―― 『才能は開ける』についてお話をうかがえればと思います。自分にどんな才能があるかを知ることは、思っているよりもずっと難しいことです。自分で自分の才能に気付くために、どんなことが大切になるのでしょうか。
宇敷:とにかく、色々な経験を積むことです。経験を積むことで「あ、これ得意かも…」とか、「この作業、辛すぎる」というように自分の能力が明確に理解できるようになってきます。
私の場合は後者でした。自分ではあまり不得意なことがない人間だと思っていたのですが、以前にインターナショナルプリスクール(英語の幼稚園)のディレクターを任されたことがあって、その仕事が全然自分に向いていなかったんです。
母親であり、英語も話しますから、就任前は「自分にピッタリの仕事」だと思っていました。でも実際にやってみたら全然ダメで、子どもやそのお母さんとうまくコミュニケーションが取れません。子どもとふざけあったり、一緒におもしろがることはできたのですが、「ケアをする」という接し方ができなかったんです。
性格が内向的な人は、私のように「苦手なことを把握することで自分の才能に気付く」ケースが多いと思います。反対に外交的な人はストレートに「得意なこと」から自分の才能に気付くことが多いです。
―― 本書を読むと、巷に溢れる「成功法則」について考えてしまいます。宇敷さんからみて、自分に合わない成功法則を実践したことで成功できない人は、やはり多いですか?
宇敷:多いです。律儀で他人の言うことを聞きすぎてしまう人やトレンドや情報を必要以上に重要視する人、社交的な人などは特に、自分に合わない成功法則の本に影響されやすいかもしれません。
―― 「自分の才能とレベルを把握することで、自分に合った成功法則を選択する」という本書やり方は、とても理にかなっていると思います。たとえば、タイプとしては合っているものの、レベルが合わない取り組みをしてしまうことで、どんな事態が起こりえますか。
宇敷:たとえば、高いお金を払ってセミナーに行ったはいいものの、話を理解できなかったり、理解できたとしても今の自分では実行できなかったりといったパターンです。
これは私も経験があって、会社を立ち上げたばかりの頃にマーケティングのセミナーに行ったことがあったんです。そこでは集客のアイデアをたくさんくれるわけですが、立ち上げたばかりで何もかも一人でやっているような状態でしたから、全然実践できないんですよ。チームで動けば難なくできることだったのですが、自分も会社もまだそのレベルではなかったということです。
成功を収めたくていろいろな取り組みをしているのに、自分のレベルに合わない情報を信じることによって、成功がかえって遠ざかってしまうというのはよくあることです。
―― 「自分を変えよう」と一念発起して、つい身の丈に合わないハイレベルなことに取り組みたくなるということもありますよね。
宇敷:そうした気持ちはわかるのですが、物事には段階がありますから、計画的に一つずつレベルを上げていきましょうということですね。よく自分の夢を叶えるには独立する必要があると言って起業する人がいますが、これも「レベルに合っていないことをしている」ケースかもしれません。起業というと聞こえがいいですが、こういう人は目標を追っているように見えて、目の前の課題から逃げている場合が多々あるのです。
―― ただ、本人はそれに気付かず、あくまでも自分が目標に向って前に進んでいる気になっていたりします。
宇敷:そうですね。実は逃げているだけだということに本人が気付かないと、どんどん成功は遠のいてしまいます。それに、そういう人がいくら夢を語っても、本当に成功している人から見れば中身が伴っていないことはわかってしまうものです。
―― 経済的な成功に対して自分がどのレベルにいるのかということも、本書を読むと一目瞭然です。ほとんどの人が9段に分かれたピラミッドの下層の3段、つまり経済的な成功から遠い位置に当てはまっていて、妙に納得してしまいました。
宇敷:先進国に住んでいる人の80%以上はこの本で「基礎プリズム」と呼んでいる下層の3段に当てはまります。ただ、誤解しないでいただきたいのですが、今いる下層から出られるようにしなさいというつもりはありません。会社員として幸せな人はたくさんいるわけで、今の自分に納得しているのであれば何の問題もないわけです。
ただ、毎日不平不満を言いながら仕事をしていたり、本当はもっと経済的に豊かになりたいのに「自分はこれでいいんだ」と無理に自分を納得させているようなら、それは不幸なことなので、自分の目指すレベルに行けるようにしましょう、ということですね。
だから、この本ではそれぞれのレベルの「特典」と「コスト」を挙げて、自分がどのレベルに行きたいかがわかりやすいようになっています。
―― 本書では才能のタイプを4つに大別していますが、基本的には「足りないところを補うのではなく、長所を伸ばして成功する」という方針になっています。短所や苦手なことについては、そのままにしておいてもいいというお考えですか?
宇敷:短所や苦手な場所を埋めようとすると時間がかかりますから、それはもともと得意なことや強みにしているところを発揮する方がいいのは間違いありません。
できるだけ早く自分の長所や強みを把握して磨いていくことはもちろん、「こういうことが得意だ」と口に出して言うことも大事です。口に出すことで周りも「○○が得意な人」という目で見てくれますから周囲との差別化ができます。
だからこそ、自分の才能のタイプを早く知ることが大事なんです。自分にどんな才能や強みがあるかを自分が理解していないと、相手が感心して「すごいね!」と誉めてくれても、自分でそのすごさがわからずに謙遜してしまったりする。往々にして才能がある分野のことって苦労しないでもできてしまいますから、誰もができることだと勘違いして自分がすごいとは思わないんです。
こういう人と「自分は○○が得意なんだ」と把握して、自覚的にその才能を磨くことに時間を費やしている人とでは、やはり大きな差がついてしまいます。
―― ただ、組織の中にいると、周囲の人から短所を指摘されて直すように指導されることもあるはずです。こういった声にはどのように対処すればいいとお考えですか?
宇敷:組織の中で大事なことは、まず組織が自分に求めていることを提供することです。それが完了して初めて、自分が簡単に価値を発揮できる部署への異動などを求める権利をもちます。フォーカスすべきは、求められる価値を提供すること。最終的には、短所を補うことに時間を使うのではなく、得意分野で簡単に最大限の力を発揮できるようになることです。
――
現実的に関わりたくない人と関わらざるを得ないことも多いと思いますし、周囲の人の声をうまく受け流せないという人も多いはずです。そういった人にアドバイスをいただければと思います。
宇敷:そこはもう「選択」ですよね。自分が今いるコミュニティにずっといたいのであれば、そこにいる人の指摘はある程度聞いたり、共感したりすることも必要でしょう。しかしながら、明確な目的を持ち、次のステップを目指す人にとって、それは必要ではありません。どちらを選ぶかは、その人次第です。
―― 本書にはどのタイプの才能に対しても「どんな風に行動すればいいか」という実践的なアドバイスがされているのですが、考え方の部分についてはいかがですか?経済的な成功を収めやすい人の考え方がありましたら教えていただきたいです。
宇敷:大きな成功を収める人ほど「成功しなきゃいけない理由」を持っているということです。
ひとくちに経済的な成功といっても、人によって求めるレベルは様々です。たとえば「好きな洋服が買えて、車も買えて、好きな場所に住める」ようになったら、人によっては「もう十分」と思って満足しますが、さらに上を目指すという人もいるはずです。そういう人ほど、「現状に満足してはいけない理由」や「もっと成功しないといけない理由」を強く持っているということですね。求めるレベルの成功が大きければ大きいほど、この理由の部分は「世の中のため」だとか我欲から離れたものだったりします。
―― 本書をどんな人に読んで欲しいとお考えですか?
宇敷:いろいろな成功法則の本やセミナーを転々としてお金を使っているのに、成功に結びつかずにいる人に読んでいただきたいです。
たとえお金がなくても、自分で納得してその状態でいるのであればいいのですが、セミナーに行ったり本を買ったりしているわけですから、現状に満足しているわけではないでしょう。もっと上のレベルに行きたい、成功したいと思っているのならこの本は使えるはずです。
―― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いします。
宇敷:今「基礎プリズム」にいる人でも、レベルは一つずつ、必ず上がっていくことができます。
先ほどお話に出た「基礎プリズム」の3段を抜けると、次は中層の「企業プリズム」で、ここは勤めている会社から独立した後のレベルです。この段階の詳細は、本の中にあるリンクからダウンロードできます。こちらも、ぜひ読んでみてください。
読者のみなさんそれぞれが、ご自身の時間、エネルギー、そしてお金を最も効率的に使って、目的地に到達できること、そしてそこで理想のライフスタイルを実現されることを信じています。
我々にできることは全て実践していく所存です。ぜひ、「愛読者カード」を活用してください。みなさんのお声を楽しみにしています。
- 第1章
あなたの才能を見つけよう~あなたの「周波数」はどれか?~ -
- あなたの才能を見つけよう~あなたの「周波数」はどれか?~
- あなたに隠された「4つの才能」とは
- 周波数別才能のルール
- 4つの周波数を理解する
- 「ダイナモ」の人(アイデアマン)
- 「ブレイズ」の人(社交的な人)
- 「テンポ」の人(五感に優れた人)
- 「スチール」の人(詳細に強い人)
- 富のカギは「フロー」
- 300万ドルの小切手
- 互いの周波数に気づくと、相手のことを理解できる
- 第5の周波数とは何か?
- アクションプラン「フューチャービジョン」と「飛行計画」
- 「フューチヤービジョン」を作成する
- 「フューチャービジョン」の書き方
- 「飛行計画」を作る
- 第2章
あなたの現在のレベルを見てみよう~ウェルス灯台の階層~ -
- ウェルス灯台とは何か?
- 基礎プリズムとは何か?
- 各レベルで行き詰まってしまう理由
- すべてのレベルに共通すること
- アクションプラン 飛行前チェックリスト:赤外線レベル
- 第3章
「赤外線レベル」から抜け出す方法 -
- なぜ、赤外線レベルの人はうまくいかないのか?
- 赤外線レベルが命取りである理由
- 赤外線レベルを抜け出す3つのステップ
- ダイナモの人が赤外線レベルを抜け出す道
- ブレイズの人が赤外線レベルを抜け出す道
- テンポの人が赤外線レベルを抜け出す道
- スチールの人が赤外線レベルを抜け出す道
- 赤外線レベルから抜け出すための4つのギア
- オレンジレベル戦略(ローギア)
- 黄色レベル戦略(セカンドギア)
- 緑レベル戦略(サードギア)
- 青レベル戦略(トップギア)
- 飛行前チェックリスト:赤レベル
- アクションプラン あなたの周波数に合う空間をデザインしよう
- 第4章
「赤レベル」から抜け出す方法 -
- 「富の階段」を登るか、落ちるか
- 生活するだけのお金しか稼げない
- ミリオンダラーへの10のステップ
- 収支がプラスにならない理由
- 赤レベルからオレンジレベルへの3つのステップ
- ダイナモの人が赤レベルを抜け出す道
- テンポの人が赤レベルを抜け出す道
- ブレイズの人が赤レベルを抜け出す道
- スチールの人が赤レベルを抜け出す道
- 会社を辞めなかったウォーレン・バフェッ卜
- 「クラーク・ケン卜時間」と「スーパーマン時間」
- 砂漠で穴を掘るな!
- 飛行前チェックリスト:オレンジレベル
- アクションプラン フローに沿うための5つのステップ
- 第5章
「オレンジレベル」から抜け出す方法 -
- オレンジレベルの現実
- 「プロジェクト」と「プロセス」
- ゼロの力
- 富の方程式という武器を手に入れろ
- 富=価値×レバレッジ
- 価値を作る思考力とレバレッジをかける行動力
- オレンジレベルから黄色レベルへの3つのステップ
- スチールの人がオレンジレベルを抜け出す道
- ブレイズの人がオレンジレベルを抜け出す道
- テンポの人がオレンジレベルを抜け出す道
- ダイナモの人がオレンジレベルを抜け出す道
- 観客とプレーヤー
- 飛行前チェックリスト: 黄色レベル
- アクションプラン 最高のプロモーションのDNA
ロジャー・ハミルトン
香港生まれ。ケンブリッジ大学のトリニティカレッジで学び、在学中に事業を興した。
著者自身によると、起業家としての教育にかかった費用は大学教育にかかった費用よりもはるかに多く、失敗し、数百万ドルの損失を経て初めて成功することができた。現在は出版、不動産、イベント運営、リゾート運営、研修、コーチング、メンタリング、オンライン教育の分野で事業を展開している。これらすべての事業とコンテンツの背後には著者の「ワールド・ワイド・ウェルス(世界に行き渡る富)」のミッションがある。クリントン・グローバル・イニシアティブ、国連グローバル・コンパクト、トランスフォメーショナル・リーダーシップカウンシルの会員として、過去10年間にわたり社会起業を世界的に盛り上げるために献身してきた。シリコンバレーのNASA研究センターにあるシンギュラリティ大学のエグゼクティブプログラムの卒業生でもある。
毎年「ファスト・フォワード・ユア・ビジネス(次のステージへの8つの道)」ツアーをオーストラリア、日本、中国、アフリカ、イングランド、アメリカで開催し、ビジネスに与える影響が大きい10のトレンドについてセミナーを行い、起業家が経済変化に対応できるよう指南し、ツールを提供している。
また、アントレプレナーインスティチュートの創立者であり、世界各国の15万人を超える起業家やリーダーに利用されているウェルスダイナミクスとタレントダイナミクスのプロファイリングシステムの考案者である。
バリにある著者のリゾート、ビジョン・ビラは年間を通して「iLab」アクセラレータープログラムを開催するアジア初の起業家のためのリゾートである。1カ月にわたるプログラムでは、ビジネスオーナーが事業を就業場所を問わず、多言語かつ多角経営されるグローバル事業に変換できるよう支援している。著者は現在、妻(レナータ)と3人の子供たち(キャサリン、テレサ、ルーク)とバリに在住している。
宇敷珠美(うしき・たまみ)
マサチューセッツ大学ボストン校政治学部卒業。日本帰国後、アメリカ大学大学院日本校、インターナショナルスクールのディレクターなどを経て2002年に起業。シンガポールベースの国際イベント会社サクセスリソーシズ日本支社代表を務め、日本の起業家たちにロバート・キヨサキ、ブライアン・トレーシー、アンソニー・ロビンズなどの海外ビジネスセミナーを紹介、多くの優秀な人材を導いた先駆け的存在となる。
2006年ロジャー・ハミルトンに出会い、ウェルスダイナミクス理論の真理と機能性に感動、日本の人たちに知らしめることを使命とし、奔走する。現在、複数の会社を所有/経営するかたわら、今まで培ってきた知識とビジネス経験を元にパッションである「起業家支援」をますます加速している。
- 定価:
- 1,600円(税抜)
- 著者:
- ロジャー・ハミルトン
- 監修:
- 宇敷珠美
- ISBN-10:
- 4894516594
- ISBN-13:
- 978-4894516595