新刊くん
著者インタビュー

― 来年の相続税法改正によって、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、これまで「お金持ちにしか縁がない」と思われてきた相続税の問題が、さほど裕福でない人にも降りかかってくるようになります。
その意味で、今「相続」はホットな話題だといえますが、まずは本書をお書きになった動機の部分からお聞かせ願えればと思います。

平澤 : 国は相続税を払う人を増やすことにより、亡くなるまで財産を持っていると相続税をしっかり取るぞと脅しておいて、一方では若年層への財産移転を推奨する制度を充実させています。これらの制度は、一部のお金持ちだけではなく、全ての家庭において利用可能であるため、これらを利用することにより、財産を贈る方も譲り受ける方も双方が幸せを実現することが出来ます。しかし、このことに気付いていない方がとても多いと感じたので、このテーマを書籍にさせていただくことにしました。

― 本書は単純な相続税の節税について取り上げたものではなく、今のうちから財産を子どもや孫などに移しておく「生前贈与」を推奨しています。この「生前贈与」のメリットはどんなところにあるのでしょうか。

平澤 : 亡くなるまで財産を持っていても、国に相続税として取られてしまうか、結局は家族に引き継がれることになります。早い段階で財産を譲ることができれば、家族や大切な人が夢や目標を叶えることが、より早く可能となります。また財産を譲った方は、そうした人たちの幸せな姿を、自分が生きている間に目にすることができます。もちろん、生前贈与を活用することにより相続税の節税に繋がってはいきますが、そうした金銭的なことよりも、お互いが幸せになれることの方が大きいのではないでしょうか。

― 本書には、生前贈与をいつ、どのように言い出すかなど、非常に細かく解説されており、大きな特色となっています。こういったお話を上手にすすめていくためのポイントはどんなところにあるとお考えですか?

平澤 : お互いを尊重すること、両親や祖父母の方から声をかけることがポイントだと思います。誰だって、いきなり年寄扱いされたら気分がよくないですから、人生の大先輩である両親や祖父母には敬意を持って接することが大事です。
自分が経済的に苦しい状況であること知られたくない、親に心配をかけたくないから、自分の今の状況を正直に話すことが出来ないという人もいますので、財産を贈る親の側からそっと手を差し伸べる、声をかけてあげることで子供は救われた気持ちになるのではないでしょうか。

― お金や財産というのはとてもデリケートな話題であり、一つまちがうと家族の不和にも繋がってしまいかねません。生前贈与について、ありがちな失敗パターンがありましたら教えていただければと思います。

平澤 : 自分だけ抜け駆けして、後から他の人に恨まれる。
うちは兄弟姉妹の仲が良いから大丈夫と油断していても、お金が絡むと昨日までの仲の良さが嘘だったかのように後で揉めることがあります。
また、兄弟姉妹は仲が良くても、その奥さんや他人が入ってくると、問題がややこしくなる。こういったものが代表的なものと言えますね。
面倒かもしれませんが、関係者全員でよく話し合うことが後々のトラブルを防ぐという意味でも有効です。

― また、子どもや孫の側からは、親や祖父母が財産の贈与についてどう考えているのか計りにくいところもあります。税理士としてのご経験上、どういったタイプが多い、というのはありますか?

平澤 : そもそも子供や孫に財産を贈る、という発想自体がなかった人もいますが、贈ろうと思っていても、どうやって贈ったらいいのかを知らなかったり、どうやって話を切り出すのかがわからずに時間だけが過ぎてしまっている、という人が大半です。
実は、親や祖父母の方も子供からのアクションを待っているということです。

― 贈与について、贈る側と譲り受ける側双方が幸せになるために必要なことは何ですか?

平澤 : お互いについてよく知ることではないでしょうか。お互いの夢や目標、お互いがお互いのために何が出来るのか、それをよく話し合うことが最初に必要です。その話し合いがなければ、財産を贈る側もどんな財産をどのように贈ったら喜ばれるのかが分かりませんし、財産を譲り受ける側も贈る側の期待に応えることは出来ないでしょう。

― 相続する側にもされる側にも役立つ本書ですが、特に読んでほしいのはどういった方々ですか?

平澤 : 相続税法の改正なんて一部のお金持ちだけにしか関係のないことと思っている方にこそ、ぜひ読んでほしいと考えています。物事を表面的に捉えるとそのように考えてしまうのも無理はありませんが、もう少しだけ深く見ていくと、国は相続税の増税とセットで若年層への財産移転を推奨していることから、このことを利用すれば思わぬところで、ほとんどの人がトクをするということが分かります。これは、誰でも利用することが出来るので、ぜひとも本書を読んで、皆様のお役に立ててほしいと思います。

― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

平澤 : 親が亡くなった時に備えて何かをするのは不謹慎だというご意見もあるかもしれませんが、何も備えずにいると、結局は残された家族が不幸になります。それなら、早い段階からコミュニケーションを取ることで、財産を譲り受けた方は夢や目標を実現し、財産を贈った方はそんな彼らの幸せな姿を目にする、そんな幸せを実現してみませんか?
どうか、この本を手に取っていただき、あなたの幸せを実現するためにお役立ていただければと思います。 s

税理士だけが知っている お金を残すしくみ
定価: 1200円+税
著者: 平澤元章
出版社: 集英社
ISBN-10: 4087860418
ISBN-13: 978-4087860412
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