ質問をしたいと思います。
竹松:
今、柴田さんが出会いは偶然だったとおっしゃられましたけど、まさにその通りです。2007年に、あるセミナーに参加したときに、私が参加者、柴田さんがボランティアスタッフという立場で出会ったのが最初です。「仕事何してるんですか?」と聞いたら、「専業主夫をやっている」と言われ、ここでは言いにくいのですが、得体の知れない人というのが第一印象です(笑)。
柴田:
そういう印象だったの?
竹松:
「専業主夫」とおっしゃられて、「えっ?」という感じでした。その1週間後、別のセミナーに参加にしたとき、今度は参加者同士という立場で一緒になり、また話をする機会があったんですね。
そこで事業経営や、不動産投資でのセミリタイヤなど、いくつも面白いことをやっていて、とても面白そうな方だと感じました。ちょうど私も新たなビジネスの方向性を模索していたので、「一緒に働きたい」とお願いし、その3日後から一緒にビジネスをスタートすることになりました。
――すごいスピードですね!
竹松:
そうなんです。それから10年が経ち、ずっとビジネスを一緒にしていますが、常に、周りの人間が豊かになることを考え、そして優先し、結果を出させることにコミットし続けるスゴイ人だと思っています
――そのまま竹松さんにお伺いしたいのですが、本書の中で、もともとお金持ちは「悪い人」だと思っていたと書かれています。成功者になり、その印象は変わりましたか?
竹松:
変わりましたね。やはり悪いことをしたり、ズルくないとお金持ちになれないというイメージがあったのですが、そうではなく、他人が欲しがるものや、欲求を見つけて、それを解決するのが上手いんですね。お客様に対しても、一緒に働く人たちに対してもそうです。ニーズを満たすものを提供できて、さらに喜んでもらい続けられる人が成功者なのだな、と。
これは自分自身がお客さんとしてお金を使っている会社を見ていたときにふと気付いたんです。自分を喜ばせてくれる会社に一番お金払っているよなと。何度もそこから買っちゃうよなと。じゃあ、提供者として同じようにお客さんに感謝されて、自分たちのビジネスがないと困るくらいの状態を作ることこそがベストだと気付き実践をしたのです。
――この本の冒頭で「貯金するほど人生が破綻する」と書かれていますよね。非常に刺激的な一文ですが、これはどういう意味なのでしょうか。
竹松:
ここでいう「貯金するほど」の意味ですが、貯金してお金を使わずに貯めておけば幸せであるかのような勘違いはいけないということです。ですから、お金が貯まっていく状態を全否定するわけではありません。
しかし、お金をただ単に貯めようとする思考では、物事を達成するスピードがものすごく遅くなってしまいます。また、お金を使えば得られる成長のスピードも遅くなってしまい、世の中に求められる人になることなく、経済的に貧しくなることが多いんです。
そうならないためにはどうすればいいか。まずは、自分自身の学びに投資をすることによって、周りの人によって、役に立つ人間になることができます。そして、他の人が解決できない問題が解決できるようになると、必然的に収入も上がります。そうなると、単にお金を貯めようとするよりも、実際に稼ぐ額が大きくなり、お金が自然と貯まることになります。そこから、自分でビジネスをしたり、投資をしたりというところにさらにお金を使っていけば良いのです。
――柴田さんは投資家として活動しており、この本でも投資家の視点で「お金に対する考え方」を述べています。こうした思考を身につけていらっしゃるのは、やはり本でも書かれている、お父様が建設会社の経営者という家庭環境によるものが大きいのでしょうか。
柴田:
少なからず影響は受けていると思います。
今思うと、父は悪く言うとお金に対して脇が甘いところがあったと思います。しかし、良く言うとお金より人を大事にしている側面もありました。そして、それなりにカネ回りが良い裕福さを感じる家庭だったので、幼心に「お金に苦労しない人は、お金を貯めこむガメツイ人というより、金払いの良い人の方がお金に愛されて、お金に苦労しないのでは」と感じていたんですね。
だから、お金は貯めるより使う方が、本来の目的を生かしていくという感覚はこの頃からの影響があると思います。
――ただ、普通の人からすれば、日常の中で柴田さんがおっしゃったような「投資」の感覚をつかむことは難しいと思います。不動産や株式など、元手がないとできないと思われがちですし、それなりにリスクもあります。その「投資」の感覚を身につける上で、やりやすいモノやコトを教えてください。
柴田:
まず、財布の中の千円札を取り出してください。そして、この千円をしっかり見て、どんなデザインで、どんな肌触りで、どんな匂いがするか、改めて確認してみてください。理由は、まず千円札に愛着を持ってもらいたいからです。お金を嫌っていたら潜在意識的にもお金を遠ざけてしまいます。
次に、この千円でワクワクしながらどんなモノが買えるかを想像してみてください。実にこの千円札で、色々なモノが買えることがわかります。水や栄養のある食べ物を買うことができますし、大切な人にプレゼントを買ったり、手紙を書いたり、電話をしたりすることもできます。未知の世界を広げてくれる本を買ったりドキドキする映画を観たり、行ったことのない場所に連れていってくれる電車の切符を買うこともできます。病気の人に薬を買ったり遠くの人に寄付したりすることもできるかも知れません。
これらを言い換えれば、生きることを手に入れたり、友情や愛情を育むことができたり、感動する体験をしたり、人の命を救うことも出来るということです。たった1枚の千円札にも、自分の人生や他人の人生を大きく変える可能性があります。
投資とは「生きるお金の使い方」です。この使い方をすると、多くの人から感謝され、他人から求められ、充実感を得られながら人もお金も集まってきます。今あるお金に可能性を感じ、自分のために使うには、どう使ったら価値が最大化されるのかを考えてください。そしてそれを他人に置き換えて、この手元にあるお金で他人をどう喜ばせ感動させ幸せに出来るのかを考えてみてください。これが生きたお金の使い方であり、投資でもビジネスでも成功する秘訣です。
「預金通帳にお金が貯まっていくことが苦痛」 成功者の衝撃的な金銭感覚。
――竹松さんにお聞きしたいのですが、主に同世代(30代中盤)の方に向けて「これはやってはいけない!」というお金の使い方とはどんなものですか?
竹松:
絶対にしてはいけないのは、繰り返しますが、目的のない貯金です。私はこれを「死に金作り」と呼んでいます。お金を稼いで貯めることが目的になると、どんなに稼いで貯めても幸せになれません。むしろどんどん金の亡者のようになり、心が荒んでいきます。まさにお金も死んで自分も死んでしまうんです。
お金は使うことによって価値が最大限に発揮される道具です。自分が産み出した価値をお金に変えて、意味のない貯金で殺してしまうのではなく、有効な使い方によってお金に命を与え、生きたお金の使い方で感動と幸せを手に入れてほしいですね。千円でも人生を大きく変えるお金の使い方を出来るのですから。
――柴田さんには、これまでの人生の中で、お金に対して一番悔しい想いをした出来事、お金があって良かったな、と思う出来事をお聞きしたいです。
柴田:
大げさに言うと、実は毎日いつも悔しい想いをしています。理由は「もっと上手にお金を使えるのではないか?」と日々考えているからです。
誤解されることを恐れずに言うと、貯金通帳にお金がたくさん溜まっていくのが苦痛なんです。日々、一生懸命仕事をしているので、お金が私の口座に入金されるのですが、そのお金を理想的に使えない自分がいるときに悔しさを感じます。しっかりとした目的を与えられていないお金が手元にあることは本当に悔しいというか、辛いことです。
通帳にある現金をいつまでにどんな風に使い、それでどれだけ自分と他人を成長させ、幸せにするか。そこにしっかりとした目的があるなら、とても理想的です。お金を稼ぐことだけではなく、その反対側の「意味あるお金の使い方」をすることが、お金の本来の価値を生かすことにつながりますから。
――では、逆にお金があって良かったと思うことはなんですか?
柴田:
自分の可能性も、他人の可能性も、世の中の子供達の可能性も広げられると感じていることですね。
私も竹松さんも宇宙旅行のチケットを購入しています。もうお金を払い込んで近年中に飛び立つ宇宙船に乗って宇宙旅行に行く予定ですが、私にとって宇宙に行くことは可能性の象徴なんです。宇宙に行けるぐらいの可能性があるなら、どんなことでもできるのでは、とワクワクしてしまいます。
お金があると、色々な教育を受けられ、色々な経験を積み、色々な可能性を広げることができます。私は生きるという事とは、今より将来に可能性を感じることだと思っています。死ぬ直前まで生きたい。死ぬ直前まで可能性を感じていたい。そんな意味で、お金は可能性を感じさせてくれる偉大で価値ある道具だと思っています。
――本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか? まずは竹松さんからお願いします。
竹松:
人生に対して可能性を感じているけれど、何から始めたら良いか分からない人に読んで欲しいですね。年齢的にイメージが一番わくのは、私が起業した時の年齢である26歳の人です。ただし、その年齢は人によるので一概には言えませんが。
何をやれば良いか分からないという人が、自分の日頃のお金の使い方を変えていくことによって、投資的にお金を使い、自分を成長させ、世の中に喜びを生み出せる人になっていってほしいです。その延長線上に、起業という選択肢もありますが、それをするかどうかはどちらでも良いと思っています。
結局最後にうまくいく人は世の中のために自分の知恵や時間を使い、自分のお金を使える人です。そんな人が増えることを願って本書を書きました。
――柴田さんはいかがでしょうか。
柴田:
この本は、もっと自分らしく可能性を感じて日々の生活を生きたい。と思う全ての人に手にとってもらいたいと思って書きました。
お金は所詮、道具です。しかし、この道具をちゃんと学び、使えるようになることで人生の可能性は大きく広がります。逆に、この道具の使い方がマズイと人生を大きく壊していってしまいます。なので、まずこのお金という道具と、どう付き合っていくのか。そしてどう上手く使っていくかを考えるきっかけになれば嬉しいですね。
10年経っても20年経っても古くならない本になるようにしました。ぜひ毎日を生き生きと充実させたいと思っている人に、「デキるお金の使い方」の一つとして、この本を手にとってもらえればと思っています。
(了)